とけすい

つらつらと、

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つらつらと、

最近の記事

日記13日目

クリスマス当日は特に何の予定もなく、11時頃にのそのそと起きはじめ、はだけた毛布を足だけで整えては崩してを繰り返しながらニ度寝、三度寝をかさねた。 ようやく頭がはっきりとし始めた頃には14時を過ぎており、丈の足りないカーテンと窓枠の隙間には、ぼんやりとした暖かそうな陽光が広がっていた。 特に起き上がる理由もないので、とりあえず開いたYouTubeの動画を、スキップをしては途中で消し、また再生して、スキップをして、途中で消し、再生、スキップ、消す、を寝返りを交えながら繰り返した

    • 日記12日目

      最近、僕は薄汚れたフィルターを挟んだせまい箱の中に生きているような気がする。 誰かから向けられた「ありがとう」や「ごめんなさい」がそのフィルターを通して僕を刺す鋭利な、毒の塗られた針になって心に届く。苦しくなる。そんな言葉、僕にかけないでくれ。 誰かに向けた「ありがとう」や「ごめんなさい」がそのフィルターを通してドロドロした、とても卑しい汚染物質になって相手の嫌悪感を駆り立てる。そんな言葉、言えるような人間じゃない。そんな気がする。 何を言われても傷がつく。何を言っても傷をつ

      • 日記11日目

        目が覚めると窓の外はすっかり明るくなっていて、スマートフォンの画面には、クレヨンで描かれた女の子の壁紙の上に、11:40の白い文字がぼんやりと映っていた。 アルバイトを辞めてからもうすぐ一月がたつ。エアコンのすんとする臭いに溢れた部屋には、たばこの空箱や脱ぎ捨てられた黒いスキニーパンツ、空のペットボトルにくしゃくしゃになったビニール袋が散乱していて、一日の始まりに見る光景としては、とてもふさわしいものとはいえなかった。 しばらくベッドの上でじっとしていると、アルバイトを辞めた

        • 日記10日目

          午前0時。たった2時間だけのアルバイトを終えて、ビルの鍵をしめる。真向かいの通りは、深夜にもかかわらず車が行き交っている。通り沿いに立ち並んだ照葉木の周辺を、コウモリの番がやかましく騒ぎたてながら迂回している。先月、コウモリから照葉木の実の空爆を御見舞させられてからというもの、夜中にこの通りを歩くときは常に頭上を警戒しながら、おずおずと早足になる。常に意識をやつらに向けながらなんとか警戒ゾーンを抜けだすと、安心して少しだけ足を緩める。通りの向こう側では、コンビニが白い光を煌々

        日記13日目

          日記9日目

          冷たい風が時折ごうっと吹きつけて、僕の身体から熱をさらっていく。先月まで外灯に集っていた虫達はいつの間にかいなくなっていて、あれほど暑苦しかった明かりが今は寒々しく目にささる。色の褪せはじめた木の葉にこれからの季節を想像してみたりする。 待ちゆく人たちの服の袖は徐々にのびだして、それに反比例するように恋人達の距離が縮まっていく。淀みのない夕空に覆われた街は季節の変わり目を喜んでいるようにみえる。上着をなくした樹木の根本には、赤褐色の落ち葉達がまるで毛布のようにかぶさっている

          日記9日目

          日記8日目

          風がとても涼しくて、少し太った月がとても綺麗に見えたので日本酒がのみたいとおもった。 紙パックの安い酒とおちょこを鞄につっ込んで、近所にある少し広い公園に向かった。 公園では外灯が消えているというのに、高校生くらいの子達がなにやら楽しそうに話していた。こんな時間から、こんな暗闇の公園で何をしているんだとおもったけれど、はたから見れば僕のほうが「何をしているんだ」だ。ひと呼吸おいて、乾いた鼻笑いを放り出すようについてみると、可笑しいのやら寂しいのやら、よく分からなくなる。 鞄か

          日記8日目

          自己嫌悪、それからクズとプライド。僕。

          あの友人は病気をもった身体で洋服をつくった。あの知り合いは高校を卒業した後単身で福岡にとんで曲をつくった。あいつは東京で立派に働いている。あの人はモデルをしながら家庭を築いた。あの子もあんな奴も、皆戦っている。自分と。社会と。 僕はどうだろう。小学生の頃に始めたサッカーも、高校生の頃に始めたドラムも、専門学校で目指した税理士も、全部中途半端のまま、気付いたら月4万円にも満たないアルバイトでお酒を飲む毎日を続けている。snsでは、仕事の辛さや生きることへの思想、素敵な詩や自作

          自己嫌悪、それからクズとプライド。僕。

          きみの友だちを読んで

          僕にはたった1人、こいつは「一生の友だち」だ。と思っている人がいる。 そいつとの出会いは中学1年生の頃だった。 きっかけはたぶん、同じ部活に入っていたから。同じクラスだったから。それだけしか思い出せない。本当にただそれだけの理由だったのだろうと思う。 だから、かちっとした「きっかけ」なんてものは恐らくなくて、どちらからともなく話しかけて、気づいたら仲良くなっていった。 二人で放課後にふざけあって、遅れて出る部活はちょっぴり怖かったけど、そいつといれば平気だった。 部活の厳しさ

          きみの友だちを読んで

          日記7日目

          重く濁った色をした雲が空をどこまでも埋め尽くしていて、霧のような細かい雨が遠くの森を白く隠していた。湿ったぬるい空気が部屋のそこら中にねばりついて、なんだか空の水槽に閉じ込められたような感覚だった。梅雨入りしたの、いつだっけ。今月の頭くらいだったか。スマートフォンの液晶には13:42の文字が表示されている。アルバイトまであと3時間18分ある。とりあえずご飯くらいは食べておこう。とは言っても、あまりお腹は空いていないのだけれど。 部屋の扉を開けるとすぐに、醤油とお出汁の甘くて香

          日記7日目

          6日目

          夜道を歩く。どこに向かうでもなく、ひたすら歩く。大きめの草履がペタペタと音を立てる。遠くで賑やかな声がする。明かりはなく、街路樹の青い香りが風に拐われていく。煙草を取り出そうとすると、手の甲がポケットに引っかかって、おもわず舌打ちを鳴らしてしまった。この頃、些細なことですぐにいらいらしてしまう。なんてちっぽけな男だと情けなくなる。立ちすくみそうになる足の筋肉にムチを打つように、ひたすら歩いた。 2つ目の街灯を右に折れると、下り坂にぶつかる。灯に吸い寄せられた虫たちがばちばちと

          5日目

          今日も日中は何もすることがなく、夜になって公園にいった。 夜中の公園は街灯が消えて真っ暗だ。階段を踏み外さないように、ゆっくり降りていく。いつものベンチには若いカップルが並んで座っていた。もちろんあたりは真っ暗なので顔は見えないが、声で分かった。顔を見なくても声ひとつでおおよその年齢は分かる。少し甲高い二十代。落ち着きのある三十代。すこしざらざらした四十代。歳相応の周波数というものがあるのだろうか。声って不思議だ。 結局そのベンチは諦めて、グラウンド側のベンチに腰を下ろす。買

          4日目

          23時28分。公園にきている。今日は朝から嫌な連絡が入った。流行病のせいで、ゴールデンウィークまでバイトの出勤がなくなってしまったのだ。ただでさえ気怠い朝にこんな連絡。今月はなんとかしのげるが、来月はどうやって生きていけばいいのだ。携帯料金すら払えるかもわからない。あぁ、と感嘆の溜息を漏らしながら、よだれの臭いがする毛布にムスッと顔を埋める。なかなか毛布に収まってくれない右足に少しだけいらいらした。もうこのまま動きたくないと思った。動く理由すら、なかった。ちゅんちゅんと楽しげ

          3日目

          今日は夜中からスーパーにでかけた。プライベートブランドの安い缶チューハイを求めて。 家を出た瞬間に一発喰らわされた。ものすごい風だ。スマートフォンで天気情報をチェックする。風速11m/s。台風の前夜かと思った。それでも月は柔らかくむこうにあって、星がちらちら輝いていた。不思議な夜だと思った。 煙草をふかしながら真っ暗な畑道を歩いた。いつもはキャンキャンと吠えてくる通りの家の犬も、流石に今夜は室内でじっとしているらしい。できれば毎日そうしてほしい。 その通りを抜けて右に折れると

          1日目

          今日から日記をつけようと思う。 誰かにみせるためではなくて、自分のために。文章を書く練習として。 今日は本屋さんに行った。家を出たのは19時頃で、外は雨がしとしと降っていた。本を買うだけなのでおしゃれに気を使うこともないと思い、パーカーにジーンズという、部屋着にもとれるような恰好で出かけた。小雨のわりに風が強くて、差していた折りたたみ傘は行きの道中でバッグにしまった。風に研がれた雨がピシピシと刺すように吹きつけて、メガネに雨粒がかからないように少し俯いて歩いた。通りはどんより

          優しい嗜好品

          急に何もかもが嫌になる時がある。 そういう時は小型犬の鳴き声がとても怖く感じるし、少し強めの風に悪意を感じるし、集団で居酒屋に向かう若者のグループなんかにかんしては、もうみんな死んじゃえと意識だけで睨んでしまう程最悪だった。僕はただ一人で煙草を吸いながら缶チューハイをじゅるじゅる啜って、誰にも迷惑をかけずに絶望やら焦燥やらを背負っていたいだけなのに、誰の邪魔にもならないように時間の波に漂っていたいだけなのに、こんなにも優しい僕がなぜ、こんなにも迷惑で卑しい動物やら自然やらに蹂

          優しい嗜好品