プッチーニ『トスカ』マウリツィオ・ベニーニ指揮、ジョイス・エル=コーリー主演(新国立劇場)
オペラ『トスカ』を始めて見た。フィギュアスケートでよく使われる『トスカ』の曲は、第3幕の曲だったのか。
舞台美術がかなり豪華で、転換も見事。指揮者がおそらく素晴らしく、オーケストラの生演奏がとてもよかった。
トスカ役とカヴァラドッシ役の歌声はすごい。スカルピア役は直前に変更となったが、演じた歌手の声はオーケストラの音量にかき消されるときがあった。歌自体はよかったと思うので、もったいない。(これまで新国立劇場で見たオペラでは、日本の歌手にそういう人が結構いた)
最後にトスカとカヴァラドッシが再会を果たす場面では泣けてきた。ラストシーンでカヴァラドッシが銃殺されてからトスカが飛び降りて自死するまでの時間がかなり短くて驚いた。『ロミオとジュリエット』とは大違いだ。ロミジュリも数日間の話だが、『トスカ』は一夜を挟んだ24時間くらいの物語?展開が早く、悲劇性を高めているのかもしれない。
音楽がどうということはわからないのだが、華やかで力強い音が広がるところと、鋭く強く悲劇性を帯びた叫びのような音が空気を切り裂くように響くところがある。
スカルピアは殺されて当然とつい思ってしまうようなゲスぶりだが、トスカは殺した後にスカルピアをキリスト教的に(キリスト教徒として)弔うような行為をしていた(という演出だった)?
悪いことをしていないトスカがひどい目に遭って神になぜこんな仕打ちをするのかと歌い、ナポレオンが遠方で勝利したのに結局スカルピアは処刑され、冒頭では教会で(スカルピアによって)悪事が画策される。信仰が報われない、理不尽な運命が描かれているようにも見えるが、それでも信仰を捨てるなということなのか、それとも神への疑いを提示しているのか?政治的にも、悪役は王権側で、ナポレオンも最終的には独裁者だが自由主義を体現する存在として表されている?
音楽も壮大だし、演出もいろいろできそうな作品だから人気があるのかな。
作品情報
ジャコモ・プッチーニ
トスカ
Tosca / Giacomo Puccini
全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉
2024年7月6日[土]~7月21日[日]
約2時間55分(第1幕50分 休憩25分 第2幕45分 休憩25分 第3幕30分)
新国立劇場 オペラパレス
【指 揮】マウリツィオ・ベニーニ
【演 出】アントネッロ・マダウ=ディアツ
【美 術】川口直次
【衣 裳】ピエール・ルチアーノ・カヴァッロッティ
【照 明】奥畑康夫
【再演演出】田口道子
【舞台監督】菅原多敢弘
【トスカ】ジョイス・エル=コーリー
【カヴァラドッシ】テオドール・イリンカイ
【スカルピア】青山 貴
【アンジェロッティ】妻屋秀和
【スポレッタ】糸賀修平
【シャルローネ】大塚博章
【堂守】志村文彦
【看守】龍進一郎
【羊飼い】前川依子
【合 唱】新国立劇場合唱団
【合唱指揮】三澤洋史
【児童合唱】TOKYO FM少年合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団