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『2024年に観た映画』3選

『2024年に観た映画』3選

1.LOVE LIFE(2022)

平日月曜日に鑑賞することが、満足いくまで寝るより大事だった。木村さんの嫌な感じ、永山さんのだめやさしい感じが折り込まれている(心情吐露しすぎていた? あるとしたらアウトなのだが果たして映画的善悪の正解はあるのか)。「中古」とほざく相手家族が(申し訳ないがたいていの場合想像通りその息子も)まずい。オズワルド伊藤のそっくり、ラストまでは良かったのに~~!!「目を見

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『鳥と港』

『鳥と港』

書きたいと思えば思うほど、私にはもう小説のことがわからない。けれど佐原さんの書く小説を、この先もかならず手にとって読まなければいけないということはよくわかる。

みずみずしい。とにかくこれだ。いつまでも幼い私(たち)は、この一連の青春小説の形をしていなければ、ちりばめられる示唆をまずもう受けつけられないだろう。

この本は『重版出来!』『虎に翼』と同じゾーンに漂う一冊だ。ちょうど今仕事をしていて、

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『PERFECT DAYS』

『PERFECT DAYS』

深夜に書かずにおれない。まずわたしは、布団を畳む動作を、自分にとって特別な段階で既視している。

無垢であることの危ういバランスが甚だしい。清掃されるトイレ同様、‘何か汚いものがうつるんじゃないか’ときれいな画面から目を離すことはできずにずっとこわいのだった。

喋りすぎると映画の価値は崩れていく。トキオとニコとモモカズの口からこぼれた説明のいくつかはまだ放り投げられる余地があるのかもしれない。ト

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本屋大賞2024

本屋大賞2024

ノミネート作すべて、無事読破📚
今年はひとりで、ジュッと短期戦でした。
それもまた良きかな。読んだ順。

『リカバリー・カバヒコ』青山美智子

唯一ノミネート発表前に図書館で見つけ、1時間半で読んだ。昨年度ノミネート作『月の立つ林で』と同じ構えをもっていた。『赤と青のエスキース』『お探し物は図書室まで』もそう、もう型が決まっている。短編で、それぞれが繋がっている。誰にでもわかる。ほろほろする。そ

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『文藝 2024年春号』

『文藝 2024年春号』

今。
バルクアップ!プロテイン文学と言われれば読むしかない。ラベルをつけるって本当にすごいことだ。

長井短『存在よ!』

こわいきもちで〜急にこうやってぽん って入ってくる文章のファンです。
泣きそうになった幽霊の献身、応援
想いが届いてよかったね。

児玉雨子『跳べないならせめて立て』

かつてバレーボール運動をしていた自分とどこか無理矢理にでも重ねて読んでいるのだろうな。口調は憧れるものに似

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『水引』

『水引』

渋谷〇〇書店で装丁に目を奪われて購入した。大森静佳さんとお話できたことも短歌をつくってみたこともずいぶんと前のことで、この一冊も夏に買ってからしばらくの間、ビニールに入ったまま本棚に横になっていた。

自分に課した100冊をとうに読み終えて、文芸誌にばかり手がのびる。そのことがうれしい。完了主義な自分に中途半端を許せるこの2か月間のことがふわふわと不安で、10日に一度くらいうれしい。

さいごのど

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『文藝 2023年冬号』

『文藝 2023年冬号』

見つけてもらうために、見つけてもらいにいかなきゃいけない。例により連載以外は読みました。

座りたいと思っている椅子にはもう100人じゃきかないくらいの人々が座っている。外側の方に座っているあの人の本が好きだった。けれどもtwitterって残念なほうに転んでしまうほうが多いのかもしれない。だからやめた。どちらにしたって見せかけだ。とって代わるように、いや本来というのか、対談に勇気をもらうのだ。他者

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『2023年に観た映画』3選

『2023年に観た映画』3選

1.『犬王』

まず私は身体表現への関心が分厚い。面をかぶって舞うことへの憧れとともに、ひとつめのパフォーマンスで気持ちを持っていかれてしまった。時代が合っているのか自信はないけれど、室町にもつ飾り立てのない異質なイメージがいきなり現代と錯綜してスタートする。カットが1秒より短い。こういう時間の切り取り方をするんだなぁーと思う。色も口語もギターもアンプも、当時の高揚を今感じさせるために必要だったの

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『文藝 2023年秋号』

『文藝 2023年秋号』

町屋良平「生きる演技」

ナイスタイトル。装丁がかわいらしくて、『1R1分34秒』を読んだのはもうずいずん前のことだ。格闘技要素が入りがちである。町屋さんの身近にあるのだろうか。あるのだろうな。結末にストーリーまでも入り込ませられる。一人称は‘かれ’。

尾崎世界観「電気の水」

検索→AI。
尾崎さんが小説を書く動機を大いに告白している。過去と未来じゃなくて、今への向かい方が短く短く示されている

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『文藝 2023年夏号』

『文藝 2023年夏号』

どうやら出力がうまく行っていないらしい。全部は読めなくとも、創作と短編だけは読み、記録していきたい。これから出力できるように読むことがかなっていきますように。掲載順ではなく読んだ順に。

朝比奈秋「あなたの燃える左手で」

国と身体。
切られてしまうことに、ずっとえー!となる。そのえー! が最後まで持続する。

児玉雨子「##NAME##」

私にとってスレスレの気持ち悪さはエンタメで、毒親はエン

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『覇王の譜』

『覇王の譜』

終幕に一粒こぼれた。将棋が分からなくてもこんなことになるの?

奨励会に在籍「した」という経歴で挫折を想像させる。私ならピアノのグレードテストに落ちたときのことも英語検定を取り落としたときのことも傷で傷で、通ったあともそのときのことなんて書きたくない。愛して、だめで、それでも愛していないととても書けない。

感想戦と、AIとの向き合いかたを描く場面で
スタンダードに、一気に主人公を好きにさせる。

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『2023年に読んだ本』3選

『2023年に読んだ本』3選

はじめに

近年めあてにしている、年間で100冊の本を読む、を本日(9/8)達成しました。

自分なりのこの早さは、前半の本屋大賞ノミネート作に背中を強めに押してもらえたことと、厳格な図書館がそばにあったことが大きくかかわったのだと思う。

人に力を分けてもらうことも多かった。三宅香帆さん、梨ちゃんさん、友達、先輩、ありがとう。

日に日に忘れっぽくなっていくので、元日から読書ノートをつけ始めてい

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『人間みたいに生きている』

『人間みたいに生きている』

携帯電話が許されたのは周りの比べてかなり後になってからで、あれは人生唯一本気だった受験勉強が始まるひとつ前に起きた。モバゲーの小説である。

理不尽サバイバルデスゲーム好きは何度も語っているが、『王様ゲーム』の系列で、もうタイトルは忘れてしまったが、洋館に少女が監禁される小説を読んでいた。

そんなのを読んでいるのは自分だけだと思っていたが、のちに隣で猛勉強することになる友達も読んでいたことを最近

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本屋大賞2023

本屋大賞2023

同僚たちとまわし読みしてランキング予想をした。ノミネート作を全部読んだ。

共通して、凪ぐねぇ。
共通して、そしてこの人には勝てない(何で?)(人生部門で)という登場人物がいた。
本同士の連帯があるということが、通して読んだことでわかる。
読んだ順。

『方舟』夕木春央イヤミスど真ん中すぎてにこにこしちゃう。小五郎風くんへの頼もしさがずたずたに崩れる様が圧巻。ホワイダニットがおそろしく濃い。女性性

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