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「王様の声は、俺らにも聞こえてたよ」 「じゃが、わしらは冒険者でない」 一行の来訪は、渡りに船。 「済まない、ヴェネローンで難民の送還が決まった」 「まあ、気にするな」 クワンダの詫びにも、余裕を見せるヤスケ。 「メルーン城への道中の護衛と、城内の探索を頼みたい」

「山頂の城へ行くには、死者の坑道を抜ける必要がある」 「噂に聞く、ダイヤモンドの鉱山でちゅか」 かつて、カレの征服者ガマが軍を派遣し開拓した鉱山。 魔王軍の制圧後は、メルーン城への道を阻む難関に。 バラムツが倒れた今もなお、悪霊や不死者の巣窟らしい。 「父さんの歩んだ道…」

ブリテンの奴隷船から救い出した難民が、再び捕まらないように。 ヤスケの願いを受け、司祭王が思案する。 「では、ヨハネス村の周囲にまで隠蔽結界を広げよう」 エウロパ人たちが、プレスター・ジョンの城を発見できなかった理由。 それは、一種の幻術。部外者の侵入を阻む目くらまし。

さらわれたオルルーン。 それは物語の強制力、避けられぬ運命。 巨人開発に雪辱を誓うオグマ。今回の配信はここまで。 続きを気にかけながら、布団に入るパパさん。 やがて、夢の中。 (おや、ここは?) 見覚えのある、黄金の宮殿。ワルハラだ! 私は、戦死者じゃないんだが?

最後に見えたのは、オレガノが謁見の間にサークレットを置く場面。 「勇者オレガノが生きていれば、妻子に危害が及ぶ」 旅はまだ、終わらない。 「故に私は今から…誰でもない男だ」 「では、何とお呼びすれば?」 孤独な彼を、案じるユッフィー。 「私はヴァジル。怪傑ヴァジルさ」

ドヴェルグの工房で、石像を彫るオグマ。 彼自身と同じ、背が低く立派なヒゲのドワーフ。 完成した石像。石の肌に宿る生気。 まるで石化の呪いが解けるように、新たなドワーフが誕生した。 「このままでは済まさん。わしらの手で、巨人を作るのじゃ!」 男だけの彼らが、仲間を増やす方法。

「という夢を、見たんですよぉ!」 再びアルゴ号、朝の食堂。熱弁を振るうエルル。 「アッシュが聞いたら、驚くわよね」 「ええ。父さんがバラムツを倒していた…」 魔王バラムツ。 三巨頭の中では最初に名が広まり、ヨミコやピサロは彼の部下だった。 長い間、消息不明だったが。

「一つ、気になることが」 アッシュが隠密ドローンの映像を見せる。大判の紙を読む紳士。 「アミステッド号の怪:消えた奴隷だと!?」 「もうバレまちた?」 驚愕するクワンダとシャルロッテ。 「ブリテンに気をつけろって…!?」 怪傑ヴァジルの警告を思い出す、マリカとアッシュ。

「断る」 普段は温和なアッシュが、断固拒絶。 「僕たちには、僕たちのやり方があります」 一触即発。張り詰めた空気。 しばしの睨み合いの後、緊張の糸は切れた。 「行きたくば、行け。お前たちは必ず、後悔するがな」 強者の余裕か、アーシャは逃げる一行を追わなかった。

数日後、ヨハネス村の廃墟にポータルが開いた。 現れたのは、ヴェネローンに避難していた難民たち。 「舞姫さんが滑りながら踊って、すごかったの!」 子供たちが、氷の都での体験を語る。 話を聞くクワンダは、心当たりがあるようで。 「こっちでも、スケートリンクが必要でちね」

ロキの案内で、謁見の間へ来たパパさんとエルル。 「そのままでいい」 異世界人への配慮か、率直に話すオーデン。 「君の物語は、聞かせてもらったよ」 「お恥ずかしい限りで」 一体、どこで見てたのか。 「詩人は、君の世界で言うインフルエンサーだよ」 なぜ、そんな言葉を?

奈落へ落ちてゆくオレガノを、桃色の柔らかな何かが受け止める。 左右を見れば、虹色の巨大な羽が羽ばたいて。 「これは!?」 「わたくしはユッフィー。地底の国より、馳せ参じました」 すると、上空から怒声が。 「おのれ!このまま、大地のあぎとに喰われるがいい」 大穴が閉じる…!

「脱出しますの!」 とっさに、ドラゴンの髪をつかむオレガノ。 それを確認すると、巨体が全速で駆け昇る。 左右より迫り来る岩壁より速く。 大穴から、青空の下へ飛び出る桃色の竜。 かつて、全ての災いの根源と呼ばれた穴は…ここに閉じた。 「礼を言おう、竜の姫君よ」 「光栄ですの」

死闘を制したのは、勇者オレガノ。 魔王を倒した英雄の凱旋、そのはずが。 「お前は知り過ぎた。妻子には、火山に落ちて死んだと伝えよう」 「何っ!?」 バラムツの骸が起き上がり、何とムウ国王の声で語り出した。 「魔王討伐を口実に、ムウが再び世界を統べる計画をよくも」

「驚いたよ。君は詩人なの?」 頃合いと見たか。ロキが感心して声をあげる。 「詩人ならば、丁重にもてなさねば」 「悪い噂を流されたら、困る」 ざわつくエインヘリャルたち。 「二人には、オーデン様に会ってもらうよ」 (夢なら、何でもできると思ったけど) 手に汗を握ってた。

夢見の宝珠を持つ勇者アッシュと、夢の国の司祭王。さらに難民を含めた一同の願いを束ねる儀式により、ヨハネス村一帯を守る隠蔽結界は完成した。 「アルゴ号がクーロンに着いたら、ヤスケさんをポータルで送りますよ」 「俺はサムライじゃないが、受けた恩は忘れない」 これで、先へ進める。

ヴェネローン評議会は、難民の送還を決議した。 それが、女神アウロラからの知らせだった。 「何だと!?」 「投票は僅差でした」 冷静なクワンダが、怒りを表に出す姿を初めて見るアッシュ。 「私達もまた、世界が違えど人の子なのです」 反地球感情の高まりが波及した、突然の苦難。

「盗人には、いずれ報いを与える」 遺跡は自分のものと、謎の声は明言する。 「だが先に、闇へ堕ちよ!勇者オレガノ」 何の呪文か、気付くと深く巨大な穴に放り込まれた。 底は真っ暗で、先が見えない。 「ぬわあぁぁ!?」 万事休すと思われた、そのとき。 「させませんの!」

「なるほど。我が主君に取り憑いた、貴様の狙いは分かった」 映像の中のオレガノは、驚くほど冷静だった。 「だが、私だけが原因ではない」 ムウの遺跡から、強大な軍事力を得たブリテン。 彼らは悪しき植民地支配を推進したが、同時にムウの台頭も妨げた。 毒をもって、毒を制す。

ロキがオルルーンとエルルを見比べながら、思案する。 「話を聞いた限りだと、流れ星が落ちた後…この子になった?」 「誰かが、彼女みたいな娘を嫁に欲しいとでも思ったのか?」 戦乙女の一人ヘルヴォルが、推測を述べる。 (対象を複製する漂着物…もし巨人に使えば?) 謎は深まる。

「余は、貴殿に任務のため独自の判断で自由に軍を動かす権限を授けよう」 「私の使命は、ムウ皇帝を討つことのみ」 軍服姿のアーシャが、ブリテン王から任官の儀式を受ける。 王は彼女に従う道を選んだ。人々は口々に噂した。 王の目当ては、エディンバラ城の「勇者の武器庫」。彼女なら…

「奴らはまだ、ガスカル島に停泊中か?」 七海の瓶の行き先を示す、モニターをアーシャがにらむ。 アルゴ号の行き先は彼女に筒抜けだが、アッシュも分かった上での策だ。 ここは交易の中継地で、海賊の拠点。 「連中は、宝珠の探索でも?」 「我々は、バーラトへ先回りするぞ」

朦朧とする意識の中、流星に頭を打たれたオルルーンが身体を起こす。 「大丈夫か?」 一緒に水浴びしていた、仲間の戦乙女も駆け寄って。 「だいじょぶですかぁ?」 おかしいぞ。三人で来たのに、四人目がいる。 「誰だお前は?」 「エルルちゃんはぁ、エルルちゃんですよぉ♪」

ブリテンを離れたアルゴ号は、自動操船で暗黒大陸を南下中。 「妹が見つかった?」 「かもしれません、彼女が皇帝との決戦後に製造されたなら」 夜の甲板には、マリカとアッシュにシャルロッテ。 「優しいでちね、アッシュしゃん!」 家族のいるアッシュと、孤独なアーシャは対照的。

「何事だ!?」 慌てる大臣。シャルロッテたちにも伝わる警報。 (想定外の事態です。早急に退避して下さい) アッシュからの念話。護衛のクワンダが即断する。 「俺達は独自に脱出させてもらう」 扉を突き破り、大型の警備ロボが襲い来る…! 「シャルさぁん!」 「大丈夫でち!」

(マリカさんは、先に脱出しました) 謁見の間に駆けつけたアッシュからの念話に、安堵するシャルロッテたち。 そして、一同が見据える視線の先には。 「私はアーシャ、ムウの作りし人造勇者」 銀髪の少女は、問答無用に宣言する。 「蘇った皇帝を討つ意志のある者は、私に従え」

「分かったよ、何とかしよう」 謁見の間を出た少年は、ワルハラ宮殿の廊下を歩きながら考える。 彼は、悪戯の神ロキ。変身や姿消し、幻惑の術に長けたオーデンの養子。 神々の敵、霜の巨人の一族だが、ワルハラで一番の隠密にして道化。 その素顔は意外にも、争いを好まぬ穏やかな少年。

「だいじょうぶ、もうすぐ勇者さぁんが助けに来ますよぉ!」 エルルが王様を安心させようと声をかけるが。 彼の顔は真っ青。そこへムウの遺産らしき指輪が警告を発した。 「勇者反応あり! 数は二つ!!」 一つはアッシュだとして、もう一人は!? 「この城はもう、おしまいじゃ!」

お城の廊下を巡回する警備機械。赤いサーチライトが床を照らす。 (あれに当たったら、姿を消しててもアウトです) 姿を消したマリカに、アッシュからのテレパシー。 (見たことない装置だらけよ) (ムウの人造勇者と、夢見の宝珠を極端に警戒してますね) 通路の角から、様子を伺う。

「七海の瓶は、神の如き兵器だ。取引には応じないだろう」 「でちょうね」 クワンダの指摘に、うなずくシャルロッテ。 「注意を引いてる間に、お願いするでち」 「準備はできてるわよ」 マリカが見せたのは、おばばが育てたハーブの袋。 「お茶ですかぁ?」 「姿消しの呪文に使うのよ」

一行がアルゴ号へ帰還すると、先に戻ったマリカが出迎えてくれた。 食事の準備までしてくれて。 「まずは全員、無事で何より!」 妻と息子の笑顔を見て、アッシュもようやく緊張が解ける。 「みんなのマンマですねぇ、マリカさぁんは♪」 「さあさあ、いただくでち!」

「こちら、フリズスキャルヴ」 空の上から声が。厳密にはテレパシーで。 「この人たちを、かくまってほしいでち」 不安そうにシャルロッテを見る黒人たち。 「彼女は、どの列強にも加担しない。ただ窮地の民を救わんとする行いだ」 クワンダも、声の主に口添えする。果たして結果は?

「君にばかり負担をかけて済まない。だが…」 輝く黄金の宮殿。神々の王にひざまずく、一柱の少年神。 「ミーミルの首が、告げたのだ」 聡明さで名高いはずの王が、このときは落ち着きを欠いていた。 「君には敵地に潜入し、炎の巨人を奪取して欲しい」 「ムスペルのスルトを!?」

おて商136〜140話/ブリテン編

クリスマス間近、冬至の日。 エインSAGAの1話が配信された。 それは、極北の大地が育んだ「戦いの神話」。 人々の想像力を刺激してやまない北欧の神々は、多くの創作物に姿を変えて現れ、世界樹が大地に根を張るように数多の異世界を創造した。 そしてまた、新たなループが幕を開ける…

「ここからは、俺が聞き込みで集めた噂だ」 その後のシチリアについて、クワンダが話す。 「エリックの死を聞かされたゼンタは後を追い海に身投げ、娘を失ったルチアノは精神を病んで引退、レオネが今のボスらしい」 島の連中は皆、油断ならない。 「隙を見せれば、寝込みを襲われるぞ」

「安心するのは早いぞ」 クワンダが追いついた。あちこち探したらしい。 「あんたは…嬢ちゃんの仲間か」 安堵するヤスケだが、表情は晴れない。 彼は多くの人々を救出したが、子供や女性もいる。 「ヨハネスまでは、あまりに遠いな」 車があるブリテン軍からは、とても逃げきれない。

偵察に出ていたヤスケが、クーロン城砦に帰ると。 「ホンコンの様子は?」 「ブリテンの連中、108の豪傑の噂を警戒してたぜ」 昨夜の夢渡りで助けた難民は、期限付きで氷の都へ。 こっちは、ここから。 「次にお出まし願うは関帝聖君か、斉天大聖か」 物語は、現実の軍隊に勝てるか?

「簡単ではないぞ」 シャルロッテを見るクワンダ。 「だが、それが俺たちの道だ」 護衛対象だった少女の成長を、不器用ながら認める微笑み。 「シャルさぁん、良かったですねぇ!」 「お守り役から、相棒に変わったみたいだな」 二人の関係性が変わったことは、すぐ周囲に伝わった。

その夜、エルルは不思議な夢を見た。 どこかも分からぬ、夜の砂浜。 白い甲冑のブリテン兵が肌の黒い人々を銃で脅して、強引に船へ。 (あれってぇ、昼間にリヴァプールの港で見たのと同じ) 「たぶん、暗黒大陸でちゅ」 耳元で囁く声。シャルロッテだった。 「しょうがないでちね」

ブリテンはムウの遺産を集め、軍事・民間問わず利用する。 この街の至る所で見かける、走る鉄の箱もそう。 新大陸で先住民の聖地から盗まれた「七海の瓶」を悪用し、ブリテン海軍はイスパニア艦隊を壊滅させた。このまま好き勝手させては危険だ。 秘宝の奪還が、ソルフィンからの頼みだった。

飛び出したエルルが、黒人を撃とうとしたブリテン兵を背後から殴って気絶させる。フライパンの一撃は強烈だ。 「ああもう、ケセラセラでち!」 成り行き任せで、シャルロッテも氷の魔銃で援護射撃。 「エルルか!?」 賊のリーダーが、気付いて手招き。考える余裕もなく、誘導に従った。

「いたぞ! ダッチマン号だ」 「おのれ、今日こそは」 ロカ岬近海で、地中海から出てくる船を砲撃していたガマの艦隊がダッチマン号に狙いを変える。 「当たらないぜ!」 エリックの見事な操舵で、砲弾の雨をかい潜るダッチマン号。霧のランプで幽霊船らしく姿をくらまし、上手く逃げた。

「ボクたちはピサロの動向を探りに、クスコ近海へ向かうよ」 長靴半島の危機以降、新大陸の南で勢力を拡大するピサロ。 「シャルロッテちゃんは、バーラトの前にブリテンへ寄るでち」 新大陸で、ソルフィンが先住民から受けた依頼とは。 それぞれの乗員が、甲板で別れのあいさつを交わす。

リヴァプールで宿を取る一行。 万一に備えクワンダは隣室へ、シャルロッテとエルルは相部屋。 ベッドに寝ると、今日の疲れが一気に。 「エルルしゃん。ヤスケしゃんのことでも考えてまちたか?」 「シャルさぁん、鋭いですねぇ」 ヒノモトで知り合った、元奴隷の青年。今頃どうしてるだろう。

「これで、大西洋に出れるでち!」 「ところがね、まだ難題があるんだ」 地中海を西へ走る、アルゴ号とダッチマン号。かつて密航以外に手がなかった、シャルロッテとマリカの感動は大きい。海賊少女マリスも、二人を頼もしく感じていたが。 「悪名高き海賊バスコ・ダ・ガマ…前途は多難だね」

レモンの積み込みが完了した。 まもなく出港するアルゴ号の甲板上で、アッシュの視線の先には。 「勇者クワンダ。これが序の口なのは、よくご存知でしょう」 心に残る、道化人形の壊れ際の言葉。 「クワンダさん、あなたは一体…?」 「俺はただの助っ人、傭兵だ。この世界ではな」

先日は面会謝絶だった前ボスと、晴れて会談するシャルロッテ。 「エリックには、済まぬ事をした」 「彼らなら、大丈夫ですよ」 アッシュが指を鳴らすと、応接室にホログラムが。 中継されるダッチマン号の様子に、驚く子分たち。 「ルチアノしゃん、これからも変わらぬ取引をよろしくでち」

長靴半島の危機が去った後。 戦力不足を感じたシャルロッテは、1年の間にどこかで銃を入手し、訓練していたらしい。大気中の水分を雹弾に変え、撃ち出す魔銃。おそらくは、ムウの遺産。 出所は明らかでないが、アッシュがアンロックした「勇者の武器庫」から護身用に贈られたのかもしれない。

周囲の景色が変わる。コルシカ島から出る船の上で、振り返る少年。 士官学校に入学した彼は、戦場で華々しく出世していく。 「あれは、別の人生を歩んだあなたです」 「オレがか?」 驚くレオネに、警告するクワンダ。 「エウロパは、もう平和だ。これ以上の戦争は」 「必要ないでち!」