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【書籍】感情を武器に変える—折れない心のつくり方ー神谷海帆氏
神谷海帆著『100%仕事で折れない 感情マネジメント』(Clover出版、2021年)を拝読しました。
現代社会は、テクノロジーの進化、グローバル化、そして絶え間ない情報過多によって、かつてないほどのスピードで変化し続けています。私たちは、常に外部からの刺激にさらされ、複雑な人間関係、仕事におけるプレッシャー、将来への不安など、数え切れないほどのストレス要因に囲まれています。このような状況下では、心身ともに疲弊し、自分の感情をコントロールすることさえ難しく感じることがあります。
自己啓発書やビジネス書を読み漁り、ポジティブ思考を身につけようと努力しても、その効果は一時的なものに過ぎず、根本的な解決には至らないという経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。それは、まるで対症療法のように、表面的には一時的に症状が改善しても、根本原因が解決されていないため、同じような問題が繰り返し起こってしまうようなものです。
本書では、このような状況を打破し、真の自己変革を促すための画期的な一冊です。従来の感情コントロール術とは根本的に異なるアプローチを採用し、感情を「抑圧」するのではなく、「解放」し、そのメッセージを「読み解く」ことで、自分の内なる力に目覚め、真の願望を実現する方法を提示しています。
著者の神谷氏は、自らの壮絶な経験(職場のパワハラによるうつ状態)を克服し、その過程で独自の感情メソッドを開発しました。このメソッドは、単に感情を「コントロール」するのではなく、感情と「向き合い」、「理解」し、そして感情を「活用」することを重視しています。本書では、その具体的な方法を詳細に解説し、読者が自身の感情を深く理解し、自己変革への道を歩むことができるように導きます。
ネガティブ感情の重要性:人生を切り開く羅針盤
従来の考え方では、ネガティブな感情は「悪」であり、排除すべきものとされてきました。しかし、本書では、ネガティブな感情を「宝の山」と捉え、その重要性を強調しています。ネガティブな感情は、私たちの内なる声であり、大切なメッセージを伝えてくれる羅針盤なのです。
例えば、嫉妬という感情は、「自分もそれを手に入れたい」という強い願望の裏返しであり、自分が本当に求めているものを教えてくれます。怒りという感情は、自分の価値観や大切なものを侵害されたときに生まれるサインであり、自分の軸を明確にするきっかけとなります。悲しみや悔しさといった感情は、過去の出来事から学び、より良い未来を築くためのエネルギーとなります。不安は、現状維持の殻を破り、未知の領域に踏み出すための勇気を与えてくれます。
感情を無理に抑え込もうとすると、まるで水面下の氷山のように、心の奥底に押し込められ、やがて予期せぬ形で爆発したり、精神的な不調を引き起こしたりすることがあります。本書では、感情を「あるがまま」受け止め、「寄り添う」というアプローチを推奨しています。どんな感情であれ、否定せずに、ありのまま受け入れることで、感情は癒され、そしてその奥に隠された、あなただけの特別なメッセージに気づくことができます。
願望達成への航海図:5ステップで理想の未来を現実化する
本書では、願望を実現するための航海図として、以下の5つのステップを詳細に解説しています。このステップは、単に目標を達成するためだけの技術ではなく、自己理解を深め、内なる力を最大限に引き出すための、包括的なプロセスとなります。
理想を自由に設定する:心の制限を解き放つ
まず、頭の中にあるあらゆる制限を取り払い、心から望む未来を自由に描いてみることです。「もしお金が無限にあったら?」「もし時間が無限にあったら?」「もし誰もがあなたのことを応援してくれたら?」といった質問を自分に投げかけ、ありのままの願望を解放します。この段階では、現実的な制約や目標達成のための手段を考える必要はありません。大切なのは、心の奥底から湧き上がる、純粋な「こうなりたい」という願望を、具体的にイメージすることです。意識をチェンジする:未来の自分を呼び覚ます
ステップ1で描いた理想の未来を、まるで現実のように感じ、意識をその未来に切り替えます。意識の焦点を、「まだ実現していない現実」から、「すでに実現した未来」へとシフトさせます。理想の未来では、あなたはどんな環境に身を置いているのか?どんな人たちと関わっているのか?どんな感情に包まれているのか?といったことを具体的にイメージし、その時の感情を味わいます。このプロセスを通して、あなたは、今の自分と理想の未来とのギャップを認識し、そのギャップを埋めるためのモチベーションを高めることができるでしょう。叶った感情を味わう:喜びと感謝のエネルギーを体感する
まるで、理想の未来を既に達成したかのように感じ、その時の感情を深く味わいます。喜び、感謝、愛、達成感、充実感、幸福感といった、ポジティブな感情を意識的に感じ、そのエネルギーを全身に巡らせます。このプロセスは、単なる想像ではなく、潜在意識に「願望はすでに叶っている」という情報を刻み込む、強力なアファメーションとなります。感情を深く味わうほど、潜在意識はより強くその情報を信じ、願望実現のプロセスを加速させるでしょう。達成感情の状態で行動する:情熱を原動力に変える
ステップ3で体感した達成感情を携え、理想を実現するための具体的な行動に移ります。ここで重要なのは、「やらなければならない」という義務感ではなく、「やりたい」という情熱に従って行動することです。達成感情に満たされていれば、行動は自然と楽しくなり、どんな困難にも立ち向かう勇気が湧いてきます。この段階では、小さな一歩でも構いません。大切なのは、一歩踏み出すことによって、新しい可能性やチャンスを引き寄せることです。より良い結果への余地を創る:執着を手放し、流れに身を任せる
行動をしても、計画通りに物事が進まない時もあるかもしれません。しかし、そのような状況でも、結果に固執せず、もっと良い結果やタイミングがある可能性を信じ、執着を手放すことが重要です。これは、諦めるということではありません。結果に執着するのではなく、宇宙の流れに身を任せることで、より大きな視点から物事を捉えることができるようになり、予期せぬ幸運やチャンスを引き寄せる可能性を高めるのです。
自己理解を深める旅:感情のメッセージを読み解く5つのフェーズ
感情からメッセージを読み解くためには、以下の5つのフェーズを順に進める必要があります。これは、心の奥底に隠された「宝箱」を開けるための鍵を見つける旅であり、自己理解を深め、真の願望に気づくための道標となります。
感情に寄り添う:心の声に耳を澄ませる
まず、湧き上がってきた感情を、善悪の判断をせずに、ありのまま受け止めます。どんな感情であっても、否定せずに、その存在を認め、心の中で「悲しいね」「怒っているね」「寂しいね」と、優しく語りかけるように、感情に寄り添います。このプロセスを通して、あなたは、自分自身の感情を「第三者の視点」から客観的に捉えることができるようになり、感情の波に飲まれることなく、冷静に向き合うことができるでしょう。感情の深掘りをする:心の根っこを探る
感情の根源を探るために、自分自身に「なぜ、そう感じたのか?」「それは、どこから来ている感情なのか?」といった質問を繰り返し投げかけます。この深掘りのプロセスを通して、あなたは、感情の裏に隠された「思い込み」や「価値観」、「過去のトラウマ」といった、心の根っこの部分に気づくことができるでしょう。このプロセスは、自分自身の「心の地図」を把握する上で、非常に重要なステップとなります。自分を褒める:自己肯定感を育む
感情の深掘りを通して、自分の心の深い部分に触れることができた自分自身を、心から褒めてあげましょう。あなたは、感情という複雑な迷路を彷徨い、自分の心の奥底に潜む、真実を発見することができたのです。これは、誰もができることではありません。その勇気と努力を認め、自己肯定感を高めることが、更なる成長へと繋がるでしょう。感情からのメッセージを受け取る:内なる知恵に導かれる
感情の深掘りで明らかになった、心の奥底に眠る「思い込み」や「価値観」、「過去のトラウマ」などを踏まえ、感情があなたに伝えようとしているメッセージを受け取ります。多くの場合、このメッセージは、あなたの成長を阻むブレーキを外し、理想実現のための具体的な行動を促すヒントとなります。感情からのメッセージを正しく解釈することで、あなたは、人生の岐路に立った時に、正しい方向へ進むことができるでしょう。古い習慣を捨てるチャレンジ:変革への一歩を踏み出す
感情からのメッセージに従い、理想の未来に向かって、新しい行動を試みます。この過程では、無意識のうちに、古い習慣に引き戻されそうになることがあるかもしれません。そのような場合は、自分を責めるのではなく、過去の自分と決別し、新しい自分になるためのチャレンジを、繰り返し行うことが重要です。新しい習慣が身につくまで、諦めずに、一歩一歩、前進し続けることが重要になります。
陥りがちな落とし穴:感情の罠を回避し、願望実現を加速化させる
本書では、願望実現の道のりにおいて、私たちが陥りがちな「落とし穴」についても、丁寧に解説しています。これらの落とし穴を事前に理解しておくことで、私たちは感情の罠にはまることなく、目標達成をスムーズに加速させることができるでしょう。
「成功したら困る」という隠れた想い:自己サボタージュの罠
夢が叶うことで、何かを失うのではないか、大切な人との関係が壊れてしまうのではないか、といった不安や恐れを抱え、無意識のうちに成功を遠ざけてしまうことがあります。このような心理状態は、「自己サボタージュ」と呼ばれ、夢の実現を阻む、大きな要因となります。
犠牲を払わなければならないという思い込み:心の足かせ
「成功するためには、何かを犠牲にしなければならない」という思い込みは、心に重い足かせをはめ、行動を躊躇させます。しかし、真の成功は、自分を犠牲にして得られるものではありません。むしろ、喜びと情熱を伴う、バランスの取れた状態の時に、真の成功は訪れるのです。
知らないことを選択できない:視野狭窄の危険性
自分の知らない世界、価値観、考え方があるということに気づかなければ、私たちは、自分自身の可能性を狭めてしまい、現状維持の殻から抜け出すことができません。より豊かな人生を歩むためには、常に新しい知識を学び、自分自身の世界を広げることが大切です。
感謝と与えることの落とし穴:自己犠牲という名の落とし穴
感謝すること、与えることは、素晴らしい行為です。しかし、自己犠牲が強い人は、与えることばかりに気を取られ、自分の心を満たすこと、つまり「自分を愛すること」を忘れがちです。真の感謝は、まず自分自身を大切にするところから始まります。
目的と感情の不一致:熱意なき目標達成の虚しさ
目標はあるものの、そこに自分の情熱が伴っていない場合、モチベーションを維持することが困難になり、目標達成の喜びを味わうこともできません。本当に達成したい目標は、頭で考えるのではなく、心の底から湧き上がる、情熱によって見つけ出すものです。
感情の時間軸の混乱:過去と未来の呪縛
過去の失敗やトラウマに囚われ、ネガティブな感情に支配されたり、未来への不安に押しつぶされ、行動に移せなくなってしまうことがあります。感情には、時間軸があることを理解し、過去の感情と未来への感情を切り離して捉えることが大切です。
感情を道標に、より良い選択へ:迷った時の感情術
本書では、人生の岐路に立った時、どのように感情を頼りに、より良い選択をすることができるのか、具体的な方法を示しています。
決断は感情を優先し、思考は実現方法を探す:心の声に従う
「どちらの道を選ぶべきか?」と迷った時は、頭で考えすぎるのではなく、まず自分の感情に問いかけましょう。「どちらの道の方が、よりワクワクする?」「どちらの道の方が、心が弾む?」と、内なる心の声に耳を澄ませます。そして、感情的に決断をしたら、思考を使って、それを実現するための具体的な方法を練っていくことです。
プロセスは完璧を求めず、行動した自分を承認する:自己肯定感の源泉
目標を達成するまでの道のりでは、必ずしも計画通りに進まないこと、失敗してしまうこともあるでしょう。そのような時でも、結果にばかり目を向けるのではなく、プロセスを重視し、どんな小さな行動であっても、自分自身を褒め、承認することが重要です。
不安と未来を結びつけない:ネガティブ思考の罠
不安を感じた時、その不安を「未来への暗示」と捉え、ネガティブ思考に陥ってしまうことは、よくあります。しかし、不安は、あくまでも「今の感情」であり、未来を予言するものではありません。不安を感じた時は、その感情を認め、その奥に潜むメッセージを読み解き、そこから教訓を得ることが大切です。
決断は先送りしても良い:焦らず、流れに身を任せる
人生においては、すぐに決断をしなければならない時もありますが、必ずしも、全ての決断を即決する必要はありません。「今、決断しない」という選択肢も、時には有効です。焦らず、流れに身を任せ、熟考するための時間をとることも、大切なことです。
根拠のない自信が運を良くする:自己暗示の魔法
「自分は運が良い」と信じることで、本当に運を引き寄せることが可能です。これは、自己暗示のようなもので、自分の潜在意識に「私は運が良い」という情報を刻み込むことで、行動や思考パターンが変わり、結果的に、運を引き寄せるような行動をするようになるのです。
達成感情に周囲を巻き込む:共鳴の法則
あなたが持つ「達成感情」は、周囲の人にも伝染します。夢や目標を語り、周りの人を巻き込むことで、多くの人の共感や応援を得ることができるでしょう。これは、まるで共鳴現象のように、あなたが発するポジティブなエネルギーが、周りの人々の心の琴線に触れ、より大きな力を生み出すのです。
感情も可能性も人それぞれ:多様性の尊重
他人の感情に振り回されたり、他人の価値観に合わせる必要はありません。自分自身の感情を尊重し、自分の可能性を信じて、あなたらしい人生を歩むことが大切です。
まとめ:感情を信頼し、唯一無二の人生を創造する
本書は、感情という複雑なパズルを解き明かすための地図であり、自己変革と自己実現への旅を導くための羅針盤です。この本を読み終えた時、あなたは感情を恐れるのではなく、感情を信頼し、自分自身の心の声に耳を澄ませ、そのメッセージを読み解くことができるでしょう。そして、感情を原動力に変え、自分自身の力で、唯一無二の輝かしい人生を創造していくことができるはずです。
人事の視点から考えること
本書を企業人事の視点でを読み解き、その示唆を考察すると、従来の従業員管理や人材育成の枠組みを超えた、組織全体の変革の可能性が見えてきます。以下に、人事の視点から本書の内容を掘り下げ、具体的なアプションを考察してみます。
1. 従業員の「感情」を組織の「資産」と捉え直す
従来の企業人事では、従業員の感情を「管理」の対象として捉えがちでした。感情の波をできるだけ抑え、理性的な行動を促すことが、組織の生産性向上に繋がると考えられていたからです。しかし、本書が示すように、感情は単に「制御」すべきものではなく、組織の「資産」として捉え直す必要があります。
ネガティブ感情の活用
ネガティブな感情は、組織の課題や改善点を示唆する貴重な情報源です。従業員の不満、不安、怒りといった感情を無視するのではなく、積極的に聞き取り、その原因を突き止め、組織の制度や風土を改善していく必要があります。例えば、従業員からの率直なフィードバックを促すような匿名アンケートや、個別のヒアリングの機会を設け、感情を言語化する場を作ることは有効です。
ポジティブ感情の増幅
従業員の喜び、達成感、感謝といったポジティブな感情は、組織のエンゲージメントや生産性向上に直結します。従業員が、自分の仕事にやりがいを感じ、組織に貢献できているという実感を持ち、互いを尊重し、支え合うような環境を構築することが重要です。例えば、従業員の貢献を称える表彰制度、チームワークを高めるためのイベントやワークショップ、互いに感謝を伝え合う文化を醸成するなどが考えられます。
感情リテラシーの向上
感情を「管理」するのではなく、「理解」し、「活用」するための教育研修を導入することが重要です。感情とは何か?なぜ感情が生まれるのか?感情をどのように表現すれば良いのか?といった基礎知識から、自己認識、他者認識、感情のコントロール方法、ストレスマネジメント、レジリエンス(回復力)向上などの実践的なスキルを、従業員に習得させる必要があります。
2. 組織全体のエンゲージメントと幸福度を高める
本書の考え方を取り入れることは、従業員のエンゲージメントと幸福度を向上させ、組織全体の活性化に繋がります。
心理的安全性の確保
感情をありのままに表現できる環境を整えることが重要です。上司や同僚からの批判や非難を恐れることなく、安心して自分の意見や感情を伝えることができる「心理的安全性」が確保された組織では、従業員の創造性や主体性が最大限に発揮されます。管理職に対して、傾聴スキルや共感力を高めるための研修を実施し、部下の感情を理解し、受け止めることができるような、心の器の大きいリーダーを育成する必要があります。
従業員間の相互理解を深めるために、チームビルディングやコミュニケーションワークショップなどを定期的に開催し、感情を共有する場を設けることも有効です。
キャリア開発支援
従業員が、自分の強みや才能を生かし、やりがいを持って仕事に取り組むことができるように、キャリア開発支援を充実させる必要があります。個別のキャリア面談を実施し、従業員自身の希望やキャリアプランを明確にし、研修機会やキャリアパスの提示など、具体的な支援を提供します。本書で言及されるように、「嫉妬」や「イライラ」といった感情は、自分の才能や強みを示唆するヒントとなります。感情を深掘りするワークショップなどを開催し、従業員自身が、自分の才能や強みに気づき、それを仕事で発揮できるようにサポートします。
ワークライフバランスの尊重
従業員が、仕事だけでなく、家庭やプライベートも大切にできるような環境を整備することも重要です。柔軟な働き方、十分な休暇制度、育児や介護をサポートする制度などを導入し、従業員の心身の健康をサポートすることは、エンゲージメント向上、ひいては組織の生産性向上に繋がります。
多様性の尊重
多様な価値観やバックグラウンドを持つ従業員が、お互いを尊重し、認め合うことのできる組織文化を醸成する必要があります。性別、年齢、国籍、障がいの有無などに関わらず、全ての従業員が、その個性や才能を十分に発揮できるような、インクルーシブな環境を整備することが、企業の成長には欠かせません。
3. リーダーシップ開発における感情の活用
本書の考え方は、リーダーシップ開発においても大きな示唆を与えます。
感情知能(EQ)の高いリーダーシップ
従来のリーダーシップは、論理的思考力や問題解決能力といった、認知能力に重点が置かれてきました。しかし、現代のリーダーシップには、感情を理解し、活用する能力、つまり「感情知能(EQ)」が不可欠です。リーダーシップ研修では、自己認識力、自己管理能力、社会的認識力、人間関係管理能力といったEQの構成要素を高めるためのプログラムを導入し、感情の重要性を理解した、共感力、思いやりがあり、従業員のモチベーションを高めることができるリーダーを育成する必要があります。
感情を共有するリーダーシップ
リーダーが、自分の感情を隠すのではなく、適切な形で部下と共有することで、信頼関係を構築することができます。自分の失敗談、弱さ、葛藤などを部下に共有することで、人間味あふれるリーダーとして部下からの信頼を得ることができます。
従業員を巻き込むリーダーシップ
リーダーが、自分のビジョンや目標だけでなく、従業員の夢や願望を理解し、それを組織の目標と結びつけることが重要です。従業員が、組織の目標と自分の目標が一致していると感じることができれば、組織へのエンゲージメントが高まり、目標達成に貢献するでしょう。
4. 採用における感情の重視
採用活動においても、スキルや経験だけでなく、応募者の感情や価値観を重視する視点を取り入れる必要があります。
企業の理念やビジョンへの共感
応募者が、企業の理念やビジョンに共感しているかどうかを確認します。面接では、スキルや経験だけでなく、「なぜ当社で働きたいのか?」「何にやりがいを感じるのか?」「どんなことに喜びを感じるのか?」といった、感情に関わる質問を投げかけ、応募者の価値観やモチベーションを探ります。
企業の文化との適合性
応募者の価値観や行動特性が、企業の文化に適合するかどうかを見極めます。面接だけでなく、職場見学や社員との交流を通じて、応募者が企業の雰囲気に馴染めるかどうかを判断します。
具体的なアクションプラン例
感情フィードバック研修
従業員が、自分の感情を認識し、適切に表現するための研修を実施する。1on1ミーティングの質の向上
上司が部下の感情を理解し、共感し、寄り添うことができるように、1on1ミーティングの進め方について研修を行う。
感情共有ワークショップ
チーム単位で、自分の感情を共有し、互いを理解するためのワークショップを開催する。
自己認識ワークショップ
自分の強みや才能、価値観、情熱を明確にするためのワークショップを開催する。
感情を可視化するツール導入
従業員の感情を定期的に把握し、組織全体のエンゲージメントを測るためのツールを導入する。(アンケート、パルスサーベイなど)
最後に
本書は、従来の組織論や人材育成論にとらわれず、感情という、人間にとって最も本質的な要素に焦点を当てた、画期的な一冊です。この考え方を組織に取り入れ、実践していくことは、従業員のエンゲージメントを高め、創造性豊かな組織文化を醸成し、企業の持続的な成長を可能にするでしょう。人事担当者は、本書をきっかけに、感情という視点から、組織を見つめ直し、より良い企業文化を創造していく役割を担っていくべきでしょう。