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ありのままで生きる勇気と、役割を演じ切る勇気 〜「おまじない」を読みました〜


西加奈子さんの「おまじない」を読んだ。

短編のどれもが、私の生きる糧となってくれそうだ。

ありのままで生きていく。
今のままのあなたでいい。

その言葉に救われる人も多い。
私自身、「弱さを知るおじさん」という名前でSNSをはじめた頃を思い出した。

メンタルの弱さ。気にしてしまう性格。無限に生まれてくる不安。
そんな人生が生きづらくて、強くなりたくて、でもなれなくて。
えいやと開き直って弱さを曝け出してみると、そこに共感してくれる人も現れて、人生が少しだけ楽になった。

同時に、ありのままの自分で闘わないという選択も人生においては有効だ。
本書の中で「係」という表現が使われていたが、生きるためのテクニックとしてとても役立つなと感じた。

私は「演じる」という感覚を大切に生きている。
特にストレスの巣窟である会社なんかでは、とてもじゃないがありのままの自分でなんか生きていけない。
ありのままの自分で仕事ができている人たちが眩しすぎて、同じ世界の住人とは思えない。

でもそれは決して恥じることではない。
西さんの物語に共感する人が多いように、演じることで社会をどうにか乗り越えている人間はきっとたくさんいる。少なくとも私はそうだ。

ありのままの自分で生きること。
自分以外の存在を演じていくこと。

綺麗事だけでは生きられない。
ありのままの自分で生きられる時間なんて、一日の中でほんの僅かなものかもしれない。

それでいい。
社会で与えられた役割を演じて、ふとした瞬間に訪れる、本当の自分で生きられている時間を大切に、抱きしめていればいい。

物語が勇気を与えてくれた。
私だけじゃない。
みんな生きづらさの中をもがきながら、本当の自分って何だろうとか考えながら、本当の自分で生きられる瞬間を追い求めてとりあえず生きている。

苦しむ人にぜひ手に取って欲しい。
あなたの心にそっと優しく響く、おまじないがきっとそこには書かれているから。

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