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孤島に持っていく本を問われた時、
自分の余命が分かった時、
人はどんな本を選び読むのだろう?
本棚はその人の思考の露呈である。
となると、私の本棚は偏屈な愛情に満ちている。
つ…
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2025年2月の記事一覧
【孤読、すなわち孤高の読書】サン=テグジュペリ『星の王子さま』
かつて子供だったすべての大人へ捧げる問題提起と覚醒。
[あらすじ]
幼い王子が歩む道は、ひとつの遍歴である。
無垢なる者が、冷笑的な大人の世界に触れ、しかし決してそこに染まることなく、自らの真実を抱きしめながら旅立つ。
飛行士「僕」が砂漠に不時着したとき、小さな星からの訪問者は、しずかに彼の前に立っていた。
王子は語る。
彼は、自分の星でたったひとりのバラを愛しながらも、それが何たるものかを知る
【孤読、すなわち孤高の読書】アルトゥール・ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』
厭世と悟りの狭間に立つ者への道標。
[読後の印象]
三十五年ほど前、私は初めてショーペンハウアーを読んだ。
その陰鬱なペシミズムは、私をこの上なく退屈させた。
若さとは得てして楽天の産物である。
未来を明るく信じる世代にとって、ショーペンハウアーはただの偏屈な哲学翁にすぎなかった。
しかし、歳を重ね、社会の現実という泥を踏みしめ、不条理という風雪に曝されるうち、彼のアフォリズムは、時に温もりを