アウトソーシング利活用とIT部門の位置づけ考察(1)~ 経営環境・IT部門を取り巻く環境の変化 ① ~
第1回と第5回に「IT部門の役割の変化、IT部門に求められること」ということについて紹介しました。(文末【過去の関連記事】参照)
その中で「IT部門のコアコンビタンスを明確化」し、極端な話、それ以外は外部(アウトソーシング 専門企業)に任せるという選択をしても良いのではないかという判断(決断)をする時が来ていると提言しました。
そこで今回から10回(予定)にわたり、アウトソーシングの利活用を考える際、「委託すべき範囲と考慮すべき観点」ということについて考察するとともに、その際「IT部門の位置づけ」をどのように再構築すべきかと言う観点について考察したいと思います。
尚、本稿では、「小売業界」を想定したものとしています。ご留意下さい。
*1:アウトソーシング(Outsourcing)
本稿では、IT部門が関わる提供サービス全般を想定し、現在、クラウドサービス事業として提供されている範囲(ex:IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service))を中心にしています。
第一回は、改めて「企業、IT部門を取り巻く環境変化」について考察しておきたいと思います。
1.企業経営環境の変化
既にDX(Digital Transformation)という言葉を経営者自身か語る時代になり、「ITと経営の一体化」の実現は不可欠な取り組みになっています。
その背景として、以下のような経営環境の変化があると考えています。
■企業に対する「社会要請事項」の変化
・CSR 、SDGS 、各種法制度改革(競争促進政策、公正競争政策など)、安心・安全(セキュリティー強化、個人情報保護)などへの対応必須に。
■消費者環境の変化(いつでも、どこでも、だれとでも)
・モバイル技術の進展、各種比較情報の入手容易化、情報発信機能獲得(井戸端会議論からメディア機能へ、SNS影響大)などへの対応必須に。
■競合他社環境の変化(先行優位性の低減)
・M&Aの活発化、異業種連携拡大、参入障壁の低減(規制緩和、異業種進出拡大、キャッチアップ期間短縮)、ボーダレス(誰でもビジネス可)などへの対応必須に。
このような企業経営環境、ビジネス環境の大きな変化に対応するためには、IT部門の変革が不可避であり、今まで以上に「経営に貢献」する力が求められていると言えましょう。
*2:CSR(Corporate Social Responsibility)
企業の社会的責任。これからの企業は利益追求だけでなく、社会や環境に対して責任ある行動を取ることが求められるということ。
*3:SDGS(Sustainable Development Goals)
持続可能な開発目標。「人類がこの地球で暮らし続けていくために、2030年までに達成すべき」として掲げた17項目の目標。
2.IT部門を取り巻く環境の変化
経営の要請内容が大きく変化する時代にあって、IT部門を取り巻く環境も大きく変化しています。その背景について見ておきたいと思います。
■経営要請の変化
・経営への直接的貢献、現場業務効率化への直接的貢献、経営スピード感を持ったIT創造とタイムリーなIT投入要請への対応。
■IT利活用内容の変化
・事務処理的な効率化対応から、ビジネスへの直接的対応、リアル処理対応の拡充などへの対応。
■情報技術進化スピードの変化(加速)
・オープン化の定着(特定ベンダー依存縮小)、モバイル技術の個人化(多種・多様・多数)、最新情報技術ノウハウの獲得難(技術の獲得だけでなく、現場理解のためのローテーション対応なども難しくなっていること)などへの対応。
■社会要請の変化
・セキュリティー対策(情報漏洩防止、ハッカー対策、不正使用防止)、事業継続性担保、内部統制拡充などへの対応。
つまり、IT部門も単なるシステムの開発、お守り役から脱却し、経営、ビジネスに直接関わる役割に変革することが、求められていると言えるでしょう。
*4:IT-ROI(Return on Investment)
投資利益率。ITに投資して得られた利益の割合を示す指標として活用。(IT投資の収益性評価に適用する指標として)
上記のように、企業経営の円滑な運営とビジネス拡大のためには、「IT部門の役割を大きく変えること」が不可欠であると考えています。「変えられるか」の成否が、今後の経営を左右する大きな要因の一つになりかねないとも考えています。
しかし「現実」はどうでしょうか。次回そのあたりのことを深堀してみたいと思います。
ということで、次回は
3.IT部門の現状認識
4.これまでの取り組み
5.解消すべき課題
という観点から、考察したいと思います。
【過去の関連記事】
第1回
第5回