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ドキュメンタルの感想(エッセイ)

松本人志は、ドキュメンタルの【密室】の「構造」を、理解しきれずにいるように感じる。それが私の、最初の感想だった。



ワクチンの副作用でポカポカしながら、ドキュメンタルを一気に見た。どうなることだろうかと思いながら見たが、個人的には、実験的で面白いと思った。"笑えた"というよりかは"興味深かった"に近い。一般の視聴者の評価はどうなのだろう。反応が読めない回だった。



あの【密室】では、ほぼ初対面の大人が閉じ込められ、「自分は笑わないで相手を笑わせろ」という矛盾した指示与えられる。プレイヤー同士は互いに様子を伺いながら、即興的に権力関係が成立していく。社会的人気・先輩後輩・笑いへの理解度・・・。複数の上下関係が交錯しながら、戦況が刻一刻と変化していく。そしてその隙間から、フッと笑いが生まれる。

なぜ、あの【密室】では「面白さの磁場」が狂うのだろうか?つまらない言動が面白く、面白い言動がつまらなくなる。些細な言動が、可笑しくて仕方なくなる。あの部屋で生まれる笑いは一体何なのか?あの笑いの触感は何なのだろうか?

それを測るために、松本は腕のある芸人たちが排除し、笑いの「素人」としてタレントが配置した。面白さの、どこまでがプレイヤーの力で、どこからが【密室】の作用なのか。松本はあの【密室】の「仕組み」を、本気で解明しようとしている。



実験は、繰り返しデータを取っていくことになるのだろう。ショーとして観れば、クオリティの下がった箇所も散見される。微調整が必要な部分もあるだろう。けれどやっぱり、私は「面白かった」と思った。

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