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『エッセイのまち』の仲間で作る共同運営マガジン

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2022年3月の記事一覧

窓際の後輩くんはお人好しすぎる

私がはやく職場に着いても、 もう既に一年後輩のヒロタくんは 席に座っている。 彼の席は事務室のドアを開けて真っ直ぐの 窓際にあるので、 部屋に入ると一目で 出社していることがわかる。 小柄に、おっとりした目の温顔で 小岩井のカフェオレをよく飲んでいる。 彼とは係が違うので 朝は特段会話するでもなく、 軽く挨拶を交わすくらいで私は席に着く。 静かな空間と朝の新しい空気の中だと 作業が捗る。 だから私も、早く出社するのは好きだ。 しがない経理職員の私の机には 気を抜くとすぐ

言葉の置き場所を考える

文書を書き始めて良かったことは、たくさんある。 語彙力が増えた。 アウトプットの練習になった。 自分の考えや思いを整理することができた。 本当に様々なメリットがあると思うし、文章を書くことで「文章力」と呼ばれるものも、どんどん上達していくのだろう。 ただ、個人的に、こうやってnoteなどで「文章を書く」ことを始めて最も良かったと思ったのは「言葉の置き場所を考える」のが楽しくなったことだった。 ◇ 普段、文章を書く機会と言ったら どんな時を思い浮かべるだろうか。 会

文章にはまだ、丁寧が許されている

リモートワークの普及に伴い、テキストコミュニケーションの機会が増えた。チャットでのやり取りが多いがメールを送らない日はないし、隙のない説明を求められることが多いから、必然的にある程度の分量の文章を書いている。書くのが好きでよかったなと、つくづく思う。 この4月で、今の部署の生活は6年目を迎える。在籍年数が伸びるにつれて質問を受ける機会も増えてきた。リモートワークで接点も限られているから、できるかぎりそのタイミングで相手の力になりたいと思うのだが、往々にして回答の文章が長くな

『現状維持』だって立派なもんだよ

新卒で入社した会社というのは、良くも悪くもその人の思考に影響を与えやすいものではないかと思う。 私が新卒入社した会社は、インターネット求人広告の会社だった。今ではその分野では大手として認知度も高い企業になっているのだが、私が入社した当時はこれからもっといくぜ!イケイケどんどん!はい、じゃんじゃん!というベンチャー臭たっぷりの社風だった。企画営業職として勤務していたのだが、大量の同期とともに新規リストを渡され、とにかく新規電話でアポ取り、商談、時には飛び込み営業もやりまっせ〜

選択肢がもたらす幸福と、その周辺について

家から歩いて数分の場所にスターバックスがある。在宅仕事の合間にするお散歩、ESLが終わった図書館からの帰り道、ときどきコーヒーを買いに行く。 便利な世の中だ。アプリでちょちょいとオーダーしておけば、着く頃にはだいたい出来ている。さくっとピックアップして終了。強制的に店内飲食が不可となって以降、その便利さに助けられたシーンは数え切れないほどあった。解除されてからも、引き続き同様の流れに準じている。 しかし、先日はアプリでオーダーしようとして、なんとなくやめた。お店で決めよう

思い出の交換日記とわたしたちのnote

わたしが小学校5年生ごろ、クラスの女子の間で交換日記が流行った。 誰かと1:1の交換日記もあれば、複数人のグループの交換日記もあって、毎日誰かと交換日記を交わしていた。 だから同時に複数冊やっているものがあって、毎日のように交換日記がまわってきていた。 わたしはそれが楽しくてたまらなかった。 あるグループとの交換日記は、他愛のない日常の出来事を書いた、まさに日記の交換。 「やっほー!リコだよ~今日は○○ちゃんと遊んだんだけど、かけっこできょうもビリだったの~😢」

海からもらったお守りを手に。

私の左のポケットには海がある。 紺色のタフタの春コート。 何の気なしにポケットに手を入れると、 軽くて硬い貝殻に指先が触れた。 その瞬間 波音が耳の中でこだまして、 ああそうだったな 思いつきで海を見に行ったのだったなと、 まだ寒さの残る晴れた早春の午後のことが そのままに思い出された。 時々無性に海を見たくなる時があるのだ。 そうなったらもう海へ行かない限り、 渇望が癒えることはない。 はるかな水平線に 煌めくプラチナの光が浮かんでいたこと。 遮るもののない広い空で 風と

迷わず、迷う という生き方。

中学3年生のとき、原稿用紙1枚分のエッセイを書くという授業があった。「誰が読むわけでもないのだから好き勝手書こう」と、あることないこと書き連ねたら、原稿用紙をはみ出すくらい大きな花丸をもらった。ちょうど進路に悩んでいた時期だったので、「俺には文系の才能があるのかもしれない」という自信が生まれ、公立高校の文系クラスを目指すことにした。 ちょっと成績が足りなかったので、けっこう一生懸命勉強して、なんとか合格した。当時の自分は非常に楽観的な人間だったので、将来の夢を「男版さくらも

美の追求をやめたくない

自分だけの美を追求したいと、20代前半はずっとそう考えていた。好きなものを書いて生活をする。その理想がもしも叶ったらどれほど幸せだろうか。 表現とは自己満足の連続である。美にこだわりを持てなくなったら負けだと思っている反面、クライアントワークにおいては世間が求めるものでなければ、存在すらもなかったことになる。どちらが正しいとかそういった問題ではなく、自身がどちらの道を歩むのかを好きに選べばいいだけの話だ。 いつしか自分が書きたい文章ではなく、世間が求める文章ばかり書くよう

多所属で無所属でいたい話

「たくさん、知り合いいますよね……」他人と話をしているとちょくちょく言われる。
正直なところ、知り合いが多いわけではないし、友達多いアピールをしているわけでもない。 
ただ、どこかのコミュニティに首を突っ込んだり、何かの縁かわからないが、人との繋がりを大切にしている節がある。 小学生の時のこと。1クラス35人くらいだったと思う。とても小さなコミュニティの中でも派閥やグループは生まれる。その中で自分は、いつも居るグループとは違うところに無意識に首を突っ込んでいて、しれっ

言霊なんて

言霊、ことだま、という言葉がある。言葉には霊的な力がこもっていて、言ったことが現実になる、そんな意味合いで使われている。いいことも、悪いことも、言葉にするとグッと実現可能性が高まってしまう、というのはままあることなのかも知れない。 先日の週末から、一家の具合が悪い。 あまりこういう話題は書かないでいるから、どう書いたらいいのかわからないけれど、下の子の体調不良(見た目は元気だが、胃腸炎になっていた)から、上の子、そして僕と妻が、明確に調子が悪い。端的にいえば、上の子は胃腸

まだまだ何だってできる

「実は7月からシンガポールに行くことにしました」 最近よく一緒に仕事をさせてもらっているカメラマンからそんな話があったのは、今日のCM撮影の現場だった。 え?!シンガポール? まずビックリ。 シンガポールで仕事ですか? もちろん、次の質問はこうなる。 「いえ、学校に通うんです」 学校?!シンガポールで?! 二度目のビックリ。 映像関係の学校ですか? 相手がカメラマンなので、当然こんな質問になる。 「いえ、大学院に通ってMBAを取ろうと思って」 大学院でMBA?

あと1週間!今からでも間に合う1000日おむすびゴールを一緒に味わえる記事3本 (流し読み1分でもOK!)

おはようございます! 1000日間おむすびの食リポを続けるチャレンジも、あと1週間でゴール! ここまで来れたのも、いつも読んだくださっているみなさんのおかげ。 本当にありがとうございますー せっかくなので、このゴールを皆さんと一緒に味わいたいなあって思っている。 でも… 「1000日なんて、とても読んでないよー」 「最近読み始めたとこだよー」 「正直言っちゃうと、タイトル読み専門だよー」 ・・・・・ いえいえ、ぜんぜん大丈夫! たとえ今日から読み始めた方で

ソメイヨシノと春のそら

都内の桜は満開を迎えているけれど、私の住む千葉県は都内より少し遅れて、今週末くらいに満開を迎えそう。 今日は休みだったので、午前中に家の事を済ませてから息子を起こした。 起きてきた息子が、朝ごはん(ほぼ昼だけど)を食べながら、「買い物行く?」と聞いてきた。 こう聞く時はだいたい、僕も一緒に行くよという意味。 ラッキー!とばかりに、 「お花見もついでに行かない?」と誘ってみる♡ 「いいねー」と返事。 やったーᐠ( ᐢ ᵕ ᐢ )ᐟと心の中で叫びながら、支度支度! 𖡼.𖤣