yama

くじらと雨、ネオンが好き。日々の記憶の備忘録。

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くじらと雨、ネオンが好き。日々の記憶の備忘録。

最近の記事

授業中の回想。春の中、風が運ぶ五感。

もう20代前半も終わろうとしているというのに、 あの時の風の温度と感触を今だに覚えている。 中学の頃、英語の授業を受けていた。 窓際の席だったが何列目だったかは覚えていない。 外にグラウンドが見える。 時間なんて存在していなかったように思う。 ゆっくりと、ただ授業が進行している。 ここわかる人いますかー? 先生が教壇に立ち、教科書を読み上げている。 窓際で、窓を開けて穏やかな大気を飲む。 暖かく、涼しく、柔らかい風だった。 何にも形容詞しがたい、優しい香りがした。

    • 淡い思い出という酒。頭と心が反射して、時間だけが前に進み続けて。

      会社の同期と飲み歩いて、 いつもの行きつけのスナックに1人辿り着いた。 「こっちにいるから、みんなで楽しんでてなー。」 LINEを送信する。 スナックなんて学生の頃は、 自分が行くことを1%も想定していなかったけど、 気付いたら定期的に来るようになってしまった。 次々と自分の中から、湧き出てくる言葉を、 気持ちを、考えを聞いてほしい。 そんな時に来てしまう。 僕にとってここは、否定もされず、うんうんと優しく、 しかし間違いは間違いだと教えてくれる場所だ。 未練なの

      • 正解と間違いの狭間で。LINEの送信ボタン、夜空に問う。

        「このLINEを送ったら全部終わってしまうんだ。」 送信ボタンを押すのに1時間かかった。 とにかく苦しかった。 一緒にいて楽しい時間が沢山あって、 これからも沢山あるんだろうなと想像すると、 本当に胸がギューと圧縮して無くなってしまいそうだった。 でも、その一方で一緒にいて、辛いなと思う時もあった。 僕たちは、一度の揉め事が大きくて、 何かをきっかけとして起こってしまったとき、 収拾が着くまでに毎回精神が擦り切れてしまいそうだった。 「これからも、繰り返しになってし

        • あの頃、薄れゆく記憶、確かに残るもの。

          ふと、彼女との1年記念で作成したビデオを見返していた。 付き合う前に行った水族館や、大学卒業前に行った北海道旅行。 ディズニーランド・シーや、江ノ島旅行。 改めて見返していると、たった1年なのに、 とても濃密な時間で、色々な場所に出掛けていたんだなと、 少しずつ収納されていた記憶が取り出されていく。 鮮明に覚えている瞬間もあれば、 少しずつ薄れていっている出来事があることにも気付く。 あの、水族館に行った時に、 2人は何を話して、何を感じていたんだろう。 水族館のな

        • 授業中の回想。春の中、風が運ぶ五感。

        • 淡い思い出という酒。頭と心が反射して、時間だけが前に進み続けて。

        • 正解と間違いの狭間で。LINEの送信ボタン、夜空に問う。

        • あの頃、薄れゆく記憶、確かに残るもの。

          10℃、流星、変わらないもの。

          白い息って10℃以下になると見えるみたいだよ。 え、ほんと? 調べてみて笑 んー、8℃とか13℃とか出てきたよ。 間をとって10℃でいいじゃん。笑 2月の終わり。彼女がつけ麺を食べたいというので、 寒いなか外で行列に並び、白息を浮かべながら、そんな会話をしていた。 解散した次の日、過去一番の喧嘩をした。 もうお互い大嫌いになるくらいの。 価値観どうこうではなく方向性が違う。 人生の根本的な思想が違うのが垣間見えてしまったのである。 LINEではいつも通りのメッ

          10℃、流星、変わらないもの。

          2月、軽井沢スキー場での記憶。祈りの交錯と花瓶。

          一度割れた花瓶は、本当に元には戻らないのか。 接着剤で接合すれば同じ形には戻るかもしれないが、 そこにはヒビが入っているし、 もう一度、同じ工法で花瓶を生成しても、 果たしてそれは同じ花瓶と言えるのかわからない。 やはり一度割れてしまえば、 もう元には戻らないのだろうか。 「時間的に一回しか滑れないね。どのコースにしよっか。。」 2泊3日で彼女と軽井沢旅行に行った時の記憶である。 これまで噛み合っていたはずの歯車が、 何かを起因に、少しずつ軋み始め、湾曲し、お互い

          2月、軽井沢スキー場での記憶。祈りの交錯と花瓶。

          居酒屋での朧げで忘れられないアルコールと”二度目”。

          大切なものはいつも失ってから気付く。 という言葉はもう、 スクランブル交差点に透過する広告塔くらい、 擦り切れるほど聞いてきた。 それでも、僕たちはいざその瞬間になると、 「あー。あれは永遠ではなかったんだな。」と、 ぼやけていたピントが、急に合うかのように、 その「永遠ではなかった一瞬」に直面する。 たしかあれは、大学1年の冬頃だったと思う。 当時所属していたサークルで仲良くしてくれてた、 2個上の男の先輩にサークル帰り、チェーンの居酒屋に連行された。 「ふぁー

          居酒屋での朧げで忘れられないアルコールと”二度目”。

          「全て忘れてしまうこと」は僕たちにとって最大の救いなのかもしれないという説。

          人の最大の能力は「忘却すること」なのかもしれない。 と最近になってふと思う。 僕たちは、歳を重ねるたびに、 得るものが増えていき、それと同時に失うものも増えていく。 得るものが増えていくたびに、 僕たちは何かを失い続けているのだ。 つまり、一部分だけに照明を当てたときに、 僕たちは、歳を重ねるたびに「喪失」が増え続ける。 と言い換えることもできる。 獲得と喪失は常に天秤で均衡を保っている。 今、大活躍している著名人やスポーツ選手、 その他名誉や富を手にしている彼らも

          「全て忘れてしまうこと」は僕たちにとって最大の救いなのかもしれないという説。

          観覧車のネオンで朧げに浮かんだ恋人の横顔と、永遠を超える一瞬について。

          その日、恋人と東京を散策していて、 日中に初詣に行った後、自転車で街を駆け巡った。 まだ寒くて、前から凍えるような風が 顔面に吹き付けていたのを記憶している。 10分、いや15分くらいだろうか。 しばらく自転車を走らせていると、 紫色を放った円形の巨大構造物が目の前に現れた。 「着いたね。てか自転車乗れるんだね笑」 「乗れるし笑 なめないで?」 冗談を言うと、歩きながら何度か 腕をペチペチと叩かれた。 遠くから目に入った、あの巨大な円形構造物は、 近づけば近づく

          観覧車のネオンで朧げに浮かんだ恋人の横顔と、永遠を超える一瞬について。

          出会いは喪失なのか、あるいは加算なのか。

          赤坂の割烹料理を食べに行った後、 気分転換でなんとなく港区を散歩していると、 突如として赤い塔が現れたことがあった。 そこには一度しか訪れたことがなかったものの、 ふとその時の懐かしい感覚が蘇ってきて、 気付けばそこへ向かって歩みを進めていた。 当時はそこまで関心がなかったのか、 それとも違う何かに夢中で見えていなかったのか。 東京タワーの鉄骨がこんなにも地面から近くに、 聳え立っていることに驚いた。 ここに訪れたのは小学生以来だ。 あれから時間が経って、近くに住ん

          出会いは喪失なのか、あるいは加算なのか。

          遠く青い夏の記憶。なにもなかったが全てがそこにあった夏。

          自動販売機で買ったポカリスエットを、 無造作に自転車のかごに突っ込んで、 友達との待ち合わせ場所へ向かう。 学校帰りにいつも通っている駄菓子屋に寄り、 数十円のお菓子を大人買いし、握りしめて店を出る。 友達は、ガラスの棚に並べられていた、 ラムネの瓶を手に取り、店の外に出てすぐ飲み始めた。 首にかけたタオルで汗を拭いながら、 一気にそれを飲み干した。 瓶に生じた結露がきらきらと光っていて、 その瓶越しにもまた太陽が輝いていた。 あの頃は本当に何もなかった。 何も持っ

          遠く青い夏の記憶。なにもなかったが全てがそこにあった夏。

          歳をとるということ。大人になるということ。

          高い場所から見える夜景が好きだった。 あるいは深夜の高速道路、郊外から見る幾つかのビル群が。 綺麗で、優美で、その瞬間だけは、そこだけが世界の全てて、 そこに何もかもが集まっているような気がして。 歳をとると、その灯りは、 夜遅くまで目をこすりながら働く大人たちの、 オフィスから放たれた灯りであることを知った。 その灯りの1つである住宅の中には、 光と影の両面を持つ一世帯が暮らしていることを知った。 光ある場所には必ず影が生まれる。 光が大きくなればなるほど、影も大き

          歳をとるということ。大人になるということ。

          見つけられないままの何かと、終わらない物語。冬、AM0:40のタクシーと夜行。

          あの頃、僕はずっと「生きる意味」を探してた。 きっと誰もが一度は考えることだと思う。 当時のことを振り返ってみると、 とても不安だったのだと思う。 起業して2年で1000万円ほど稼いだり、 友人と楽しく遊びに出かけたり、 美味しいご飯を食べれたり、 満たされているはずなのに、 先の見えない霧がかった道にずっと怯えていた。 白黒はっきりしない、輪郭のない、 そのぼんやりとした何かが怖かったのだと思う。 「本当に欲しかったものってなんだろうって。生きる意味ってなんなんで

          見つけられないままの何かと、終わらない物語。冬、AM0:40のタクシーと夜行。

          すれ違いと出会いは紙一重なのかもしれない。某日、渋谷スクランブルスクエア交差点で刹那的な人流に飲まれて。

          某日、僕は渋谷駅にいた。 古くからの友人と渋谷近くの高級ホテルラウンジで、 一杯1500円のカモミールティーを飲みに、 ハチ公前で待ち合わせをしていた。 大学4年生で、確かまだ、暑さが訪れる前の、 寒さと暖かさが同時に溶け込んだ、 春でも夏でもない時期だったと思う。 なぜ大学生がホテルラウンジに行って、 一杯1500円のお茶を飲みに行くのかというのは、 本題から少しずれてしまうので、ここでは一旦割愛したい。 渋谷はそこらじゅうの孤独を 集中的に一ヶ所にかき集めて出来た

          すれ違いと出会いは紙一重なのかもしれない。某日、渋谷スクランブルスクエア交差点で刹那的な人流に飲まれて。

          たった1つの言葉に救われたあのとき、あの瞬間の記憶。文学と車窓。

          そのとき、僕はバスの窓側に座っていた。 部活の遠征で東京から静岡まで憂鬱な気持ちと共に揺られて。 今はもうAirpodsを使っているから、 当時が懐かしく感じてしまうけれど、 有線のイヤホンを両耳に突っ込み、 スピッツの”みなと”を聴いていたのを鮮明に覚えている。 まるで現実から目を逸らすかのように、 広大な海を想像させるイントロに浸っていた。 ちょうど反対側の席の窓から、 真っ青な海が広がっていて、魚の鱗のように光を反射させて、 こちら側の席の窓からは、 何段にも

          たった1つの言葉に救われたあのとき、あの瞬間の記憶。文学と車窓。

          新宿のとある焚き火Bar、銭湯での回想と、欲について。

          僕たちはいつも何か、目の前の出来事に頭を悩ませ、 まだ起こっていない未来に対して不安を抱く。 お金がなければ、どうやってお金を稼ごうかとか、 今の仕事のままで今後やっていけるのかとか、 もっと勉強しておけば良かったとか、 彼女がいなければ、 自分に自信がなくなってしまったりとか、 好きな人ができて、彼女にしたいと思っても、 デートに誘ったら断られるんじゃないか、 告白して振られてしまったらどうしようとか、 彼女ができても今度は、 もっと会いたいという欲が生まれて、

          新宿のとある焚き火Bar、銭湯での回想と、欲について。