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日々のまま

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エッセイ。みたもの、聞いたこと、感じたこと。あの日の旅のこと。日々のままに、そのままに。
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#日記

捨てたわけじゃない | 世界一周の旅に出る

捨てたわけじゃない | 世界一周の旅に出る

日本を離れたいんだと言った。現実から逃げたいんだと言った。時間が欲しいんだと。これは逃避行なのだと。でも、この現実世界には、大事な人たちがいて、思い出がたくさんあって、日常の中には小さな喜びもたくさんある。なんでもない日のこと、みんなのこと、日本のこと、暮らしのこと、家族のこと、大好きな友のこと、忘れたり捨てたり無かったことにしたいわけじゃない。わけじゃない。明日からわたしは世界一周の旅に出る。

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分からないことだらけの日々

分からないことだらけの日々

誰もいない実家で、窓から陽が差し込み、ふわふわと宙に浮いた自分の心ははっきりしない輪郭をしていて、わたしはそれをぼーっと眺めていた。もう10月だというのに驚くほど暑い日だった。予定のない平日の昼間などいつぶりだろう。

9月で会社員を辞め、10月から生活が変わった。いわゆるフリーランスのような働き方になった。時間や場所にしばられず自由になった。これはわたしが探していた自由のうちのひとつなのか、まだ

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自分のために

自分のために

魂が震える1日だった。わたしは歌えないけれど、自分のために自分の言葉を綴ろうと誓った夜だった。たくさんのアーティストさんたちが、たくさんの気持ちを、小さな想いを、誰かへの愛をまっすぐに歌っていた。誰に届くかなんて関係ない、でも誰かに届くように祈りながら、誰かを想いながら、自分の命を燃やし続けるために、歌っていた。

自分のために歌え、と彼は歌い叫んでいた。誰かのためにと思いながら、最後にその矢印が

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逃げない関係

逃げない関係

付き合う前、夫のことが異性として気になっていた頃。わたしは夫に言った。「ねぇ、わたしなんでも思っていない人にこういう態度とらないからね。」と。夫は余裕のある感じで「自分が思っていることって、大体相手も思ってるんだよ。」と言った。

そんな夫と、先日大きめのケンカをした。夫はわたしに「僕と”ふたりで”旅をする、旅を楽しむということを想像できてる?」と言った。夫はどうやらここ最近のわたしの単独行動が気

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苦しみの大きさを比べない

苦しみの大きさを比べない

「こんな日だからこそ、書こう。」
そう思ってカフェでパソコンを開きました。

連日の悲しいニュース、悲惨な速報を見るたびに胸が痛む。誰もが、自分にできることは一体何なのか、迷い、もどかしく感じているのだろう、と思います。

一方で、心の何処かで「自分ではなくて良かった。」「家族が巻き込まれなくて良かった。」そんな風に安堵してしまうのも事実です。当たり前の感情だとしても、そう思ってしまうことへの罪悪

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儚く、そして力強く

儚く、そして力強く

夢の中で、何か大事なものを無くしてしまった感覚があった。そこにあるのに、触れられない、行けない、満たされない。どこか虚しい気持ちで目覚めた朝のこと。いつもはどこまでも美しく見える車窓からの景色に、色はまるでないようだった。雲の切れ間から差し込む光は薄暗いのに、たしかにそこにある。だけれど、東からのぼりかけている太陽はずっとずっと遠くにあるように見えた。

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健やかなるときも、病めるときも

健やかなるときも、病めるときも

まだ誕生日は嬉しい。早く大人になりたいとおもっている。あと少しで誕生日だ。去年の誕生日にはディズニーランドに行き、帰ってきて夫とふたりコロナにかかった。夢のような気分と、地獄を一挙に味わって、でもそのどちらの瞬間にも夫がそばにいて、どちらの喜びも辛さも一緒に感じて、夫婦ってこんな感じで生きていくのかな?と考えたりしていた。

健やかなるときも、病めるときも。

それはつまりこういうことかも、とほん

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ぼんやりと考えていた信じることについて

ぼんやりと考えていた信じることについて

あんまりこういうこと書きたくないなーって思う内容になるかもしれないけど書きます。頭の中をぐるぐるしていることを。

わたしの実家のお風呂の湯の温度は45度でした。それがとんでもなく恐ろしく高かったことを知ったのはつい最近のこと。あつーい湯が好きなじじ(祖父)の影響だったのではないかと思っている。いや、お風呂にいつも一番にはいるのはばば(祖母)だったから、ばばのせいかな。そして誰も文句を言わず、お風

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さくらももこ展と分人主義とバチェラー

さくらももこ展と分人主義とバチェラー

さくらももこ展で原画を読みながら、頭の中でそれぞれの登場人物たちの声が聞こえてきた。

まるちゃんはいつも心の平穏を保ってくれて、コジコジはいつも勇気をくれる。さくらももこさんが生み出したキャラクターに日々を支えられている人は多いはず。

星野リゾートに入社して、わたしは星のや竹富島に配属された。地元を離れる日の朝。早朝の使い慣れた地元の駅のホームにふたりの親友が見送りにきてくれた。そのときにふた

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熟したミニトマトをもぐように

熟したミニトマトをもぐように

お祭りに行く前の夕方、そわそわとした時間が大好きだった。浴衣に早く着替えたくて、浴衣を準備して、ちょっと触ってみたりして、なかなか動かない時計の針をちらりちらりと何度も見た。夏祭り。それは夏休み中でなかなか会えない友だちや好きな子に会える可能性がある日でもあった。いつもとは違う特別な夜が、今もずっと大好きである。

何年かぶりの夏祭りに出かけた。夫と近所の子を連れて。はぐれないように3人で手を繋ぎ

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湯に溶けてゆく

湯に溶けてゆく

まだ月曜日だっていうのに全身がヘロヘロで、わたしは急いで銭湯へ向かった。肩まで湯につかる。思わず、「うぁあ~~」と声が出る。目を閉じる。温まった手で顔を覆うと1日中PCを眺めて疲れ切った眼が回復していく。疲れがじわり、じわりと湯に溶け出して、身体中の関節が緩んでいく。身体が少しずつ温まっていく。外は暑い日々が続くけれど、やっぱり身体を温めてあげることって大事だなと思う。夏だからこそ、かもしれない。

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魂のままに | 人と麦と音 品川音楽祭

魂のままに | 人と麦と音 品川音楽祭

友人夫婦に「音楽フェスをやりたいんだけど、手伝ってくれない?」と声をかけてもらったのは確か桜が散り、春が終わりを告げようとしていた頃だったと思う。音楽やイベントが好きなふたりの思い切ったチャレンジに、わたしも夫も2つ返事で同意した。

主催者であるぺきんさんと奥さんのもんちゃん。ぺきんさんは品川宿という北品川にあるゲストハウスを運営する会社で働いていて、夫が以前そこでアルバイトをしていたことで仲良

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なんでもない日記

なんでもない日記

⚪︎月×日(くもり)
10月にみっこおばちゃん(じじの妹)の3回忌があるからね、と母に言われたことをふと思い出して、この梅雨のせいで少しカビ臭いのが気になった礼服をクリーニングに出した。

クリーニング屋のおばちゃんに「急ぎじゃないかしら?」と聞かれて、わたしは「はい。」と答えた。「じゃあ2週間もらっていいわね?」と聞かれて、わたしはほとんど考えることもなく「はい。」と再度答えた。

それから3日

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どっしりとした幸せ

どっしりとした幸せ

ナバラ村で伝統家屋であるブレを見たとき、ふと竹富島の赤瓦の屋根の家を思い出した。なんとなく似ているな、と思った。造りもそうだけれど、備わっているものが。生きるために本当に必要なことだけがある家。家族やご近所さんや大切なひとたちが集まれる開放的な家。今日の天気や、季節が感じられる、つまり風を感じられる家。先人たちの知恵が詰まった土地に馴染んだ家。

そこには立派なカウンターキッチンや、冬を凌ぐ床暖房

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