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演劇・ミュージカルのレビュー

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演劇やミュージカルの舞台・映像のレビューです。
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国立能楽堂2024年7月普及公演「飛越・鵺」

国立能楽堂2024年7月普及公演「飛越・鵺」

狂言「飛越」は動きと言葉の繰り返しが笑いを誘う。

能「鵺」は源頼政に退治された妖怪が亡霊となって旅の僧の前に現れる話。前シテの舟人は黒い長髪で黒い装束、後シテの鵺は赤い長髪で金色の装束というのがすごくかっこいい。後シテの面は恐ろしい形相だが、自らが滅ぼされた様を舞いながら伝えるくだりなど、物悲しい。

能楽の解説を担当した表きよしさん(国士舘大学教授)の「敗者が語る勝者の栄光」の話がわかりやすく

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舞台『オーランド』翻案:岩切正一郎、演出:栗山民也、主演:宮沢りえ

舞台『オーランド』翻案:岩切正一郎、演出:栗山民也、主演:宮沢りえ

ヴァージニア・ウルフの同名小説(Orlando: A Biography)を舞台化。

エリザベス朝イギリスに貴族として生まれ育ち、男性から女性へ突然変化して数百年生きる主人公のオーランド。今回の翻案では現代まで生きる。

シンプルな舞台セットに照明と音楽が冴える。実力派の個性派俳優たち5人の演技も演出も磨き抜かれている。主人公を演じる宮沢りえ以外の4人は男性で、1人数役を演じるという仕立てもよい

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プッチーニ『トスカ』マウリツィオ・ベニーニ指揮、ジョイス・エル=コーリー主演(新国立劇場)

プッチーニ『トスカ』マウリツィオ・ベニーニ指揮、ジョイス・エル=コーリー主演(新国立劇場)

オペラ『トスカ』を始めて見た。フィギュアスケートでよく使われる『トスカ』の曲は、第3幕の曲だったのか。

舞台美術がかなり豪華で、転換も見事。指揮者がおそらく素晴らしく、オーケストラの生演奏がとてもよかった。

トスカ役とカヴァラドッシ役の歌声はすごい。スカルピア役は直前に変更となったが、演じた歌手の声はオーケストラの音量にかき消されるときがあった。歌自体はよかったと思うので、もったいない。(これ

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「HANAGATA」歌舞伎町劇場:日本舞踊を邦楽の生演奏で気軽に鑑賞

「HANAGATA」歌舞伎町劇場:日本舞踊を邦楽の生演奏で気軽に鑑賞

東京・新宿歌舞伎町にある、大衆演劇も上演する小規模のきれいな劇場で、日本舞踊を邦楽の生演奏で鑑賞できる。

毎週木曜に16、18、20時の3回公演。各回約1時間。チケット4000円。

日本舞踊の生の舞台を見たのはたぶん初めてだったが、楽しめた。

演奏は、能と同じ楽器もあったと思うが、もっとにぎやかな感じの演奏。歌も入る。

舞踊は2演目。演奏のみが2演目。花道でも踊る。

お囃子
長唄
舞踊 

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『外地の三人姉妹』チェーホフ、ソン・ギウン、多田淳之介(KAAT)

『外地の三人姉妹』チェーホフ、ソン・ギウン、多田淳之介(KAAT)

日本による植民地支配下の朝鮮半島を舞台に、軍人の父を亡くした日本人の3人姉妹とその周囲の人々の生き方を描く。1935~1942年の日本、朝鮮、世界の情勢を盛り込んでいる。

2020年初演作品の再演。上演時間は約3時間(15分の休憩含む)。

舞台中央上部にスクリーンがあり、時代背景や物語の設定を文字で伝える。時に、舞台上の様子を撮影した動画も投影されていた。

ロシアのチェーホフの『三人姉妹』を

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太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)『金夢島 L'ÎLE D'OR Kanemu-Jima』東京芸術劇場

太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)『金夢島 L'ÎLE D'OR Kanemu-Jima』東京芸術劇場

フランスの高齢女性が幻影の中で憧れの日本にある架空の島へ行って、演劇祭の開催を巡って思惑を巡らす島民たちの政治劇を演出しているといった構造になっている演劇。

島民たちと演劇祭に出演するために海外から訪れたパフォーマーたちが入り乱れ、フランス語、日本語、英語、広東語、アラビア語、イディッシュ語などが飛び交う。

香港や中東での争いや難民・移民問題など、きわどい表現も登場する。深刻な内容を笑いを交え

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演劇『KOTATSU』シアタートラム

演劇『KOTATSU』シアタートラム

こまばアゴラ劇場国際演劇交流プロジェクト2023。

フランス出身で世界各地で上演を行っているパスカル・ランベールによる作・演出の舞台。平田オリザが共同演出を務めている。

俳優の演技力が高く、完成度は高い舞台だった。

内容には外から見た日本への偏見と願望が多分に反映されていた。自覚的にやっているのだとは思うのだが(無自覚だったらあきれてしまうが、そんなことはないだろう?)。いわゆる外国人や在日

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『親の顔が見たい』私立中学を舞台にいじめ加害者と被害者の親、教員を描く演劇

劇団昴の公演。全体的に演技力が低く、設定・脚本も予想よりも悪かった。

公演情報作:畑澤聖悟(渡辺源四郎商店店主)
演出:黒岩亮(劇団青年座)

出演:
岡田吉弘 寺内よりえ 石田博英  服部幸子 中西陽介 米倉紀之子 
あんどうさくら 新井志啓 北川勝博 高草量平 立花香織  髙橋慧  宮崎貴宜

日程:2023年8月30(水)~9月3日(日)

会場:東京芸術劇場シアターウエスト

チェルフィッチュ『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』岡田利規(吉祥寺シアター)

チェルフィッチュ『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』岡田利規(吉祥寺シアター)

日本語を母語としない人々と日本語を母語とする人々の日本語による演劇。

アフタートークの岡田利規さん(作・演出)の話によると、演劇で「せりふの意味はわかるが、せりふが観客の中に入ってこない」ことへの問題意識も、日本語を母語としない人々と日本語の演劇を作ることへとつながったらしい。また、公演のサイトやパンフレットによると、非母語話者の俳優による演技への評価が言語の流ちょうさに影響され過ぎていることへ

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見に行ったダンス・バレエ・演劇・伝統芸能・オペラ・ミュージカル(劇場、コンサートホール)

東京楽所 第16回雅楽定期公演 「新春の雅楽」春鶯囀一具 六人舞
サントリーホール、2023年1月

「Echoes of Calling―rainbow after―」北村明子、東京芸術劇場、2023年3月

新国立劇場バレエ団「コッペリア」2023年2月

「特別講演 ダンス ヴィデオ トーク 春が来たよ~」勅使河原三郎、佐東利穂子、宮田ケイ、2023年3月、カラス・アパラタス

国立能楽堂シ

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演劇『オイディプス王』石丸さち子演出、パルテノン多摩

演劇『オイディプス王』石丸さち子演出、パルテノン多摩

三浦涼介、大空ゆうひ、新木宏典、今井朋彦、浅野雅博ほか出演。

ギリシャ神話のオイディプスは、スフィンクスの謎を解いて退治し、テーバイの王として迎え入れられるが、アポロンの信託をきっかけにその栄光から転落する。この物語はギリシャ悲劇として描かれ、2500年前から演じられている。

ギリシャ悲劇なので、話は急激に展開する。場所もオイディプスの住んでいる建物の前という1カ所。

上演時間は2時間なので

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ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)『かもめ』チェーホフ作、ジェイミー・ロイド演出

ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)『かもめ』チェーホフ作、ジェイミー・ロイド演出

イギリスのナショナル・シアターの舞台が日本の映画館で見られるシリーズ。ナショナル・シアターは古典的な戯曲や文学作品でも演出が面白いことが多いのだが、今回の舞台も、1人1脚の椅子が置いてあるだけの舞台セットで、その椅子を動かすことで場面転換や心情の変化、関係性を表現したりするという興味深い演出だった。

(多様な人種やいわゆる身体障害のある俳優が出演していることは、ナショナル・シアターなどイギリスで

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国立能楽堂「月間特集 近代絵画と能」:狂言『釣針』、能『枕慈童』

国立能楽堂「月間特集 近代絵画と能」:狂言『釣針』、能『枕慈童』

国立能楽堂の2023年2月主催公演。毎年行われ、8回ほど続いているという月間特集で、テーマは「近代絵画と能」。3点の作品を取り上げて、各作品で1回、計3回の公演が行われている。

私が鑑賞したのは、『枕慈童』がテーマの「普及公演」。土曜日の13時開演で、3点の絵画に関する30分の解説の後、狂言30分、休憩20分、能1時間の公演で、計2時間半弱、15:30前に終わったので、初心者でも行きやすかった。

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「浜辺のアインシュタイン」2022年、神奈川県民ホール:1970年代の"前衛オペラ"を新演出で上演

「浜辺のアインシュタイン」2022年、神奈川県民ホール:1970年代の"前衛オペラ"を新演出で上演

1976年初演の作品を新演出で上演。約4時間(休憩1回25分含む)。一部の繰り返しを省略したらしいので、オリジナルはもっと長いらしい。

歌詞原語(英語)・せりふ日本語上演。歌詞は数字などをずっと言っているので、字幕はなし。せりふが翻訳されているのはいいのだが、原語の英語字幕がなかったのは非常に残念。

一貫したストーリーはなく、場面ごとに意味がありそうななさそうな芝居のようなものが繰り広げられた

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