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魂のままに | 人と麦と音 品川音楽祭

友人夫婦に「音楽フェスをやりたいんだけど、手伝ってくれない?」と声をかけてもらったのは確か桜が散り、春が終わりを告げようとしていた頃だったと思う。音楽やイベントが好きなふたりの思い切ったチャレンジに、わたしも夫も2つ返事で同意した。

主催者であるぺきんさんと奥さんのもんちゃん。ぺきんさんは品川宿という北品川にあるゲストハウスを運営する会社で働いていて、夫が以前そこでアルバイトをしていたことで仲良くなった。そのつながりでもんちゃんも含め仲良くさせてもらい、わたしも大変お世話になっていた。人柄もよく分かっているふたりが、何かを実現させたいと思っているのなら、手伝わないわけがない。わたしたちも意気込んだ。

とは言っても、イベントの主催など経験がなく、なにをすればいいのか分からなかった。音楽フェスなのでアーティストが必要だし、お祭り感を出すには食べ物を売ったり、飾りつけをしたり、ポスターの絵とか、そもそもフェスの名前とか。資金はどうするのだろう、とか。

きっと誰も分からなくて。ぺきんさんももんちゃんも分からなくて。でも、分からないことを、ひとつひとつ、知っている人に聞いたり、考えたり、まずはやってみたり。ふたりはそうやって今回の開催における答えを探していた。わたしたちは、なるべく近いところで手伝いたいと思いながら、なかなかやれることを見つけられずにいたりもした。意気込んだ分、そのもどかしさもあったりして。もっとコミットできた部分もあったのではないか、と思うのが本音ではあったりするのだけれど。

わたしたちはふたりが見つけてきてくれた答えを一緒に吟味して、実行に移す部分を主に手伝った。少しずつ、自分にできることが見えてきて。出来たことは本当に一握りで、一部で、僅かで。でも、当日を迎えて、ひとりひとりの力が集まった時の、その集合体のパワーの大きさを本当に感じて、そのパワーの中のひとつに自分がいるんだということがとても嬉しかった。きっとみんながわたしたちと同じように、自分の力は微力だと感じながらも、そのなかで最大限の発揮をした。その集合体となった当日の会場はとてつもないエネルギーに満ちていた。

当日集まったメンバーはおそらく全員、これまでぺきんさんともんちゃんに関わってきたひとたちで。相関図にすればみんなが繋がるようなひとたち。ご縁を大切にして、ひとつひとつを積み上げ、繋いできたふたりのこれまでの人生に心からリスペクトの想いがした。初めましての人が9割で、その中であんなに気持ちよくコミュニケーションが取れて、一緒に仕事が出来る。ぺきんさんともんちゃんを好きな人たちが集まっているから、だろうなと思う。同じものを好きな人たち同士が、息が合わないわけがないのだ。

当日は始まってみると本当にあっという間だった。ボブ(わたしと夫のキューピッドでもある)の歌声がフェスの開幕を告げ、三線からヴァイオリンまで。様々なジャンルのアーティストがステージに立つ。誰かが声を、音を発するたびに、会場にいる人たちの体にそれが伝わって、みんな思いのままに身体を動かした。揺れたり、踊ったり、目を閉じたり、手をつないだりして、その音を心に大切に響かせていた。

いつの間にか日が落ちて、最後のアーティストがステージで歌っていた。

始まりの時が来て 今日までのあこがれが溶けていく

あこがれ/Keishi Tanaka

トリを務めていただいたアーティスト、Keishi Tanakaさんがスタッフに向けて、と歌ってくれた1曲。美しい歌詞と、それを聴くぺきんさんともんちゃんのにこにこした、そして想いを噛み締めた表情が遠くからちらりと見えて、グっときた。まさに、第1回の開催であるこの日にぴったりの歌詞だった。ふたりの今日までの想いは、ここで溶けて、広がって、確実に人の心に届いていた。

最終ステージ!

来場者数は想像を超えて、大人も子どもも思い思いに歌って踊って、食べて飲んで。これはきっとみんなが見たいと思っていた景色に近かったのではないかなと思う。少なくともわたしにとっては、想像を遥かに、遥かに超えた景色だった。

そしてそれからもうひとつ、嬉しかったこともある。親友のりっちゃんにも関わってもらえたこと。音楽に関わる仕事をしている中学時代からの親友であるりっちゃんに手伝ってもらうことができた。りっちゃんは根っからの音楽好きで、アーティストをサポートする仕事を日々している。りっちゃんとなにかを一緒に頑張るのは中学時代の体育祭以来だろうか。懐かしい気持ちもして、嬉しかった。疲れたねー、といいながら肩を組んで労った時間は、またひとつりっちゃんとの関係性においてすごく大切なものになった。おぺき、もんちゃんありがとう。

あ、そうた、まだもうひとつ。夫のいいところも見つける機会になったことも。元々夫は誰とでも陽気に会話ができるのだけれど、それが発揮されていてとても良かった。老若男女、丁寧に、優しく、夫が会話で相手を包むのを見る度、この人と結婚して幸せだなと思った。愛の起点になる人。

好きなことを好きだと心から叫び、魂の燃ゆる場所で心を尽くす。ぺきんさんともんちゃんのふたりの姿に心から感動したし、刺激を受けた。素直に、人間らしく、ありのままの姿がいちばん美しくて、いちばんかっこいい。大人になっても心が感動して泣ける人生を、わたしも歩みたい。

音楽はいつでもひとの心を繋ぎ、動かす。関わらせてもらえたこと、見たことのない景色を見られたことに感謝の思いでいっぱいなのである。いっぱいの気持ちを、覚めぬうちに、ここに記しておくことにする。

記念すべき第1回スタッフ

▼人と麦と音
Instagram:@hitotomugitooto

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Yuuri
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