記憶をねじ曲げなければ乗り越えられない苦しみがある。 〜「ファーストラヴ」を読みました。〜
島本理生さんの「ファーストラブ」を読んだ。
ミステリー小説を臨床心理士の主人公の視点から書いている点がとても面白い。
小説は人の心を描くものだけど、臨床心理士という視点から物語を紡いでいく本書は、小説らしい小説だなと思う。
インタビューで著者の島本理生さんが、自分の初恋を思い出すきっかけになればいいと言っていた。
私の初恋はいつだったろうか。
保育園で先生が好きだった気もするし、小学校で皆んなが可愛いと言っている女子を、話しを合わせるようにして好きだと思い込んでいた時期もある。
中学校では初めて先輩から手紙を貰ったりしたけど、思春期特有の恥ずかしさから破り捨ててしまったこともあった。
高校でも奥手な私は、クラスのマドンナ的存在の女子を同じくいけてないグループに所属していた友人と眺めていた気がする。
専門学校でも、社会人になってからも、暫くはラヴなんて無縁の生活を送っていた気がする。
きっと私にとってのファーストラヴは、今の妻だったのだろう。
記憶はあやふやだけど、きっとそうなのだろう。
人は苦しみを感じた後でも、その後の人生を生きていかなくてはならない。
そのために、記憶を捻じ曲げてしまったり、無かったことをあったことにし、起こった事実を無かったことにしたりする。
曖昧だからこそ美しい。
そんな記憶と共にこれからも生きていく。
虚言癖だろうか。
それとも嘘を本当だと信じ込まなければ、生きてこられなかったのだろうか。
人の記憶や心って面白いなと思った。
これからも小説を読もう。
そしてその時の感情を捻じ曲げてしまわぬように、こうして記録をしていけたらいいなと思っている。
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