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読書感想文

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読んだ本の感想アウトプット。
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「道化の華」太宰治 〜めくるめく太宰ワールド〜|読書感想文 #10

「道化の華」太宰治 〜めくるめく太宰ワールド〜|読書感想文 #10

人間失格と同じく大庭葉蔵が主人公の作品。女性と入水して葉蔵だけが生き残り、その後の入院生活が描かれる。

実体験がベースにはなっているんだろうけど、どこまでが本当のことでどこからが創作なのかがわからない。(私の好きな「富嶽百景」も、最後写真を撮ってあげる場面はリアル太宰とは違うらしい)

時折挟まれる作者の考え(つぶやき?)も、色々なことを言っているけど、どこまでリアルで考えていることなのか、この

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「葉」太宰治 〜どうにか、なる。〜|読書感想文 #9

「葉」太宰治 〜どうにか、なる。〜|読書感想文 #9

ついに、ずーっと温めていた『晩年』を読み始めた。
なぜ温めていたかというと、「『晩年』に就いて」で太宰がこんなことを言っていたから。

美しさ、発見してみたい。
発見できそうな余裕があるときに、ゆったり読もうと思って、温めていたのです。

けど、ふと思いました。
何かで辛いとき、落ち込みがちなときにこそ、太宰から力をもらってきたじゃないかと。

よし、今読もう。
(ちょうど、小栗虫太郎の法水短編集

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「黒死館殺人事件」小栗虫太郎 〜何を言ってるか分からないけど不思議と面白い〜|読書感想文 #8

「黒死館殺人事件」小栗虫太郎 〜何を言ってるか分からないけど不思議と面白い〜|読書感想文 #8

黒死館殺人事件、読み終わりました!
読み始めるときは、どうなることか…と不安でしたが、読み終えてみたら、ワクワク・ドキドキ 面白かったです!

↓読み始めたときの記事

とにかく面白かった。

久しぶりの探偵小説。事件現場の間取図とか、殺害の予告の図とかが出てきてワクワクした。

事件が起こるたびに、探偵役の法水が突拍子もない推理をしてくれるのだけど、それがいつも当たってしまうのが面白い。
途中で

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「動物園」芥川龍之介 〜覚えてゐろよ。綿細工め。|読書感想文 #7

「動物園」芥川龍之介 〜覚えてゐろよ。綿細工め。|読書感想文 #7

私の好きな作品の一つ、芥川龍之介の「動物園」。
動物園にいる動物たちについて、あれこれ言っている。
独特な表現がたくさんあって、読んでいて楽しいしほっこりする。
私の好きなものをいくつか紹介します。

家鴨(あひる)もしかしてこれって…
♪数字の2は なぁに?お池のがちょう
の2ですか?
(この歌、わかりますか?)
うーん、かわいい表現。

カンガルウポケットの中からピラピラピラーって
国旗がつな

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「女の決闘」太宰治 〜心のなかにある事実/真実とは?〜|読書感想文 #6

「女の決闘」太宰治 〜心のなかにある事実/真実とは?〜|読書感想文 #6

最近、マインドフルネスを学んでいます。
心に浮かぶさまざまなことを、判断せず、ただ気づいていく。
いかに私は日々自分の言動に、思いに、「Judge」を下しているかが少しずつわかってくるようになりました。

判断すると、苦しい。
常に自分のなかで「あれはいい」「これはだめ」が繰り返され、あたまでっかちになって、動けなくなる。
休日に、何をしたらいいのかわからなくなって、部屋の床でうつ伏せになって、意

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「津軽」太宰治 〜親孝行ってなんぞや〜|読書感想文 #5

「津軽」太宰治 〜親孝行ってなんぞや〜|読書感想文 #5

太宰治の「津軽」の感想を5分で書く、という暴挙に出ている。
なぜこれをしているかというと、一度書いた下書きが気に入らなくて、なんかうまく書けなくてモヤモヤしていたときに、末吉さんの『発信する勇気』を読み直していたら、「5分で書く」というコツが目に留まったからだ。
そんなことを書いているうちに1分経ってしまったので、早く本題に移ろう。

「津軽」は太宰作品の中でも私が特に好きな作品だ(読んだ作品はま

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「寒山拾得」芥川龍之介 〜飯田橋で寒山拾得に遇った話〜|読書感想文 #4

「寒山拾得」芥川龍之介 〜飯田橋で寒山拾得に遇った話〜|読書感想文 #4

体調があんまり回復しません。
noteもなかなか書く気力が起きなくて…悲しいです。

そんななかではありますが、本は変わらずに読んでいます。
最近は、芥川龍之介の『杜子春』(角川文庫)を持ち歩いて、通勤時間に読んでいます。

そのなかに、私の好きな話が載っていました。

寒山拾得(かんざんじつとく)なぜ好きかと言うと、言語化するのが難しいけれど、やはり芥川の人となりを感じられるからだと思う。
あと

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「『晩年』に就いて」太宰治 〜太宰治の文章って素敵だよなぁ...〜|読書感想文 #3

「『晩年』に就いて」太宰治 〜太宰治の文章って素敵だよなぁ...〜|読書感想文 #3

もう、タイトルそのままのことを感じた。
出尽くした感想かもしれないけど、太宰治の、読者に語りかける書き方が、私はとても好きみたい。
壮大なことでなくとも、ただ、自分の書いた小説について書いたことも、なぜか魅力的に感じる。

「『晩年』に就いて」も、太宰が出した最初の小説集について、文庫本でいうと2ページだけさらっと書かれたものだ。

これだけ読んでも、ああ、やっぱり太宰っていいなと思う。

いや、

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「大川の水」芥川龍之介 〜龍之介さん、涙していて可愛い〜|読書感想文 #2

「大川の水」芥川龍之介 〜龍之介さん、涙していて可愛い〜|読書感想文 #2

芥川龍之介の随筆が好きだ。
正直、小説は、堅苦しい感じがして難しかった。
角川文庫の『羅生門・鼻・芋粥』に収録されている「尾形了斎覚え書」は、漢字が多くて読みづらそうだったから、飛ばした。

そんななかで、「大川の水」に出会った。
川の水の描写が目に浮かぶようだったし、何よりも、「大川」を、そして「東京」を愛する芥川の心が素敵で感動した。

「大川」そして「東京」への「好き」が伝わってくる。
心が

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「懶惰の歌留多」太宰治 〜三十一歳は三十一歳だけのことしかない〜|読書感想文 #1

「懶惰の歌留多」太宰治 〜三十一歳は三十一歳だけのことしかない〜|読書感想文 #1

突然ですが、読書感想文を書いてみます。
最近読んだ、太宰治の「懶惰の歌留多」(らんだのかるた)から。

作家である「私」が、「怠惰」であることの言い訳をつらつらと述べるところから始まる「懶惰の歌留多」。
なかなか書き物が書けなくて、やけくそになって、いろはかるたの形式で少しずつ書き始めていく。

「に 憎まれて憎まれて強くなる。」の句の説明?にこんなことが書かれています。

私も今年三十一歳になる

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