Mica

サンフランシスコ→シカゴ在住。海外暮らしのエッセイ、ときどき音楽コラムを書いています。【受賞歴】・紅茶のある風景(審査員特別賞)・いまから推しのアーティスト語らせて(準グランプリ)・ロッキンオン音楽文(月間賞)

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  • 海外暮らしのエッセイ

    アメリカで受け取った言葉や価値観について書いています。

  • 書くこと、伝えること

    書くことや作ることにまつわるひとりごとを呟いています。

  • 音楽コラム/レビュー

    アーティストや楽曲のレビュー。じっくり考察するのが好きです。

  • サンフランシスコ→シカゴ引っ越し日記

    2021年の夏、サンフランシスコからシカゴへ引っ越しました。一瞬で過ぎ去る気持ちの備忘録です。

  • 自己紹介代わりのnote

    はじめましての方へ。自己紹介代わりになりそうなnoteをまとめました。

最近の記事

  • 固定された記事

自分の文章を信じるということ

晴れた日に屋外で味わう冷たいコーヒー。子どもたちが寝たあとの静寂と読書。葛藤や焦燥の先に希望が見える音楽。 編集教室から出された「好きなものを教えてください」の問い。私が前述のように回答すると、講師の方からこんなコメントが添えられた。 『共通しているのは、抑圧からの開放ですね』 自分では一貫性がないと感じていた答えに対して鮮やかに引かれた「抑圧」という一本線。思わず唸るようなプロの紐解きは、心に爽快な納得感を与えてくれた。燦々と降り注ぐ光にも元気をもらうけれど、私は身悶

    • 続きを知らないワンシーン

      最近よく近所の川沿いを散歩している。在宅ワークで怠けた身体と落ちてゆく体力をなんとかしたくて始めたのだが、21日続けると習慣になるとはよく言ったもので、数ヶ月経った今は逆に歩かないと全身が重たく感じるようになった。一生ご縁がないと思っていた「走る」もいずれ私の辞書に登場するかもしれない。 散歩を始めて気づいたのは、思いのほか心にも効くことだ。夕暮れの時間に歩いていると、その日に蓄積した淀みのようなものが少しずつ薄まっていく。すべてが払拭されるわけではないけど、いらない感情を

      • 文字に浮かぶ砂金

        もともと住んでいたシカゴ郊外を離れて、数ヶ月ちょっと経つ。二度目となるアメリカ内の引っ越し。新天地で生活を始める前に、いったん日本へ戻ってきた。その背景や経緯を書き留める予定だったけど、しっくりくる言葉に落とし込めないまま折り返しの時期にきている。 今朝は、高校時代の友人と喫茶店へモーニングを食べに行った。こうこうこんなわけで、しばらく地元にいてさぁ。途切れることなくしゃべって、コーヒーをお代わりして、ランチまで注文して、結局4時間ぐらい居座った。 今の心境や身の回りにつ

        • 青い翼に憧れて

          初めて飛行機に乗った日は、いつ何歳で…と思い出を辿ろうと書き始めたら、びっくりするぐらい記憶になかった。母に確認すると、5〜6歳の頃に九州を巡る中で乗ったのが最初らしい。 それからも何度か乗ったはずだけど、私にとって色濃い飛行機の思い出といえば、高校の修学旅行だ。行き先は中国の北京。脆弱な三半規管のせいで、飛行機に酔ってしまい大惨事だった。いまだに旧友と飲んだら酒のつまみになるぐらいの逸話である。 そんな体験がベースなら、飛行機をきらいになっても不思議じゃなかった。でも、

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          人生という旅路で交わる者たち

          2021年の夏から通っていたESL(英語を学ぶクラス)を卒業した。といっても、8月〜翌年5月で1タームの授業はこれからも続くので、この日が最後だと先生に伝えて行かなくなるだけだ。 週に2回、風の日も雪の日も、開講しているシカゴ郊外の図書館へ向かった。すごく頑張っていたように聞こえるけど、仕事や体調を優先してサボることもたくさんあった。低血圧の朝はいつも行くかどうか迷っていた。 通い続けた2年半の月日は、私がシカゴ郊外で過ごした時間とまるまる重なる。なんとなく中学、高校みた

          人生という旅路で交わる者たち

          氷点下にかかる虹

          真冬は氷点下になるシカゴ郊外。マイナス24℃の世界に初めて身を置いたとき「静かで、きれいだなぁ」と思った。 冷たい空気は、細くて透明な糸が張り巡らされているみたいで、肌が切れそうだと心配になる。いつもは芝生で遊んでいる鳥やリスもひっそり身を潜め、人々は自宅に籠るから声や車の音も聞こえない。 天気は快晴。曇り空より、晴れたほうが気温が下がる。冷気を遮るものがなくなるせいだと、シカゴに来たときに教えてもらった。雲で、暖がとれるのだと知った。 よりによって一番冷えた朝、車を走

          氷点下にかかる虹

          手放しと探求の先に

          シカゴと日本の時差はマイナス15時間。31日の朝。タイムラインを覗くと、紅白の様子や年末年始のご挨拶が並ぶ。あけましておめでとうも、お誕生日おめでとうも、私にとっては、いつも2日間に渡って交わされる言葉だ。 日本で暮らす母から「あけましておめでとう」とLINEがきた。みんな寝てしまい、ひとりで紅白を観ていたという。父とワンコと暮らしているはずなのに「みんな」という言葉が引っかかった。 尋ねると、兄夫婦が泊まりに来ているらしい。元旦には、私の従姉妹一家が来るとのこと。4人の

          手放しと探求の先に

          「心のお花に水やりを」

          も〜〜〜このポップコーンチキンめ!!!と、長男が捨てセリフを吐いて去って行った。私と小競り合いをした締めの言葉。どうしても一言を残さずにはいられなかったみたい。ママはポップコーンチキンの謎。アメリカンキッズ流の悪口だろうか。いずれにせよ、また怒らせてしまった。 どんどん口が達者になり、反抗期へ足を踏み入れつつある長男とは、よくケンカをする。ただでさえ、昔から強烈な個性を発揮していた子だ。お互い大好きなのに、向き合うと拗れる。歯がゆいほどに、齟齬が生まれる。末期の恋人同士かな

          「心のお花に水やりを」

          頭の固い女、感性で生きる

          今年の夏、いろんな人から立て続けに「頭がめちゃくちゃ固い!」と言われた。頑固親父的な比喩ではない。リアルな頭の話。日本帰省中に訪れた、美容室、整体院、マッサージ。各方面に渡る身体のプロたちから言わせると、私の頭皮は珍しいレベルでガチガチに凝っているのだそうだ。 え、それって大丈夫なんですか、と気にする私を横目に、みなさんそう伝えながらどこかうれしそうだった。整体師さんに関しては「やりがいある〜♪」と心の声が漏れていた。ほぐしてナンボの世界では、固ければ固いほど腕がなるのかも

          頭の固い女、感性で生きる

          勇敢な戦士たちの「強さ」を育むもの

          子どもを育てることは、もう一度自分の人生をなぞることだと、誰かが言っているのを見かけた。ツイートだったか本だったか忘れたけど、私は日本で生まれ育ち、子どもをアメリカで産み育てているので、この言葉を見かけた当時はあんまりピンときていなかった。 けれど、これがそうなのかと最近は理解しつつある。私の日常にふたたびドラゴンボールが帰ってきたからだ。 ある日のこと。Amazonプライムに「ドラゴンボール改」という文字を見つけた。わぁ、懐かしい!と思ったのと同時に「改?って何だ?」と

          勇敢な戦士たちの「強さ」を育むもの

          日常に音楽が鳴るとき #推し短歌

          「#推し短歌」企画に参加します。初めてのチャレンジです。タイトル通り、日常の中で音楽が鳴る瞬間をテーマに作ってみました。 ゚+。。.。・.。*゚ ゚+。。.。・.。* 当初、先日書いたELLEGARDENのライブ感想文をベースに、彼らの音楽やボーカル細美さんのソングライティングについて推す短歌を作ってみようと思っていました。 ただ考えているうちに、私にとってはライブ空間や音楽自体がそもそも推しであり、もっと正確にいえば、メロディ、リズム、楽器とかそういった類には全然詳

          日常に音楽が鳴るとき #推し短歌

          あの日、ELLEGARDENの音楽があったから

          音楽と出会うには、おおよそ文脈がある。兄弟が好きなアーティスト、映画やドラマで流れる主題歌、クラスメイトに借りたCD。聞いているうちに、好きなバンドが生まれて、なんとなくの系統ができていく。 私にとってELLEGARDENは、そのどれでもなかった。まるで突風のごとく。ある日ケーブルテレビの音楽チャンネルに流れる「Red Hot」に釘付けになった。一瞬にしてぐっさりと射抜かれてしまったのだ。 MVの舞台である廃墟を切り裂くような疾走感に、洋楽バンドと間違えるほど綺麗な発音の

          あの日、ELLEGARDENの音楽があったから

          突風のごとく駆け抜けた日本の夏を振り返る

          準備できたよ!!と、我が家のボーイズが揃ってパンパンのリュックを見せにきたのは、出発の2ヶ月も前だった。中を覗くと、お気に入りの本やおもちゃがぎっしり。 極寒のシカゴを耐え抜いた春に、日本行きチケットを予約した。 夏になったら、またじいじとばあばのところへ行こうね、と話した日から、長いカウントダウンが始まった。小学校2年生と年中さん。昨年の楽しかった記憶をしっかり刻んでいたらしい。 いつも暮らすアメリカとはちがう、夏休みだけの日本体験。一年ぶりに会う祖父母や親戚たち。彼

          突風のごとく駆け抜けた日本の夏を振り返る

          余白をたのしむ帰省旅

          たぷん、とコップから水が溢れるように、頭や心に言葉が溜まりすぎると外へ出したくなる。今の私にとって、プライベートで文章を書くのはそういう位置づけらしい。 シカゴ郊外にあるオヘア国際空港から羽田空港へ。フライトは13時間半。機内持ち込みの貴重品に加えて、もし、体調を壊したら、ジュースを溢したら…と考えると、リュックはパンパン。中身はプレッシャー。元気真っ盛りの小学生&幼稚園児を、今回は私ひとりで引率する。 それでも「2歳と赤ちゃん」なんて時代よりは、うんと楽になった。映画と

          余白をたのしむ帰省旅

          ボーダーラインを進め

          シカゴの春が不安定すぎる。4月、気温が25度近くにのぼった上旬。夏じゃん、つい数日前まで真冬だったのに!と大慌てで衣替えをしたら、翌週には雪がちらちらと降った。もう。うちに巣を作っていた鳥たちもさぞかしびっくり。 冬と春、夏の境界線があいまいなまま、気付けば5月になっていた。年明けからここまでの記憶はひどく朧げで「慌ただしかった」というおおざっぱな感想しかない。何をしていたんだっけ。そうそう、ハイライトは長男の発達に関することだった。 あれ?この手がかかり過ぎる様子はもし

          ボーダーラインを進め

          世界の街で見る祈り

          シカゴへ引っ越して通い始めたESLでは、授業の合間に15分の休憩がある。わずかな時間、児童書コーナーへ出向き、読みやすくて面白そうな本を探すのが日課。 ある日、クラスに戻ると、メキシコ出身のミゲルが私を待ち構えていた。よく焼けた素肌に白い歯。鍛えられた身体。ナイスガイといった言葉がよく似合う。 きみのバースデーはいつ?とミゲルは私に尋ねた。もうすぐだよ、と日付を答える。すかさずペンを走らせた彼のメモを覗くと、15人ほどいるクラスメイト全員の名前と誕生日が書かれていた。

          世界の街で見る祈り