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2022

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2022年8月の記事一覧

整形・31・稲盛和夫(エッセイ)

整形・31・稲盛和夫(エッセイ)

日曜日の朝、その日は珍しく家にいてワイドショーを観ていた。ワクチンの副反応から熱が下がって、でもまだ37℃あった。番組は安っぽいディベートのコーナーで、議題は[10代の整形はアリかナシか]だった。タレントのコメンテーターがそれっぽく喋っていた。私は前日は高熱で食欲が出なくて、ほんの少しの空腹をお菓子で埋めていた。

「安っぽい」という表現を使ったのは、ハナから「難しい問題ですね」という結論が用意さ

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温暖化で、私の性格は丸くなった。(エッセイ)

温暖化で、私の性格は丸くなった。(エッセイ)

遠くの国で自然災害が起きているそうだ。外国語の洪水の映像がタイムラインに流れてきた。不謹慎だが、ドリフのセットのようにコンクリートが流されていく。

ここ数年、異常気象が発生して、個人が環境問題に物申すことが増えた。SNS上の意見は、およそ以下のパターンに分けられる。

①人類は環境を守らなければならない、この
先自然災害は増加していく、間に合うのは今しかないという意見。教科書的・ポリコレ的と言え

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新しい死体(エッセイ)

新しい死体(エッセイ)

日曜、彼女と渋谷PARCOの布施琳太郎『新しい死体』を観に行った。青い床が素敵だった。展示は文字や朗読を使った作品が半分ほどで、本かネットか、まとまった形でゆっくり読みたいと思った。青い装丁の詩集のような展示だった。



作品のひとつが、グリコビジョンで映像作品が流れるということで観に行くことにした。早かったので我々は東急ハンズに入り、健康用品のコルセットやマッサージ器で遊んで時間を潰した。作

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副反応の一日(エッセイ)

副反応の一日(エッセイ)

ワクチンの副反応は結局丸1日以上続いて、今朝起きたら37.3℃くらいだった。接種が金曜日の夕方で今日が日曜日だから、30時間近く熱が出続けていたことになる。注射前の数日、胃炎で食事を抜いていて、免疫が落ちていたのかもしれない。今日もこれから予定があるので、解熱剤を飲んで出掛ける支度をしている。

病気になると部屋が散らかると熱が出る度に思う。健康状態は部屋に反映される。昨日は圧縮してあった毛布を取

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ドキュメンタルの感想(エッセイ)

ドキュメンタルの感想(エッセイ)

松本人志は、ドキュメンタルの【密室】の「構造」を、理解しきれずにいるように感じる。それが私の、最初の感想だった。



ワクチンの副作用でポカポカしながら、ドキュメンタルを一気に見た。どうなることだろうかと思いながら見たが、個人的には、実験的で面白いと思った。"笑えた"というよりかは"興味深かった"に近い。一般の視聴者の評価はどうなのだろう。反応が読めない回だった。



あの【密室】では、ほ

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テレビの話はいつも楽しい(エッセイ)

テレビの話はいつも楽しい(エッセイ)

TVerで『ガリレオ』シリーズの再放送を観ている。昨夜は第1シーズンの最終回を見終わったところだ。

『ガリレオ』とは、福山雅治演じる天才物理学者"湯川学"と、柴咲コウ扮する頑張り屋の新米刑事"内海"が、オカルト的な難事件を解明していく連続ドラマだ。とても人気の作品だったように記憶している。トリックに気づいた湯川が所構わず数式を書いていくシーンは、子供たちの間で大流行した。小学生の私も、毎週夢中に

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西荻窪と今日(エッセイ)

西荻窪と今日(エッセイ)

今日は給料日で、先月末に辞めた後輩が給与を受け取りに来た。ウチの会社は未だに給料が手渡しだ。みな時代錯誤だと愚痴っているが、私は稼いでやった感がして気に入っている。それはさておき、久しぶりに後輩君がオフィスへと出社した。彼はいま無職で、ハローワークでデザイン系の職業訓練に申し込んだということだった。どことなく疲れた感じもしたが、元気そうだった。彼なりに予定を詰め込んで、忙しくしているようだった。

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とにかく言葉をたくさん並べること

とにかく言葉をたくさん並べること

この間、ライター入門のような本を読んでいて、辟易としてしまった。ベストセラー企画で執筆を担当したというその入門の筆者は、「自分に厳しく、言葉のひとつひとつにこだわって、命を削って文章を書け」みたいなことを言っていて、バカげているなぁと思わずにいられなかった。実際その本はひどく退屈だった。



昨日タイムラインで見た、千葉雅也さんのツイートだ。「ブランジョ」を知らない私は、この言葉の正確な手応え

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いろいろとお金が掛かる(エッセイ)

いろいろとお金が掛かる(エッセイ)

昨日、職場でデートの話題になった。私の職場は現在男性3人の体制で、奢られることを当然とする女性とは付き合いたくないということで、3人の意見は一致した。その流れで、「カネの掛かる女性は、カネ持ちを自慢したい男性との間で、需給が一致してますよね」と言ったら眉をしかめられた。どうやら、難しい話はするなということだった。「需要と供給」というのは難しい話なのか。

40代の男性上司はデート代を男性が払うのが

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散髪・久しぶりに批評を書く(エッセイ)

散髪・久しぶりに批評を書く(エッセイ)

美容室に行った。
いま通っている美容室では2-3コ歳下の女性が担当している。1年程前からだ。喋って客の反応を確かめながら切っていくスタイルらしく、私が雑誌を読んでいても声をかけてくる。私もお喋りが嫌いでは無いので、これまで気になっていたこと(美容師さんの休み事情やら指名料の配分やら)を時々質問したりしていた。

昨日は、「ツーブロックをやめて少し短く、けど次回またパーマを当てたいから短すぎない感じ

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『Kintsugi』評 後編(「夕方ミラージュ」と「KEKKON」、サバイバルのための結婚)

『Kintsugi』評 後編(「夕方ミラージュ」と「KEKKON」、サバイバルのための結婚)

#1 「夕方ミラージュ」で描かれるのは、家庭という空間に囲われて腐っていく主人公の姿だ。結婚して家庭を築いたのに埋められない孤独と絶望。

夕方、夫と子供が帰宅するまでの僅かな時間。主人公は家庭からの逃亡としての不倫へと傾きかけている。裏切りでもいいから自由になりたい、と、欲求不満が爆発しかけている。

面白いのは、「日本」という言葉が登場することだ。主人公は家庭内に閉じ籠められていることを<白い日

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大森靖子『Kintsugi』評 #1

大森靖子『Kintsugi』評 #1

大森靖子の『Kintsugi』は、「夕方ミラージュ」="You gotta marriage"で始まって、『KEKKON』で終わる。つまり、結婚で始って結婚で終わる。ではその過程に何があるのか?

妄想で補いながら、#2〜#9 の物語を簡単に追ってみる。
別の誰かを妄想しながらSEXする→真夜中に家から逃げ出し不倫相手に会いに行く→自分の加害性を自覚しながら離婚する→社会の倫理に逆行する自分を「カ

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"結婚"に擬える(エッセイ)

"結婚"に擬える(エッセイ)

Twitterの相互フォローの中に、「たぶん不倫してるのだろうなぁ」というアカウントがいくつかある。それらはみな女性で(男性は私生活を投稿しないだけかもしれない)、なかにはヒモ風の男とのツーショットを載せている人もいる。一般に女性の不倫は男性と本気度が違うと言われるけれど、実際のケースを目の当たりにすると、思わずたじろいでしまう。

ちなみに私は不倫をまったく批判する気が無い。私は不倫に超寛容派で

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どんな知のあり方が可能なのか(エッセイ)

どんな知のあり方が可能なのか(エッセイ)

千葉雅也さんと浅田彰さんの対談に、「どんな知のあり方が可能なのか」という言葉があった。

「どんな知のあり方が可能なのか」。不思議な引っかかりがあって、心の中で10回唱えてみる。6回目あたりでだるくなってきて、何と言い換えられるのか考えてみた。「この時代には、どのような知のあり方が有効なのか?」「今の時代では、どんな性格のヒトが”賢い人物”なのか?」「この見通しの立たない現状において、知恵とは何か

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