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弱おじの本棚

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2023年5月の記事一覧

記憶をねじ曲げなければ乗り越えられない苦しみがある。 〜「ファーストラヴ」を読みました。〜

記憶をねじ曲げなければ乗り越えられない苦しみがある。 〜「ファーストラヴ」を読みました。〜

島本理生さんの「ファーストラブ」を読んだ。

ミステリー小説を臨床心理士の主人公の視点から書いている点がとても面白い。

小説は人の心を描くものだけど、臨床心理士という視点から物語を紡いでいく本書は、小説らしい小説だなと思う。

インタビューで著者の島本理生さんが、自分の初恋を思い出すきっかけになればいいと言っていた。

私の初恋はいつだったろうか。
保育園で先生が好きだった気もするし、小学校で皆

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仕事はしんどいけど無職もしんどい。総じて、人生はしんどい。 〜「プラナリア」を読みました〜

仕事はしんどいけど無職もしんどい。総じて、人生はしんどい。 〜「プラナリア」を読みました〜

山本文緒さんの「プラナリア」を読んだ。

本書の短編に共通するテーマは、「無職」の人間だ。
仕事というものを通し、それぞれが人間としてもがく姿をリアルに描いてくれている。

なぜ、仕事をしなくてはならないのだろうかと考える。
十分なお金があって生活を営めるのなら、別に無職であることは悪ではないのだろう。

要は、「自分が納得できるか」の一点にかかっている気がする。
胸を張り、誇りを持って無職をまっ

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サクッとコスパ良くミステリーしたいあなたへ 〜「#真相をお話しします」を読みました〜

サクッとコスパ良くミステリーしたいあなたへ 〜「#真相をお話しします」を読みました〜

結城真一郎さんの「#真相をお話しします」を読みました。

5つの短編が収録されており、どれもがとても読みやすく、トリックが巧妙で気軽に楽しむことができます。

こうゆうことか!
これが伏線だったのか!
と、気軽にミステリーを楽しむことができます。

テーマが現代社会の色んな問題を扱っている点もいいですね。
YouTubeやインスタやマッチングアプリやzoomや。
この時代だからこそ生まれた「旬な」

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 人生の虚無感に苦しむあなたを救ってくれる本 〜「たおやかに輪をえがいて」を読みました。〜

人生の虚無感に苦しむあなたを救ってくれる本 〜「たおやかに輪をえがいて」を読みました。〜

窪美澄さんの「たおやかに輪をえがいて」を読んだ。

窪さんの小説がやっぱり好きだ。
日常に存在する苦しみを取り上げて、最後には登場人物たちが前を向いて人生を進んでいく。
そんな姿に勇気をもらえる。

解説で島本理生さんが書かれていた文章に共感が止まらない。

この小説を読んで「救い」を得た人は数え切れないと思う。
それほど本書のテーマは誰もが人生において味わうことだし、みんな誰にも言えずに苦しんで

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当たり前な僕の人生に心からのありがとう 〜「くもをさがす」を読みました。〜

当たり前な僕の人生に心からのありがとう 〜「くもをさがす」を読みました。〜

西加奈子さんの「くもをさがす」を読んだ。

がんを罹患した著者のノンフィクション作品に、心を揺さぶられ、今への感謝が込み上げてきた。

今こうして生きていることは当たり前ではない。
何の痛みもなく、普通に生活していられるのはとても幸せなことだ。

どうして私だけがこんな目に遭うのだろう?
人生は理不尽だ。
神様の悪戯で、私たちの努力とは無関係に辛い出来事が身に降りかかってくる。

全てを前向きに解

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決めた。おじさんだけど今日から青春する。 〜「成瀬は天下を取りにいく」を読みました〜

決めた。おじさんだけど今日から青春する。 〜「成瀬は天下を取りにいく」を読みました〜

宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」を読んだ。

青春だ。
青春すぎる。

登場人物たちがキラキラしている。
何かに没頭して、打ち込んでいく姿は見ているものに感動を与える。

感動を与えると同時に、行動した本人の心にも大きな感動を生む。

本書の構成で好きな部分は、最後の章で主人公の成瀬の目線から、その心情を含めて描かれている点だ。

それまでは周囲の目線から変わった人間である成瀬が描かれてい

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ありのままで生きる勇気と、役割を演じ切る勇気 〜「おまじない」を読みました〜

ありのままで生きる勇気と、役割を演じ切る勇気 〜「おまじない」を読みました〜

西加奈子さんの「おまじない」を読んだ。

短編のどれもが、私の生きる糧となってくれそうだ。

ありのままで生きていく。
今のままのあなたでいい。

その言葉に救われる人も多い。
私自身、「弱さを知るおじさん」という名前でSNSをはじめた頃を思い出した。

メンタルの弱さ。気にしてしまう性格。無限に生まれてくる不安。
そんな人生が生きづらくて、強くなりたくて、でもなれなくて。
えいやと開き直って弱さ

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置かれた場所で咲こうとしてみたい。〜「世阿弥 最後の花」を読みました〜

置かれた場所で咲こうとしてみたい。〜「世阿弥 最後の花」を読みました〜

藤沢周さんの「世阿弥 最後の花」を読んだ。

置かれた場所で咲きなさい。
って、だいぶ前に流行った本のタイトルを思い出した。

世阿弥は不本意ながら佐渡に島流しにされてしまう。
しかしそこで腐らなかった。

自分が信じた道をひたすらに貫いた。
そこに感銘を受けた人たちが集まり、素敵な人間関係も生まれた。

置かれた場所でなんて咲けないよ。
そう諦めてしまうことは簡単だ。

だけどせっかくのご縁だか

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言葉にするって大切だ。〜「クロコダイル・ティアーズ」を読みました。〜

言葉にするって大切だ。〜「クロコダイル・ティアーズ」を読みました。〜

雫井脩介さんの「クロコダイル・ティアーズ」を読んだ。

人と人との関係は難しいものだと感じた。

ほんの少しのかけ違いでその人を信じられなくなり、いとも簡単に人間関係は崩れていってしまう。

家族であってもそうだろう。
同じ環境で共に時間を過ごすからこそ、一度不信感を抱いてしまったら、心穏やかに生活を営むことはできなくなってしまう。

私の現状はどうだろう。
特に妻に不信感を抱くこともなく、わりか

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「点滅するものの革命」を読みました。

「点滅するものの革命」を読みました。

平沢逸さんの「点滅するものの革命」を読んだ。

ワードセンスがとても好きだ。
読んでいてクスッと笑えてしまった。

これといった、大きな事件が起こるわけでもない。
普通の人たちが登場して、普通の会話を交わしていく。
その中に喜びや哀しみがあり、日々が淡々と流れていく。

人生とは、つまりはこうゆう小説みたいなものかもしれない。
別に何が起こらなくとも、ありふれた会話の中に小さな喜びを感じたりして、

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金は大切だし、そこに生まれる感情はもっと大切。 〜「黄色い家」を読みました〜

金は大切だし、そこに生まれる感情はもっと大切。 〜「黄色い家」を読みました〜

川上未映子さんの「黄色い家」を読んだ。

お金と人生について深く考えさせられた。

お金は大切だ。
けど人生の全てじゃないことも知っている。

お金がないと不安になる。
お金があってこそ得られる幸せもきっとある。
逆にお金があると失う不安が生じたりもする。
お金ってむずい。

人並みの生活ができてりゃいいやって思う。
結局は他人との比較だ。大切なのは世間体だ。
自分がどの位置にいるのか。
普通のや

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