3日目
今日は夜中からスーパーにでかけた。プライベートブランドの安い缶チューハイを求めて。
家を出た瞬間に一発喰らわされた。ものすごい風だ。スマートフォンで天気情報をチェックする。風速11m/s。台風の前夜かと思った。それでも月は柔らかくむこうにあって、星がちらちら輝いていた。不思議な夜だと思った。
煙草をふかしながら真っ暗な畑道を歩いた。いつもはキャンキャンと吠えてくる通りの家の犬も、流石に今夜は室内でじっとしているらしい。できれば毎日そうしてほしい。
その通りを抜けて右に折れると、左手にアパートが見える。一階がデイサービスセンターになっていて、クリーム色の外壁に親近感を抱く。ベランダに干された洗濯物ががしゃがしゃと大暴れしている。釣りたての魚みたいで、今にも飛んでいきそうだ。そのうちの一つがついに飛ばされてしまって、真っ暗な夜の空を一反もめんのようにふわふわと漂って、この市内を抜けて、海を越えて、国から離れて、アジアのどこかの国のスラム街なんかに落っこちて、少し汚い手の持ち主の元で、ボロ雑巾としての第二の人生をおくったりなんかしてー
そんな妄想をしながら歩いていたら、いつの間にかスーパーはすぐそこだった。よくある事だけれど、いつもその、あっという間さに驚いてしまう。本当に家からここまで自分の足で歩いてきたのだろうか。どこかでワープしていたりしないだろうか。不思議な夜の仕業だろうか。まぁそんなことはどうでもいいか。缶チューハイまであと少し。