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珠玉集

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2024年6月の記事一覧

【創作】隣に越して来たもの【守り猫マモル】

【前回のお話】 興味本位で事故現場を見に行った主人公のOLは、それがきっかけで怪現象と体調不良に悩まされるようになる。 続く怪現象と酷くなる体調不良にとうとう限界を感じた主人公。 何を思ったか「恐ろしい思いをしながら部屋に一人でいたくない」という一心で、ペットショップに駆け込む。 そこで「俺を飼えよ、追い払ってやるから」とテレパシーを伝えてくる一匹の猫と出会う。 何度も生まれ変わり霊格が高く、それ故に波長の合う人間(飼い主)と出会えず売れ残っていた猫は、見事主人公に取り憑く悪

足つぼのお話

noteのプロフィールは、この一文で始まる。 資格は持っておらず、完全に自己流だ。 つぼの位置や反射区が描かれた本は、一応持っている。 本を見ながら行なうことは、ほとんどない。 自分のコンディションや、揉んだ時の反応(かなり痛いのか、痛気持ちいいのか、手応えを感じないのか等)身体が伝えてくれる情報を聞く。 手探りしながら押していく。 私の足つぼグッズ。 泊まりには何か一つは携帯していくし、長時間の乗り物移動は、左上の突起のある球体を手で握ったり、密かに靴を脱ぎ、足裏

【エッセイ】祖母が死ぬ前に読みたかった本 #創作大賞2024

十代の頃に読んだ本を、 八十を過ぎた晩年に読み返すとどう感じるのだろうか。 ふと、祖母とある小説の話を思い出した。 私は、間違いなくおばあちゃん子だった。 畑に囲まれる田舎の家。 祖父母、両親、四人の兄弟の八人家族の中で私は育った。 母は私たち家族のために毎日家事や育児で忙しく、母の手伝いをするくらいしかコミュニケーションは取れなかった。その代わり祖母と多くの時間を過ごした。 赤ん坊の頃は祖母におんぶされ庭を散歩したり、 畑を耕す祖母の背中を妹と追いかけたり、 お風呂

創作大賞感想 半径100mさんの円の中に入ったら。

タイトルからして、半径100mさんが真面目に攻めてきたなと感じた。このタイトルにどれほど気持ちを込めたのだろうか。「やりやがったな」と笑顔になったのが最初にタイトルを見て感じた事だ。 彼女の表現方法を私が好きな理由の一つに、心情や人の気持ちである、目で見えない部分の登場人物達の心の受け渡しに惹かれることが多い。人間をどこか優しく滑稽に描くからこそ感情移入出来て、登場人物を好きになってしまう。そして、正解は正解ではなく、人それぞれが導き出す結果だとその途中の道筋を丁寧に描いて

名刺代わりの谷崎潤一郎10選

 先日、谷崎潤一郎の作品がテーマの読書会をしました。もともと敬愛する作家ですが、皆さんのお話を聞いて、ますます谷崎愛が深まった気がします。  ということで、青空文庫で読める谷崎作品のうち、特にお勧めしたい10作を年代順に選んでみることにしました。   『刺青』   実質的な第一作です。この小説を永井荷風に認められた時の話が随筆『青春物語』にありますが、そりゃ、荷風も認めますよね。ここまで完成度の高い第一作って、そうはないのでは? 足フェチをはじめとする、谷崎文学を語る上で

20年前の流行語を見たら恋をしたくなった

2004年。 それは、あなたがミクシィ(mixi)にハマっていた年。 私も大学生になってからミクシィを始めた。 中学卒業後、離れ離れになった友人と繋がれたのが嬉しくて仕方なかった・・・・・・。 「足あと」機能で一喜一憂したり、謎のコミュニティに参加したりと、実に懐かしい。 なぜ急にミクシィの話をしたのか? それは、実家でオモシロイものを見つけたから。 書名に「2005」とあるが、これは「2005年1月1日発行」とされているから。 内容は2004年のものである。 20

本に書き込む、本を捨てる

落合陽一、平野啓一郎、出口治明、齋藤孝、堀紘一…最近、そんなちゃんと世間で活躍している読書家たちの読書論を、嫉妬まみれの目線で読むということを繰り返しており、私も一瞬真人間になれるかと錯覚するのですが、すぐにいつもの暗黒面に戻っていきます。 読まない、捨てない、学ばないの三無主義。いったいじゃあどうして本を買うのかと聞かれそうですが、当然、そこに本があるからだ、と答えることでしょう。世の中には本を買わずに私が月間に買うだけの金銭を、新NISAなるものに毎月律儀に払い込んで、

どこにいるの?とあなたを探して犬が泣いた

食欲もある。 睡眠も良好。 体が少し疲れてると感じた時は、チョコラBBロイヤルをクィッと飲めば、いつの間にか疲れていた事も忘れる。 やっと、日常が取り戻ったそんな感覚。 わんのマティンロウには好きな言葉がある。 好きな言葉を聞くと、首を右に傾ける。 これからいい事があると認識するために、 「え、もう一回言って」 とでもいうかのように、その言葉を聞いた途端に全ての動きが静止する。 「外行く?」「おいもだよ」「ボールちょうだい」「じぃじ」 が代表的な好きな言葉。 「散歩

257.モロッコ旅行

ノルマンディに向かう列車のコンパートメントは8人掛けで、パリを出た時には満席でしたが、ひとり降り、ふたり降りしていくうちに、遂に窓際の男性と私の二人だけになったことがありました。1992年の冬のことでした。 なんとなくお互いに視線を交わし目礼をしたところで、その男性にどこから来たのかと尋ねられたので日本からだと答えました。すると彼は自分はモロッコからだ。でももう長いことノルマンディで暮らしていると言いました。 私がモロッコには数年前に旅行で行ったことがあると言うと、身を乗

雨が降ってるんやそうです

窓しめましてね、今。雨いいますとむかしなんかは……、のっけから「むかしなんか」いうて、そないな言い回しすることじたいがどうも違う世界にいてるような気がしますわな。せやかてそない言わな話が前へ進みませんから言うんですが、むかしで梅雨なんていうのはしとしと降って、ああ今年もこの季節がきたなあ思たもんでしてね、ご近所も静かで何や時が止まったみたいな感じがしまして、ええ、外歩くひとなんて一人もいてませんでしょ、そんでしとしというか、さーっと音がするんかせえへんのかわからんくらいの雨が

四の五の言ってみると、こういうこと。

まずは単刀直入に。 この度、kindle本を出します。 やだー 笑っちゃう。 そんなに文章書いてやしないのに。 『ほんの出来心』 ドラマのセリフみたいですが、理由を聞かれたら何て答えるのかな?と考えたら何だかそんなフレーズが浮かんでしまいます。 でもまあ『出来心』と言えば、そうなのかもしれません。 私には息子がおりまして。 私の記事をいつも読んで下さる方なら「ああ、洗濯機買わない息子さんね」「いつも何かボヤいてるたね二郎でしょ」と、ご存じと思います。 たね二郎は

真夏のビール売り娘と、レースクイーンのお姉さん

「いいバイトがあるんやけど、やらへん?」 大学3年生の夏だった。 同じ学科の鈴村くん(仮名)が、ゼミ室で私たちに声をかけてきた。 彼はバイトの鬼だ。 苦学生という印象は全くないが、とにかくバイトが好きで、学校をサボってせっせといろんなバイトをやっていた。 くるくるしたパーマ頭の彼は、いつもシャツのボタンを1番上まで留めて、ダボっとしたズボンを履いている。 セカンドバッグを小脇に抱えながらふらっとゼミ室にやってきては、いつ見ても、誰かと話しながらシステム手帳を開いて、ス

はじまりの日から遠くに来たけれど雲の隙間の星を探そう

「2024年下半期しいたけ占い」を公開しました

こんにちは。しいたけ.です。 本日、「2024年下半期しいたけ占い」を公開しました。 毎年、本格的な夏が近づいてくるこの時期に、「下半期しいたけ占い」を無事に出すことが、夏休みを迎えていくための大きなミッションとなっているところがあります。 だから本当に、今、こうして皆さんのもとに送り届けることができて、ホッと胸をなでおろしているところです。 それで、ここまで多くの人にとって、「嵐の海を泳ぎ切るぐらいに大変な数年間を過ごしてきた」と言っても過言ではなかった状態があった