2023年12月の記事一覧
ハードボイルド書店員日記【167】
ようやくクリスマス商戦を乗り越えた。
本の入荷も28日で終わっている。次は4日の朝だ。年末年始との間に生じる凪のようなひと時。
レジ時間を終え、事務所へ入る。実用書担当と並んでPCの前に座った。彼女は溜まりに溜まった新刊案内のFAXをチェックし、売り上げデータを見ながら補充分を注文する。私は直返品の本のバーコードを一冊ずつハンディタイプの機械へ読み込ませ、ダンボールへ詰める。本屋が扱うのは取次
ハードボイルド書店員日記【166】
クリスマス商戦で大混雑の週末。年末年始を休まぬうえに、このシーズン限定の割引クーポンまで配布された。施設の決めた取り組みである。観光客が多く訪れるからという理屈はわからなくもない。それならどこかのタイミングで土曜か日曜に全館休業日を1日設けてはどうか。他業種の人が働く日も働かない日も出勤し、給料はそういう連中よりだいぶ低い。これが書店員の実態だ。
袋が要ると伝えたのにくれなかった。横のレジでマス
ハードボイルド書店員日記【165】
「だったらアマゾンで頼むからいいや」
12月も中旬である。他店舗や取次に在庫がなく、出版社から取り寄せる場合に要する時間は10日~2週間。どこの書店でも同じはずだ。そして入荷は28日がラストで年明けは4日から。書籍の便が通常に戻るのは6日だ。
「申し訳ございません」「もうちょっとスピーディーにできないの? そんなことだからネットに負けるんだよ」ストライプ入りの紺のスーツを着た中年男性。初めて見
ハードボイルド書店員日記【164】
「これ、意味あります?」
土曜の朝。休配日だから入荷はない。しかし前日に社員が病欠して人手不足に陥り、4時間レジを抜けられなかった。落ち着いたと判断して離れるたびにベルで呼び戻される。まるで賽の河原かシーシュポスの神話だ。おかげで旅立てなかった新刊と補充分が、ブックトラックに歪なオブジェを形作っている。
すぐ品出しを始めた。そのために早く来たのだ。紙幣にもコインにも無縁の30分。どうでもいい。
ハードボイルド書店員日記【163】
「これ、ブックサンタで」
レジで申し出を受けるケースが増えてきた。大概は絵本や児童書だ。代金を受け取り「オリジナルステッカー」と「サンクスレター」をお渡しする。お預かりした本は、全国の大変な境遇に置かれた子どもたちへ贈られる。素晴らしい試みだ。
私自身、家や学校で嫌なことがあったときは本に救いを求めた。小学生の頃は図書室にあった江戸川乱歩の少年探偵団シリーズ。高校1年の夏休みには部活の練習と合