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プロジェクト作成請負案件を円滑に受託、推進するために(7) ~ まとめ① 課題解消に向けた取り組み施策 ~

これまで6回に渡り、作成請負プロジェクトに対する受託、推進上におけるトラブル発生要因とその回避原則について考察してきました。
今回から、これまでの考察観点について、改めて3回に渡りまとめておきたいと思います。その第1回目は、トラブル要因になりえる「主な課題認識とその取り組み施策」についてです。


1.受託・推進上における最重要課題認識

作成請負プロジェクト(自社が完成責任を負う商談)の受託判断や、プロジェクトの円滑な推進を実現する為に、一番重要な取り組み課題として意識すべきこととして、「適切なタイミングで、報告がなされるか、出来るか」に掛かっていると言っても過言ではないと考えています。もちろん、重要なのは、そのタイミングだけではなく、「内容の正しさ」にあることは言うまでもありません。
報告(知らせるということ)が、「正しく、タイミングよく」行われることで「正しい判断ができる」ということを、どう責任者を含め、プロジェクトメンバー全員に徹底し得るかが重要だと考えています。

■報告内容と実態が異なるような事態を、回避しえる取り組み(正確性)
・「ペーパー上の報告」だけでなく、必ず「現物」の確認を行うこと。
・変更、変遷履歴がきちんとドキュメントで押さえられていること。
 (前後の整合性が分かること)
・プロジェクトに対するチェックを、適時、厳格に行うこと。
 (形式的かつアリバイ作りにならない運用)

■報告を遅延させる、「要因撲滅」への取り組み(適切なタイミング)
対顧客/対社内において、報連相を「後回し」にする、良くある「言い訳」について、以下に示します。なんとか「丸く収めておきたい」という思いが先行してしまう意識、環境を、どう払拭し得るが重要と考えます。

【遅延要因(良くある言い訳)】
●対顧客(お客様のせいにする)
・顧客との調整がまだついていない、遅れている。
・顧客の判断がまだ得られない。
(一応、「プッシュはしている」、「期限も切っている」が…)
・対面している顧客が優柔不断、回答を迫れない。
(「これで良い」と言ってくれない…)
・確認事項の答えが、「まだ」返ってこない。
・顧客に対し、「強く」出られない。(忖度、思い込み)
・顧客が言うので、仕方がなかった。
(顧客交渉ノウハウ、経験不足という観点も)     などなど

●対社内
・ここで報告すると煩わしいことになるかも。
・まだ大丈夫、何とかできるだろう。
・挙げても、何もしてくれそうもない。(言っても無駄感)
・裏付けを求められると面倒。(数値などの根拠が弱い、無い)
・怒られたくない。
(評価が下げられるかも、攻められたくない、避けたい(恐怖))
・きっと、誰かがやってくれるだろう
                          などなど

以上のような言い訳を、「しない、させない」ようにするための報告の在り方や、仕掛け(環境)の整備について、第2項に示します。特に、「暗黙の圧迫感」を感じさせない取り組み作りが不可欠だと考えます。

2.円滑に推進するための取り組み施策

報告の正確さ・タイミングを担保するとともに、作成請負プロジェクトの受託、推進を円滑に実施し得るための取り組み施策について、まとめています。合わせて、中小のソフトハウスに多くみられる、「作成請負プロジェクト」への経験の浅さという課題に対し、「どう克服していくか」という観点での施策についても考察します。

【防止施策案】
「推進上の原則論」を厳格に運用する仕組みの制度化 *1
報告、各種会議体における「実施ルール、運用プロセス、出席者等」に関する会社としての枠組みを制度化し、確立をすること。
・推進元、推進のための工数確保、人材、会議体、システム等の設定。
・商談検討会、見積もり審査会、PA会、判定会議等、討議主旨別設定。
・各会議で取り組むべき「検討・検証事項」を規定。(5W1Hの徹底)
・例外規定なども、明確にすること。

円滑推進に必要な「チェックシート類」の整備
商談や受託、プロジェクト推進上における「留意すべき観点」や、「確認すべき事項」などについて、整備すること。
・自社のカルチャーにあったものにすることが重要。
・各検討会議に沿った、チェックシートとして整備。

原則論を定着させるための「教育体制」の整備
会社としての指針、方針を「明確に伝え、継承していく」ための「仕組み」としての教育体制を確立すること。
・OJTを基本としない取り組みにすること。(個人に留まるノウハウ脱却)
・基本的な実施手法、技法に加え、交渉事項や検証事項など。
・定常的、継続的に実施すること。

組織、個人評価方法の再整備
組織力やマネジメント力の強化を意識した、「評価方法」への転換をはかること。(「個人売上至上主義 *2」からの脱却) 
・「組織的な運営力 *3」の強化、拡充を図る仕組みへ。
・組織、プロジェクト内での「役割」に応じた配分思想への転換。

責任所在の明確化
常に行動には責任が伴うということの意識付けとともに、行動の裏付けを明確化しておくこと。
・それぞれの状況に関し、常に5W1Hを意識した「エビデンス」の作成と、その保持を実践すること。
・「責任回避策」のためにではなく、自身の役割認識のためであること。

情報は常に「オープンにする、して良いのだという」環境、意識の醸成
・「隠ぺい」するより、「オープン」にする方がベター(うまく行く)と思える意識、環境造りに努めること。
・威圧的な対応の回避。(責任やトラブル原因を糾弾しない環境作り)

■「作成請負」専門部隊(組織)の形成
個人が得た経験を、個人だけに留めるのではなく、組織的な「力、スキル」として集約していくこと。
・作成請負経験者(作業請負や派遣形態での経験を含め)を軸として、組織化を図ること。
・並行して、若手育成を考慮した「組み合わせ、配置」を行うこと。


*1:仕組みの制度化
「専門組織」による運用が望ましいと考えています。しかし要員確保の問題もあるので、最低限「専門担当者」の設定を考えておくことが必要と考えます。兼務ということで「役職者」としての一役務という考え方でも良いかと思います。いずれにしても、そうした名称(役割)を取り決めておくことが重要と考えます。

*2:個人売上至上主義
個人評価方式として、「その人が直接関わった作業(工数)分だけ」で評価しようとする考え方。(実作業分で、幾ら稼いだか)
個人評価を強調するあまり、自身だけの成果に拘り、組織的なマネジメントやフォロー対応に対する考え方が弱体してしまう懸念がある。(やらなくても、自身の評価は変わらないから、範囲外だから敢えてやる必要はない、という他人毎的な意識になりがち)

*3:組織的な運営力
組織やプロジェクトマネジメント力を高めるためには、日頃から役割(マネージャー、リーダーなど)に応じた取り組み意識を持たせることが重要です。その為には、「第51回第6項【役割別の評価値の例】」に紹介したような評価方式が必要と考えます。

以上の施策は、個人として(作業請負、派遣形態契約で)「作成請負プロジェクト」への参画経験はあるものの、「会社」としての経験が浅い企業を想定したものです。特に、作成請負プロジェクトの対応においては、「会社、組織としての取り組みを確立することこそが不可欠である」という認識を「会社トップ自身が持つ」ことが最も重要であると考えます。

次回は、「トラブル発生回避に向けた取り組み施策」ということで、まとめておきたいと思います。

【過去の関連投稿】

・第46回 

・第47回

・第48回

・第49回

・第50回

・第51回


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