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イタリア生活記録

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選ばれなかった。そして、選んだ。〜高校時代に起きたパンデミックと、それからのこと〜

選ばれなかった。そして、選んだ。〜高校時代に起きたパンデミックと、それからのこと〜

2023年4月。20歳。
私は、イタリアで暮らし始めた。

海外に行くことは中学生の頃からの夢だった。
外国の人と話すのが好きだったし、日本にはないようなフランクな関係性が憧れだった。

そんな私は、都内にある私立の中高一貫校に通っていた。

大学受験を考え始めたのは、中学2年生の時だった。

尊敬していた部活の先輩が通っているという塾に興味を持って、中学生ながら、受験間近の高校2年生に紛れて、推

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ただいま、あったかい便座

ただいま、あったかい便座

ローマ発羽田行きの機内に入った瞬間、そこはもうイタリアではないような空気感がした。聞き馴染みのあるイントネーション。いつかはよく見た白の立体マスク。嗅いだことのある柔軟剤の匂い。こんなにも、というほどに、そこには沢山の日本人がいた。

それでも私は頑固に、イタリアをぎりぎりまで引きずった。玩具売り場で帰りたくないと喚きながら薄ピンクのワンピースが真っ黒になるまで床に這いつくばっていた小さい頃のあの

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歯折って、心かためる

歯折って、心かためる

思い返せば、その伏線は年末のあの日からずっと張られていたのかもしれない。

12月31日に熱を出して、フラフラの状態で爆竹が放たれまくるフィレンツェのヴェッキオ橋沿いを歩いた新年最初の日。が、そのあと2日ほどですっかり元気になり、シチリアにホームステイに出かけるも、またそこで咳が止まらないという未だかつてかかったことのない風邪を発症。自宅に戻ってから医者にもらった薬でなんとか完治し、学校に通う通常

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トモダチ

トモダチ

そういえばこの間、気づいたら珍しく朝方まで友達とパブにいた。友達といっても日本人。わたしと同じようにイタリアに留学中の子たちだ。

もっといろんなタイプの人と知り合う必要があるんだろうけど、現状、やっぱり特に同世代のイタリア人とはなかなか波長が合わない(合わせるのが大変だ)から、日本人と時々こうして集まってみると絶対的な安心感がある。朝方までチェントロで飲んだのはもしかするとイタリアに来て、初めて

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あいがけクリスマス

あいがけクリスマス

12月24日のクリスマスイブは朝6時に前日セットしていたアラームで目覚めた。眠気まなこにラップトップの光を浴びせながら、赤く燃えたぎったその画面にカーソルを合わせ、どうにかこうにかクリックした。

直前までせっかくイタリアにいるのに?という考えが過ぎったけども、留学中に日本のテレビをリアルタイムで観たらバチが当たるなんてのは聞いたことがなかったし、1ヶ月以内であればお金を払うこともなく電波の契約が

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わるもの

わるもの

外国に住んでいるとこちらに在住の日本人と関わりを持つことがある。

自分のように学生という身分で留学にきている場合、と、たまたまパートナーができてしまったがために日本に戻るきっかけを失った、という場合を除くと、ある程度の年齢で外国で暮らしている日本人というのはけっこう変わっていたりする。

明らかに住みやすい国であればまた話は変わるが、私の今いるイタリアにおいては、日本での暮らしに違和感や居心地の

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小娘、高級ワインを知る

小娘、高級ワインを知る

イタリアで1年の4分の3を過ごした2023年。年越しを前にして、忘れられない出来事に遭遇した。それは、トスカーナのDOCGワイン(イタリア格付けワインの最高格)、Brunello di Montalcinoを初めて飲んだ夜のことである。

一ヶ月ほど前から予約していたそのリストランテでは、フィレンツェ名物であるTボーンステーキを食べることが本来の目的であったのだが、そのあたりの数週間、はじめてイタ

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大人になる

大人になる

コロナ禍で二十歳を迎えた私には、世にいう「飲み会」の機会を失ったまま大学生活を過ごした。初めて飲んだお酒は年上の先輩がくれた、コンビニのジュースみたいな缶のお酒だった。

「お酒は20歳から!」の札が並ぶ冷蔵庫の前に立つのも、レジの年齢確認をお願いしますのアナウンスにもいつからか緊張しなくなって、バイト帰りの深夜のコンビニでお酒を買うのが習慣になった。

はじめていつものパステル色の缶から、黄金色

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リボリータを食べながら

リボリータを食べながら

きょう、語学学校で日本人の友人が泣いていた。

友人といっても、私よりすこし年上のお姉さん。

ほんの一ヶ月前にミラノからフィレンツェへ引っ越してきた人で、新しい仲間が増えたと喜んでいたばっかりだった。

大家さんがすこし変わっていると聞いていたが、最近になって意地悪をされるようになったそう。

今朝は、あまりにもひどいことを言われてしまったようで、もう耐えられないから、と彼氏の住んでいるドイツに

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ナポリを見たけどまだ死ねない(前編)

ナポリを見たけどまだ死ねない(前編)

10月、イタリアに留学中の同世代の日本人たちと二日間のナポリ旅行へ。浮かれた気分が残っているうちに書き起こしてみた。初の旅行記。最後まで読んでもらえると嬉しい。

いざ、南へ

実を言うとイタリアの南部という南部は行ったことがなく、ローマ以下に南下したのはこれが初めてだった。

「ローマチェントラーレ」を電車が発車した時、南に行くんだ、という気持ちになって、窓の外の薄暗い街並みにちいさく別れを告げ

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イタリア人とコーヒー

イタリア人とコーヒー

イタリアに来るまであんまりイメージがなかったのだけど、イタリア人にとって、コーヒーはパスタやピザやジェラートなんかよりもずっと大事な存在なんじゃないかという気がする。

どのイタリア人の家にも、マキネッタという、エスプレッソを作る小さいポットのようなものが必ずというほど常備されていて、みんな、コーヒーを飲んでから一日を始める。

授業の間には「Buon caffe!」という先生の挨拶で休憩が始まる

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はじめての男友達

はじめての男友達

人生で、ほぼ初めて、男友達ができた。

というのも、私は小学校から女子校並みの割合の共学校、中高では女子校に行ったせいで、男の子がいる生活をほとんど無しにして青春時代を過ごしてきた。

大学は晴れて夢の共学に進んだものの、飲み会の禁じられる大学1,2年を過ごしたせいで、ろくに男子と深く関わることはなかった。

あっても週1で強制的に会わなければならなかったゼミの男子たちで、○○さんと呼び合うような

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シニョーラたちの若さの秘訣/vacanza-3

シニョーラたちの若さの秘訣/vacanza-3

2023/07/09 10:56
ひとり、ビーチにきた。朝眠れなかった分を取り返すようにまぶたが段々と下がっていって、気づけば早めの昼寝をとっていた。
お腹が空いたな、と思って目を覚ますとすぐ隣のベンチまでも人が埋まりつつあるのに気づいた。
これぞvacanzaだぜ、と興奮しながら、オレンジ色のパラソルの群衆を見回した。
ビーチには私と同世代くらいの若者の集団、ファミリー層と同時に、60代くらいの

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ビビりながら海/vacanza-2

ビビりながら海/vacanza-2

2023/07/09 08:36
今日は朝6時過ぎに目が覚めた。海に行かなきゃ。オレンジ色の日差しに染められた水着たちを見て、すぐに思った。
昨日の夜は一連のことであまりに疲れて、海には行けなかった。
ビーチまでの道中、7時過ぎの街はバールに集うシニョーラたちを除けば、朝らしい平和な静けさが保たれていた。
イタリアにはビーチに入るために支払いが必要だと聞いたけど、それは一体どこで、何時から始まるん

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