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演劇・ミュージカルのレビュー

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演劇やミュージカルの舞台・映像のレビューです。
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オペラ『さまよえるオランダ人』新国立劇場

オペラ『さまよえるオランダ人』新国立劇場

何も知らない状態で見に行ったら、オープニングがいきなり、誰もが聞いたことのある有名な曲だった。

ワーグナーが28歳のときの初期作品で、ワーグナーの割にはわかりやすいオペラらしい。演出もわかりやすくスペクタクルな感じで、ディズニーリゾートのショーを連想した(悪い意味ではない)。

演奏がよかった。

メインキャストの「オランダ人」役は直前に代役の人が出ることになり、20分程度開演が遅れた。代役の人

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渡辺えり『りぼん』本多劇場

渡辺えり『りぼん』本多劇場

作・演出・出演を務める渡辺えりさんは70歳で、そのエネルギーと明晰さに驚くが(舞台で拝見したのは初めてである)、ほかの出演者にも(年齢だけで言えば)高齢者が結構いる。

幕を開けた途端、昔ながらの演劇(ストレートプレイだが音楽の生演奏と歌によりミュージカルのようでもある)だ!と思って、なぜかそれだけで涙ぐんでしまった。

その後も数回涙ぐみ、最後はぼろ泣き。

戦争、フェミニズム、歴史、家族愛など

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ヌトミック『何時までも果てしなく続く冒険』吉祥寺シアター

ヌトミック『何時までも果てしなく続く冒険』吉祥寺シアター

舞台上での生演奏を伴う「音楽劇」と称する作品。

冒頭とエンディングにみられる音楽と言葉にならない声を組み合わせた場面は、20世紀の実験音楽の焼き直しを思わせながらも可能性を秘めているが、陳腐な物語とせりふによって全体として台無しになっている。

意図なく(と思える)気持ち悪い演技も見ていて・聞いていてきつかった。

音楽、せりふ、動きのタイミングがずれると成り立たないので、出演者全員、極度の緊張

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ミュージカル『ライオン』品川プリンスホテル クラブeX

ミュージカル『ライオン』品川プリンスホテル クラブeX

ギターを弾く一人ミュージカル。

期待はずれだったかも。
ストーリー、演奏、歌すべて平凡というか。
「ミュージカル」だが、踊りは入っていなかった。
演技ありコンサートみたいな感じ?

ダブルキャストで、見たのは英語版。

『あらしのよるに』十二月大歌舞伎:友情を描いた児童書が原作

『あらしのよるに』十二月大歌舞伎:友情を描いた児童書が原作

ヤギのメイとオオカミのガブが嵐の夜、暗い洞窟の中で出会い、互いの正体を知らないまま友達になる。
翌朝再会した2人は驚くが、ガブはメイを食べないことを決意する。
「メイは大事な友達、だけどおいしそう」…

原作の本がとてもよくて、何度読んでも泣いてしまう。
歌舞伎では、ヤギ、オオカミ、それぞれの集団の動物模様(?)も描かれる。
オオカミは内部闘争があるという独自設定になっている。

主演は中村獅童、

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国立能楽堂2024年7月普及公演「飛越・鵺」

国立能楽堂2024年7月普及公演「飛越・鵺」

狂言「飛越」は動きと言葉の繰り返しが笑いを誘う。

能「鵺」は源頼政に退治された妖怪が亡霊となって旅の僧の前に現れる話。前シテの舟人は黒い長髪で黒い装束、後シテの鵺は赤い長髪で金色の装束というのがすごくかっこいい。後シテの面は恐ろしい形相だが、自らが滅ぼされた様を舞いながら伝えるくだりなど、物悲しい。

能楽の解説を担当した表きよしさん(国士舘大学教授)の「敗者が語る勝者の栄光」の話がわかりやすく

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舞台『オーランド』翻案:岩切正一郎、演出:栗山民也、主演:宮沢りえ

舞台『オーランド』翻案:岩切正一郎、演出:栗山民也、主演:宮沢りえ

ヴァージニア・ウルフの同名小説(Orlando: A Biography)を舞台化。

エリザベス朝イギリスに貴族として生まれ育ち、男性から女性へ突然変化して数百年生きる主人公のオーランド。今回の翻案では現代まで生きる。

シンプルな舞台セットに照明と音楽が冴える。実力派の個性派俳優たち5人の演技も演出も磨き抜かれている。主人公を演じる宮沢りえ以外の4人は男性で、1人数役を演じるという仕立てもよい

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プッチーニ『トスカ』マウリツィオ・ベニーニ指揮、ジョイス・エル=コーリー主演(新国立劇場)

プッチーニ『トスカ』マウリツィオ・ベニーニ指揮、ジョイス・エル=コーリー主演(新国立劇場)

オペラ『トスカ』を始めて見た。フィギュアスケートでよく使われる『トスカ』の曲は、第3幕の曲だったのか。

舞台美術がかなり豪華で、転換も見事。指揮者がおそらく素晴らしく、オーケストラの生演奏がとてもよかった。

トスカ役とカヴァラドッシ役の歌声はすごい。スカルピア役は直前に変更となったが、演じた歌手の声はオーケストラの音量にかき消されるときがあった。歌自体はよかったと思うので、もったいない。(これ

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「HANAGATA」歌舞伎町劇場:日本舞踊を邦楽の生演奏で気軽に鑑賞

「HANAGATA」歌舞伎町劇場:日本舞踊を邦楽の生演奏で気軽に鑑賞

東京・新宿歌舞伎町にある、大衆演劇も上演する小規模のきれいな劇場で、日本舞踊を邦楽の生演奏で鑑賞できる。

毎週木曜に16、18、20時の3回公演。各回約1時間。チケット4000円。

日本舞踊の生の舞台を見たのはたぶん初めてだったが、楽しめた。

演奏は、能と同じ楽器もあったと思うが、もっとにぎやかな感じの演奏。歌も入る。

舞踊は2演目。演奏のみが2演目。花道でも踊る。

お囃子
長唄
舞踊 

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『外地の三人姉妹』チェーホフ、ソン・ギウン、多田淳之介(KAAT)

『外地の三人姉妹』チェーホフ、ソン・ギウン、多田淳之介(KAAT)

日本による植民地支配下の朝鮮半島を舞台に、軍人の父を亡くした日本人の3人姉妹とその周囲の人々の生き方を描く。1935~1942年の日本、朝鮮、世界の情勢を盛り込んでいる。

2020年初演作品の再演。上演時間は約3時間(15分の休憩含む)。

舞台中央上部にスクリーンがあり、時代背景や物語の設定を文字で伝える。時に、舞台上の様子を撮影した動画も投影されていた。

ロシアのチェーホフの『三人姉妹』を

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太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)『金夢島 L'ÎLE D'OR Kanemu-Jima』東京芸術劇場

太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)『金夢島 L'ÎLE D'OR Kanemu-Jima』東京芸術劇場

フランスの高齢女性が幻影の中で憧れの日本にある架空の島へ行って、演劇祭の開催を巡って思惑を巡らす島民たちの政治劇を演出しているといった構造になっている演劇。

島民たちと演劇祭に出演するために海外から訪れたパフォーマーたちが入り乱れ、フランス語、日本語、英語、広東語、アラビア語、イディッシュ語などが飛び交う。

香港や中東での争いや難民・移民問題など、きわどい表現も登場する。深刻な内容を笑いを交え

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演劇『KOTATSU』シアタートラム

演劇『KOTATSU』シアタートラム

こまばアゴラ劇場国際演劇交流プロジェクト2023。

フランス出身で世界各地で上演を行っているパスカル・ランベールによる作・演出の舞台。平田オリザが共同演出を務めている。

俳優の演技力が高く、完成度は高い舞台だった。

内容には外から見た日本への偏見と願望が多分に反映されていた。自覚的にやっているのだとは思うのだが(無自覚だったらあきれてしまうが、そんなことはないだろう?)。いわゆる外国人や在日

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『親の顔が見たい』私立中学を舞台にいじめ加害者と被害者の親、教員を描く演劇

劇団昴の公演。全体的に演技力が低く、設定・脚本も予想よりも悪かった。

公演情報作:畑澤聖悟(渡辺源四郎商店店主)
演出:黒岩亮(劇団青年座)

出演:
岡田吉弘 寺内よりえ 石田博英  服部幸子 中西陽介 米倉紀之子 
あんどうさくら 新井志啓 北川勝博 高草量平 立花香織  髙橋慧  宮崎貴宜

日程:2023年8月30(水)~9月3日(日)

会場:東京芸術劇場シアターウエスト