アウトソーシング利活用とIT部門の位置づけ考察(9)~アウトソーシング選択事項と選択重視観点 ~
前回(第42回)は、「7.アウトソーシング企業の形態」ということで、どこまでアウトソーシング対象とできるのかということ。そして、その形態を分類し、「8.アウトソーシング適用考察(留意事項)」という観点で、アウトソーシング形態別に自社のプロパー要員の在り方について考察しました。
今回(第43回)は、アウトソーシング先を選択する際の「委託詳細項目とその選択の際の重視観点」、また、その際の「契約の在り方」について考察していきたいと思います。
9.アウトソーシングの選択
9.1 アウトソーシング先企業の位置づけと役割
ITにおけるアウトソーシング対象となり得る業務項目と、それを請け負う企業と主な委託業務項目について、以下に示します。
9.2 必要要件(持つべき能力)と役割
図1において、アウトソーシング委託先企業の役割と持つべき能力について、以下に示します。
■自社
経営層の期待を「先取り」しえる環境の整備に注力すること。
・ビジネス企画能力、マーケティング能力、提案能力、推進能力、交渉能力、調整能力、マネジメント能力、コンサルティング能力、調査/分析能力 等(予算獲得、ネゴシエーション、トップ/現場交渉能力)
■コンサルティング(コンサル企業)
自社プロパーと一体となって動くことを前提に、ビジネス戦略の具体化を図るための各種立案支援が実践し得る企業であること。
・コンサルティング能力、システム上流工程支援能力 等
■アウトソーシング企業1(モノ作り・マネジメント主体)
自社の意を汲んで、システム構築/運用に関わる一切のマネジメント及びシステム開発が実践し得る企業であること。
・システムインテグレーション(SI)能力の他、プロジェクトマネジメント能力、見積もり試算能力、計画推進能力、システム技術活用能力、適用能力、提案能力 等
・アウトソーシング企業2に対する、マネジメント機能
・システム運用、業務運用に対する、マネジメント機能
■アウトソーシング企業2(モノ作り・開発力主体)
自社の意を汲むと同時に、コンサル・アウト企業1との連動を図り、システム構築/運用に関するノウハウ、開発要員面での量的支援(補完)を担える企業であること。
・システム開発能力、システム技術適用能力、要員派遣機能 等
※「システム運用センター」は、マシン関連の運用、保守、管理を担当するとともに、デリバリー、デスクサポート(Q/A対応)機能を担える企業が望ましく、「アウトソーシング企業1」の配下でのマネジメントが望ましい。
※「業務処理センター」は、BPO 業務を担える企業であることが望ましく、本機能も「アウトソーシング企業1」の配下でのマネジメントが望ましい。
・レスペーパー化の徹底(入力から決裁まで)
*1:BPO (Business Process Outsourcing)
業務プロセスにおいて、個々のタスクを切り出して外部委託するのではなく、「業務の企画・設計から運用まで」をトータルに外部委託する手法。
もちろん、発生する各種伝票処理(データ入力)及び業務上の整合チェックまでも含めること。(パンチ=データ入力処理)
10.アウトソーシング企業の選択ポイント
アウトソーシング先を選択する際、委託企業に期待すべきことは何か、何を重視すべきかという評価観点について、以下に示します。
評価は、「期待度」「重要度」という2つの観点から、その度合いを「大・中・小」などで評価する方式を推奨します。
11.各企業(役割・機能)との「契約」形態
委託先企業とは、以下のような「契約形態」を取ることが想定されます。
①コンサルティング企業(コンサル企業)
■固定契約(月額×人数)+α(個別案件分)
■自社要員を「最少限」にすることを前提に、「固定化」した契約方式がベターと考えます。
・固定化については、自社要員の保持レベル、意識により選択し、「自信」があればその必要はありません。(マネジメント力の認識度)
②アウトソーシング企業1
■システム運用は、「固定額と従量制」との併用とする。
■開発面では、プロによる「SI能力」を期待することから、自社理解を確実にするためにも「固定化」がベストと考えます。
・アウトソーシング企業の得意、不得意を意識せざるを得ない場合は、プロジェクト個々での委託形態でも良いと考えます。
③アウトソーシング企業2
■システム開発面では、SI企業のもとで、委託プロジェクトごとに得意、不得意を意識(検証)し、「一括個別契約」とすることが望ましいと考えます。
以上、アウトソーシング先を選択する際の「委託詳細項目と選択評価観点」について考察しました。いずれにしても、自社のことを熟知している企業と連携し得るかで「その期待、役割、契約方式」も変わってくると思います。
是非、アウトソーシングの採用を考えられ、選択候補企業を評価する際の参考にして頂ければと思います。
次回(第44回)は、アウトソーシングの究極型と言ってよい、自社機能を「ビジネス企画中心型」にした場合の留意事項について考察します。
【前8回までの掲載記事】
第35回
第36回
第37回
第38回
第39回
第40回
第41回
第42回