【分野別音楽史】#12-5 電子音楽やクラブミュージックなどの歴史(10年代~現在)
『分野別音楽史』のシリーズです。
良ければ是非シリーズ通してお読みください。
21世紀に突入し、コンピューターによる音楽制作が当たり前のものになり、EDMブームが起こったり、その後はヒップホップの存在感が増したりと、現在の音楽業界全体をとらえる上でもエレクトロミュージックは最も重要度が高くなっていると感じます。
しかし、いわゆる従来の「音楽好き」の視点ではポピュラー音楽史はロックが中心の視点であり、エレクトロミュージックはロックの単なるサブジャンルのような扱いに成り下がっていたり、逆に「ひたすらニッチな音楽・マニアックな音楽を収集してマウントをとりたい」というような、サブカルチャー的な欲求を満たすためだけのものになってはいないでしょうか。
当noteのスタンスとしてはそのような「枝葉の先」をひたすら追うようなための情報ではなく、シンプルに現在の音楽シーンについて知りたい、音楽の知識が乏しかった人でも現在の音楽ジャンルについて解像度を上げて捉えてみたい、という至極真当な興味に対しての情報整理でありたいと考えていますので、その心積もりでお読みいただけると嬉しいです。それでは、参ります。
◉トラップビートの登場とEDMトラップ
まずはヒップホップ史の記事の復習になりますが、20世紀末~21世紀初頭、ヒップホップは東海岸や西海岸を中心に発達していた裏で、00年代は南部のヒップホップも台頭していきました。その中でも、アトランタ発のトラップというスタイルが広がりを見せ、2010年代以降の重要なスタイルとなったのでした。
10年代後半になるとヒップホップは、21世紀のアメリカを象徴する最大級の音楽ジャンルの地位を獲得したといえますが、そのスタイルは、オールドスクールなヒップホップとは完全に異なる新しいものへと変化していました。その基盤となるビートがトラップなのです。
主にドラムマシンの808の音色を中心に作られた、チチチチと連打が印象的なハイハットのパターンや太く響く低音が特徴的なビートパターンとなります。
このビートスタイルは、オルタナティブR&Bや他のポップミュージックなどにも影響を与え、アメリカを中心にその人気を急速に拡大していきました。
そしてその影響は、10年代前半のEDMブームを過ぎた「ポストEDM期」のクラブミュージックシーンにも及んでいくのです。2010年前半に全盛期を迎えたEDMはそのブームのピークを終え、新たな段階へと突入しようとしていました。
復習すると、一般的に「EDM」と言われたときに真っ先に思い浮かべる、4つ打ちのキックに乗せたハイファイで煌びやかなサウンドは、フェスや大箱向けの「ビッグルーム」と呼ばれていましたが、その中身を細かく分類すると、エレクトロハウスやトランス、プログレッシブハウスというジャンルでした。
またこのような「ハウスミュージック系EDM」人気の中、唯一「非4つ打ち」のEDMとして人気となっていたのが「ダブステップ(ブロステップ)」でした。こちらはハウス系に対し「ベースミュージック系EDM」ということができるのですが、ビッグルームハウス一辺倒だった時期を終えたEDMシーンは、まずこのベースミュージック系に「トラップ」のビートが融合するところから進化が始まります。
まずはじめに、単純にトラップのビートを用いたダブステップの系譜を感じさせるEDMが、そのまま「EDMトラップ」として登場し、ナイトメア、イエロークロウ、バウアー、DJスネークなどがサウンドを発信しました。
◉フューチャーベース/フューチャーポップ
さらに、この新しいEDMトラップと近いジャンルとして、エモーショナルでキラキラとしたサウンドに進化した分野が「フューチャーベース」というジャンルの確立となり、2016年以降の数年間のあいだ盛り上がりを見せました。
フューチャーベースの特徴は
「ダブステップの流れを汲むハーフタイムのビート」
「アンビエントな導入部と激しいドロップの対比」
「ボーカル素材を切り刻んだ、特徴的な"ヴォーカルチョップ"」
などが挙げられます。
マシュメロ、サンホーロー、フルーム、リド、イレニアム、ムラ・マサ、スラッシー、ルイス・ザ・チャイルド、カシミアキャットなどがフューチャーベースの代表的なアーティストです。さらに、ビッグルームで活躍したゼッドも、このようなサウンドを手掛けるようになりました。
また、フューチャーベース特有のシンセの手法などがポップミュージックの新たなトレンドとなり、ヒップホップ的なトラップビートからは少し離れた形でのヒット曲も現れました。特に境界線は無いですが、様々な語がある中で、「フューチャー・ポップ」という語を当てはめるのが適切ではないかと僕は考えています。
DJ・アーティストとしてはEDMトラップやフューチャーベースの分野と一緒に括られることも多いですが、マシュメロやゼッド、そしてザ・チェインスモーカーズがヒット曲を多数生み出しました。
◉トロピカルハウスとレゲトン、ラテン
4つ打ちビートを伝統としてきたハウスミュージック系の音楽も、ビッグルームとは違った風潮が生まれてきます。上記のようなトラップやフューチャーベース的要素も取り入れられながら発展した新しいハウスの例として挙げられるのが、トロピカルハウスです。
EDM全盛期のテンポ感よりグッとテンポが落ち、フューチャー・ポップ的なサウンドと、南国を感じさせるサウンドと結びつきました。
トーマス・ジャック、カイゴが代表的アーティストとして挙げられ、他にマトマ、ロスト・フリクエンシーズ、サム・フェルド、ロビン・シュルツ、シガーラらが挙げられます。
このようなトロピカルハウスともリズム的に関連が深いといえるのが、レゲトンです。ラテン音楽史の記事や、レゲエの歴史の記事などでもたびたび紹介しており、クラブミュージック史の90年代の項でも触れたこのレゲトンですが、今回の文脈にも位置付けるべく、ダメ押しで再度紹介していきますね。
もともとダンスホールレゲエとヒップホップとの中間のような形で発生したこのジャンルは、2010年代に大きく注目されることになりました。
レゲトンのリズムは以下の動画で解説されていますが、レゲトンの広がったスペイン語圏の中南米地域はトラップの発生した南部アメリカとも位置的に近いこともあり、レゲトンは「ラテントラップ」と関連した分野として発展しました。一方で、クラブミュージックのように4つ打ちの要素も持ち合わせていたため、トロピカル的なダウンテンポ化したハウスミュージックとの相性も良く、2010年代後半のリズム面の流行にピッタリと合致したといえるでしょう。
大きく注目されるきっかけになったのは2017年。ルイス・フォンシとダディ・ヤンキーによる「Despacito」が大ヒットし、一種の社会現象にまでなり、「レゲトン」や「ラテン・ポップ」の再メジャー化の動きに一気に火が付きました。
レゲトンとヒップホップ(トラップ)は、ビート的に異なりながらも、同じアーティストが相互の分野で活動するケースが多く、このようなラテン音楽への注目の流れをさらに決定づけた例として、ヒップホップシーンからはカーディ・Bの『I Like It』がラテン・トラップとして大ヒットしたことが挙げられます。ラテン調のヒットソングとしては、キューバ出身のカミラ・カベロの『ハバナ』もこの系譜として挙げることができるでしょう。
こうしてラテン音楽に再注目が集まり、同時にレゲトンのリズムが浸透していった動きが一番顕著にわかる例が、エド・シーランの『Shape Of You』のヒットです。レゲトンがわからない人でも「この曲のリフのリズム」と言えばすぐに通じるでしょう。それほどの浸透度を持ったのです。
様々な有名アーティストに楽曲を提供していたシーアも、レゲトンの楽曲「Cheap Thrills」で初めてのビルボード一位となりました。
ダンスユニットのメジャーレイザーも、レゲトンやフューチャーポップ、トロピカルハウス、トラップといった流行のリズムの要素を感じさせる楽曲「Lean On」のヒットで注目を浴びました。
トップ・スターのジャスティン・ビーバーも、スクリレックスのプロデュースによってレゲトン調の楽曲をリリースし、大ヒットとなっています。
◉フューチャーハウス/フューチャーバウンス
ビッグルームEDMが席巻した時代から新たな段階へと変化が起こったクラブミュージックシーンですが、ディープハウスやテックハウスといった、歴史のある従来のハウスミュージックと、EDMを再接続させる動きも生まれました。
EDMと従来のハウスの中間を狙ったようなサウンドは、DJのチャミによって『フューチャーハウス』と名付けられました。チャミの他に、ドン・ディアブロ、オリバー・ヘルデンスなど多くのDJがこの動きを支持していきました。
また、跳ねたリズム(バウンス)と融合したフューチャー・バウンスというジャンルも現れます。オランダのDJ、メストがこのジャンルを提唱し、注目されました。
◉UKエレクトロニカ/ポストダブステップetc.
EDM期以降、一般的にダブステップといえば、うねるような攻撃的なシンセベース「ワブルベース」を特徴とした「ブロステップ」がその代表イメージとなってしまいましたが、そもそもはUKのクラブシーンでの2ステップガラージュなどから発達したダウナーな音楽でした。
EDM化したブロステップではなく、ダウナーな側面を引き継いでUKに登場したのが「ポストダブステップ」などと呼ばれる音楽です。他に、アンビエントR&Bとも呼ばれたりそのジャンル名の呼称は安定していなかったようですが、その指し示される音楽の代表的アーティストとしてはジェイムス・ブレイクが挙げられます。
アンビエント音楽やIDMの影響を感じる非常にダウナーなサウンドは、2010年代以降の多くのミュージシャンのサウンドの方向性を決定づけたともいわれています。
同じくUKに登場したDJのフローティング・ポインツも、次世代のエレクトロニカ的なサウンドを示して注目されました。
彼らに続き、ジェイミーxx、ロレイン・ジェイムス、ロス・フロム・フレンゥ、ジョーイ・オービソン、ペアトリス・ディロンといったアーティスト登場し、現在のイギリスのエレクトロシーンを特徴づけています。
◉チルウェイヴからヴェイパーウェイヴへ
ところで、90年代のロックジャンルとしてノイズを特徴とした「シューゲイザー」というジャンルが誕生していましたが、その系譜を引いたバンド群では、00年代以降に登場したバンドが「ニューゲイザー」と呼ばれたりしていました。
エレクトロニカの要素も混ぜ合わされ、マイ・ヴィトリオール、ウルリッヒ・シュナウス、アソビセクス、M83、アミューズメント・パークス・オン・ファイアなどがニューゲイザーのバンドとして挙げられます。
また、エレクトロニカの影響を受けたロックがアメリカのインディーシーンで主流となったり、シューゲイザーをルーツとするサウンドが注目を浴びるようになると、エコーなどを多用しためまいを誘うような浮遊感のある音世界が「ドリーミー」と表現されるようになりました。こうして、最近では90年代のシューゲイザーを含め、「ドリームポップ」という新たな枠組みでジャンルが認識されるようになっています。
ビーチ・ハウス、バット・フォー・ラッシーズ、ザ・エックス・エックス、シルバーサン・ピックアップス、ダイヴ、ザ・レディオ・デプトといったバンドが成功を収めています。
そのような潮流に呼応するような動きとして、エレクトロニカ・IDMのシーンには、EDMとは相反するLo-fiでチープな、アンビエントの要素もブレンドされたレトロなシンセポップである「チルウェイヴ」が登場していました。
チルとは「落ち着く、のんびりする」などを意味する英語のスラングであり、「グローファイ」とも称されました。ウォッシュト・アウト、トロ・イ・モア、ネオン・インディアン、スモール・ブラック、クレイロなどが挙げられます。
このような音楽の出現が、80年代への憧憬と批評・風刺を含んだ解釈で捉えられ、2010年代に入り、Web上の音楽コミュニティで人気となっていきました。それらはいつしかヴェイパーウェイヴと呼ばれる新たな音楽ジャンルに成長します。
ヒップホップのサンプリングのように、レトロな素材を加工と切り貼りして制作され、ある種のミュージック・コンクレートやアンビエント音楽とも捉えられました。
ヴェクトロイドの2011年の作品「フローラル・ショップ (フローラルの専門店)」が発端とされ、拡散していくにつれすぐに多義的なムーブメントとなっていきました。ヴェクトロイドのほかにはラグジュアリー・エリート、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、猫シCorp、ブランク・バンシーなどが挙げられます。
◉シンセウェイヴ
同じく、インターネット上のニッチなコミュニティから発生し、2010年以降同時現象的に発展したジャンルとして、シンセウェイヴ(レトロウェイヴ)も挙げられます。80年代カルチャーへのノスタルジー的引用が特徴の電子音楽として人気となったのがこのジャンルです。
発生初期はフレンチハウスとの結びつきが深かったのですが、2011年公開の映画『ドライヴ』のサウンドトラックで多くのアーティストが参加し、シンセウェイヴ的なサウンドを鳴らしたため、この映画の公開がきっかけとなって新たなファン層やミュージシャンがうまれたようです。そこから特に人気となったのが、カヴィンスキーやエレクトリック・ユースです。
さらに、1980年代を舞台にしたアメリカのSFホラー・ドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』も2016年にNetflixで大ヒットし、そちらでもシンセウェイヴのようなテーマ曲が注目されました。
このように、80年代のさまざまな電子音楽を現代のクリエイターたちが再解釈したシンセウェイヴはさらに、オルタナティブR&Bから登場したザ・ウィークエンドが、レトロなシンセが印象的な楽曲を発表し大ヒットしたことによって、メインストリームのポップスにもこのようなサウンドのブームが発生していきました。
このような文脈において、フレンチエレクトロの巨匠、ダフト・パンクとのコラボレーション作品も発表しています。
2020年代に入ってからも、ザ・キッド・ラロイとジャスティン・ビーバーの大ヒット曲『Stay』においてこのようなサウンドメイキングが見られるなど、シンセウェイヴの影響力は今尚拡大しています。
さて、ザ・ウィークエンドとダフト・パンクのコラボレーションに触れましたが、これに先駆けてダフト・パンクは2013年に『ランダム・アクセス・メモリーズ』というアルバムを発表しており、同時期のド派手なEDMとは一線を画し、ブラックミュージック的な要素も感じさせる、従来の落ち着いたハウス/ファンクのようなサウンドを既に提示していました。
特にファレル・ウィリアムスが参加した先行シングル『Get Lucky』は、大ヒットとなっています。演奏メンバーはナイル・ロジャース、ポール・ジャクソン・ジュニア、ネイザン・イースト、オマー・ハキムといったファンク・ジャズフュージョン界の大御所が参加し、ブラックミュージックの要素が強く取り入れられたものとなっています。
このようなサウンドは、次に述べるフューチャーファンクやシティポップブームにも繋がる先駆的な例だといえます。
◉フューチャーファンクとシティポップブーム
80年代~90年代の様々な音源を無造作にサンプリングし、デフォルメさせたエフェクトで仕上げるインターネットミュージック「ヴェイパーウェイヴ」。そのブームの中で派生ジャンルとして生まれたのが、「フューチャーファンク」です。
手法的にはレトロな素材を加工・切り貼りして制作されるという、ヴェイパーウェイヴと同じものなのですが、サンプリング元として発掘されていったのが、なんと日本の80年代のシティポップ・歌謡曲なのです。
この動きをつくった重要人物として、セイント・ペプシとナイトテンポが挙げられます。
ナイトテンポは2016年に、竹内まりやの「Plastic Love」をリミックスします。これによってシティポップの海外でのムーブメントに火が付きました。
セイント・ペプシも、山下達郎の楽曲を使ったリメイクで注目を集めました。
このように、日本の昔の楽曲と、無造作に継ぎはぎされたアニメ映像の組み合わせは、過去への憧憬と近未来へのイメージが妙な形でマッチした、独特のムーブメントに発展したのでした。こうして、日本の古き楽曲をレアグルーヴ扱いとして発掘し、リメイクするDJ・アーティストが続出したのです。
このような流れを受け、メジャーなポップミュージックシーンでも、チャーリー・プースやデュア・リパが80年代を彷彿とさせる楽曲をリリースするようになりました。
◉ベッドルームポップ
2010年代後半のポップミュージックを語る上でもう1つだけ見逃せないキーワードがあります。それはベッドルームポップです。
ヴェイパーウェイヴのルーツにもなったチルウェイヴや、00年代末からの実験的なインディロックシーン、ローファイでチルアウトなオルタナティブR&Bといった音楽の空気感をざっくりと身にまといながら、弾き語り、打ち込みや宅録など自宅のベッドルームで生まれる音楽、またはベッドルームで聴くのにふさわしい音楽、というニュアンスで使われることの多い語です。
非常に曖昧な定義ですが、重要な説明として「90年代後半から2000年代に生まれたZ世代が中心的な担い手である」ということが特徴に挙げられます。
Z世代は、インターネットを介して、ロックもヒップホップも、新譜も旧譜もフラットに、しかも大量に聴いてきたからこそ、既存のジャンル区分を飛び越えたポストジャンル性を身にまとった音楽のムーブメントが発生した、という説明。
Z世代は、ジェンダーやセクシュアリティの在り方などでも、旧態依然の分類を拒否しており、それを音楽で表現している。という説明。
Z世代は、楽器や録音機材が安価になったことで、インディペンデントかつDIYに音楽制作を(まさに自身のベッドルームで)行い、MacやiPhoneにあらかじめインストールされているアプリで録音するアーティストも増加した結果、手作り感やローファイが生まれている、という説明。
などといった説明がなされます。
(個人的には、曖昧なムーブメントに対して共通する要素を見つけて後付けの説明がなされているだけのようにも感じられるのですが)
曲調的には、ベッドルームポップと括られている音楽の多くはチルウェイヴやオルタナティブR&Bの分野の音楽と共通している感じです。
しかしそのようなサウンドとは異なった楽曲として、このキーワードで説明すべきモンスター・ヒット曲が1つあります。
それはビリー・アイリッシュの『bad guy』です。
極端に音数の少ないミニマルなサウンドは、一般的に、ベッドルームで曲を書き上げ、世界中へ発信されたというサクセス・ストーリーと合わせて語られています。しかし、実際のところは、ビリーはもともと映画・音楽一家の出身であって、子供のころから芸能界と仕事をしていたり、SpotifyやNetflixによる綿密なプロモーション戦略が最初期から練られてたようです。
このようなことからも、ベッドルームポップというのは、綿密な定義があるというわけではなく、この時代のローファイ的なサウンドを大きくまとめて評する一種のシンボリックワードであると捉えたほうが適切かと思います。
◉2010年代後半のポップヒット
ここまで挙げてきたトラップビートとヒップホップ、オルタナティブR&B、ベッドルームポップ、ポストEDMとフューチャー・ポップ、レゲトンやラテンポップ、レトロサウンドやシティポップ、伝統的ハウスへの回帰、といった要素によって2010年代後半の多岐に渡るポピュラーミュージックシーンのサウンドの多くが説明できるかと思います。
トップスターのアリアナ・グランデやジャスティンビーバー、ポップバンドやアイドルユニット的な立ち位置のワン・リパブリック、ジョナス・ブラザーズ、BTS、R&Bアーティストの流れにあるファレル・ウィリアムズ、シンガーソングライターのルイス・キャパルディなどの楽曲がヒットソングに名を連ねました。
インターネットの時代になり、サブスクリプションでジャンルを横断して音楽が楽しまれるようになった現在。
ひとつのジャンルの系譜だけでなく、ここまでの記事で紹介してきたクラシック、ジャズ、ロック、ヒップホップ、R&B、クラブミュージック、エレクトロ・・・など多様な系譜を多角的に把握することで、2020年代以降の音楽の捉え方も見えてくるものがあるのではないでしょうか。
網羅しきれていない分野もあるかと思いますが、冒頭にも記載した通り、枝葉の先を追うようなための情報ではなく、シンプルに現在の音楽シーンについて解像度を上げるための紹介としてまとめたつもりであり、筆者なりに思い描けるジャンル地図はこのような形になります。