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「詩の本」を読んで

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2021年2月からnoteに自作詩を投稿しています。詩を書きだしたのがその前年20年12月から…という詩も文学もまだまだ勉強途上。そんな私が読んだ古今の詩集、詩に関する本を読んだ…
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#詩集

■対人支援の現場の人が書いた詩

■対人支援の現場の人が書いた詩

「詩の本」を読んで(34)◇「齋藤恵美子詩集」
(思潮社 2017年9月刊)

筆者は、1960年東京生まれ。聖心女子大学文学部卒。博報堂を経て書籍編集や高齢者介護の仕事に携わりながら詩作を続けてきたという。
中也賞の候補に複数なったほか、いくつかの詩の賞も受けている。
この詩集に収録されている「最後の椅子」=写真=(思潮社、2005年)は、まさしく介護施設で働いた体験を下敷きにして書いた作品が中

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■水沢なお…ちょっとキニナル

■水沢なお…ちょっとキニナル

「詩集」を読んで (20) 不定期刊◇三角みづ紀
オウバアキル 思潮社 2004年10月刊

ぼくの感想

筆者はこの処女詩集の出版時には23歳。04年第42回現代詩手帖賞を受賞、第10回中原中也賞受賞。
その後、14年に、第5詩集「隣人のいない部屋」で第22回萩原朔太郎賞を最年少受賞…と華々しい詩歴を誇る。
僕はこの詩集で、初めてこの詩人を知った。
精神科への通院歴があることなども詩の材料にとっ

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■90年前の「現代詩」を見つけた!

■90年前の「現代詩」を見つけた!

「詩集」を読んで (16) 不定期刊◇左川ちか全集 島田龍編 書肆侃々房 2022年4月刊23歳と10カ月余りで亡くなった、女性詩人の詩集、英文詩の日本語訳、散文、日記などを収録した、研究者による本である。
亡くなったのが1935年。生まれた1911年2月と同じなのは、元米大統領のレーガン。映画監督黒澤明は1学年年齢的には上。
左川は、日中戦争、太平洋戦争のことも見聞きしないまま、何編かの詩、翻訳

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■一人称「ぼく」の意味

■一人称「ぼく」の意味

「詩集」を読んで (14) 不定期刊◇さっきまでは薔薇だったぼく
最果タヒ著 2022年4月 小学館刊

女性の表現者が、その創作物で「ぼく」を一人称として使うケースはそれなりにある。
すぐ思い出すのは、シンガーソングライターの森田童子だったりする。
少女漫画、詩歌、小説などでもままあるだろう。
最果の最新刊詩集も、そうである。
女性作家が、「ぼく」として語り、表現する理由は何か。
私、あたし…で

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■共感できる詩 できない詩

■共感できる詩 できない詩

「詩集」を読んで(12) 不定期刊

最近読んだ詩集3冊

古今東西の「詩集」を図書館で、片っ端から借りて読む。その繰り返しの中から、自分の詩を相対化し、質を高める――。
そういう目標を持ち、この1年半ほど詩集を読んでいる。当初は、買うこともあったが、今はほとんど図書館で借りる。特に2000年代以降の最近の詩集はそうしている。図書館に置いてあるものだけでも、おそらくほとんどの詩の領域をカバーするだ

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■自分の感性、感情にはまった

■自分の感性、感情にはまった

「詩集」を読んで(9)中桐雅夫「会社の人事」 (晶文社、1979年10月刊)

表題作でもある「会社の人事」は、多くの現代詩のアンソロジー(選集)に採用されている。そうした中の1冊で読んで、面白いと思い続けていた。4行4行4行2行計14行、起承転結の流れを取るソネット形式で書かれた短い詩だ。
初めてこの詩に触れた時から、わかりやすく、サラリーマン経験者なら誰しもが共感するような内容に惹かれた。

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■「前衛」ということで、よろしいか

■「前衛」ということで、よろしいか

「詩集」を読んで 吉増剛造(8) 不定期刊「Voix」 (思潮社2021年10月刊)

現代詩壇の大物作家の1人の最新詩集である。
御年、今月22日に83歳になる方だ。日本芸術院会員なんだから、お国も認めた大詩人だ。日本芸術院で詩人として会員になっているのは最も若い、我らが荒川洋治先生(72)、高橋睦郎(84)、弁護士でもある中村稔(95)を含めて4人なのだから、その立ち位置は想像できるだろう。

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■政財界詩というジャンルは…ない

■政財界詩というジャンルは…ない

「詩集」を読んで 城山三郎(7) 不定期刊「支店長の曲り角」 (講談社1992年10月刊)

図書館で詩集の棚を見ていたら、城山三郎の名前があったので、小説が紛れて置かれているのか…と思って手に取って開いてみたら、確かに詩集であった。
ご本人は、あとがきに

「私は、学生のころから詩を書き(略)、詩を書かぬ時期こそあったが、詩を読まぬ時期はなかった。詩は私に新鮮な衝撃を、あるいは静かなやすらぎを与

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■美しくみずみずしいが…須賀敦子

■美しくみずみずしいが…須賀敦子

「詩集」を読んで(1) 不定期刊2020年11月から、現代詩、詩世界に触れ始め、ようやく1年。
自分で書きだしてまだ1年に満たないが、これまで断片的に書いてきた、詩、詩集の感想を単独のマガジンでも書き、記録して自分の参考にしていきたい。
基本的に、詩集は図書館で借りて読んでいる。小説に比べるとあっという間に1冊の単行本が読めるので、なるべく多くの本を読み、感想を残しておきたい。

今回の詩集は、エ

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