1日目

今日から日記をつけようと思う。
誰かにみせるためではなくて、自分のために。文章を書く練習として。
今日は本屋さんに行った。家を出たのは19時頃で、外は雨がしとしと降っていた。本を買うだけなのでおしゃれに気を使うこともないと思い、パーカーにジーンズという、部屋着にもとれるような恰好で出かけた。小雨のわりに風が強くて、差していた折りたたみ傘は行きの道中でバッグにしまった。風に研がれた雨がピシピシと刺すように吹きつけて、メガネに雨粒がかからないように少し俯いて歩いた。通りはどんよりした灰色にまみれていて、それが気分を落ち込ませた。本屋さんに着いた時には、パーカーから少し嫌な臭いがしていて、ジーンズの重さがじめじめと気持ち悪かった。
本屋さんに着いてすぐに携帯のメモ機能を開いた。僕は読みたいと思った本はすぐにメモに取るので、そこに打ち込まれた作家さんと作品のタイトルを見ながら、出版社ごとに慎重にまわっていった。けれどここの本屋さんはあまり品揃えが良くないので、その作業もほんの十分程度で強制的に諦めることになり、後はメモも見ずに好きな作家さんの名前を探し求めては、同じ所を何度も通り過ぎた。宝探しみたいで楽しかった。三十分ほどうろうろした結果、新書本二冊と文庫本二冊を買った。むらさきのスカートの女は前々から気になっていた本だし、めんどくさがりなきみのための文章教室は教科書のつもりで買った。ティファニーで朝食をは映画にもなっているとても有名な作品だし、中原中也詩集はどこかノスタルジックな不思議な詩たちに惹かれてかった。
レジを通った後は、本物のお宝を手に入れた気分になって、子どものようにわくわくした。もう着てる服の臭いや重さも全く気にならなかった。とにかく早く家に帰りたかった。
外は行きの道中よりも雨が強くなっていたが、傘を差さなくても問題ない程度だったので、少し濡れて帰った。
灰色の風景も、雨を含んだアスファルトの匂いも、この湿度も、悪くはないなと思った。

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