マガジンのカバー画像

土竜のひとりごと

320
エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
運営しているクリエイター

記事一覧

第304話:バトンを渡す

第304話:バトンを渡す

埼玉での道路陥没事故の痛ましいニュースが毎日報じられている。
高度経済成長期に作られたインフラが一斉に耐用年数の上限を迎えつつある。道路といい、橋といい、トンネルといい、老朽化は徐々に忍び寄って僕らの日常を侵食しつつあるかのようだ。比喩的に言えば、ある日突然出現した大きな穴の闇に吸い込まれてしまう、そういう僕らの存在の危うさを象徴する事故だったと言えるかもしれない。

ただもっと痛ましく感じられて

もっとみる
第303話:ジャガイモのコロッケ

第303話:ジャガイモのコロッケ

単なる私信ではありますが、昨年12月頃から再就職先を探していて、今日、ある公立の図書館の内定をいただくことができました。

今年度は4月より時短勤務(週19時間勤務)に切り替えのんびり過ごそうと思ったのですが、前任校の部活の卒業生の妹がテニス部の部長をしていて、その生徒に頼まれ、よせばいいのに7月から部活に出るようになりました。

12時に勤務が終わっても放課後まで待って19時に帰るみたいな生活。

もっとみる
第302話:敵をつくる言葉

第302話:敵をつくる言葉

テレビを観ていたら農家のお嫁さんとお姑さんがすごく仲良く畑仕事や家事をしている姿が映し出されていて、アナウンサーが「仲の良い秘訣は何ですか」と質問すると、お姑さんが「共通の敵がいることかね」と答えてお嫁さんと顔を見合わせて二人で笑っていた。
それはお姑さんにとっては息子、お嫁さんにとっては伴侶であるところの「男」であるらしかったが、当然、彼がどんなふうに敵であるのかまでは触れられなかったが、「共通

もっとみる
第300話:AIの恋愛診断

第300話:AIの恋愛診断

学校というのは長期休みが明けると必ずそうしなければならないようにテストがある。休みを遊ばせないために。
というわけで、冬休みが明けてテストがあった。となると、それを採点しなければならない。

今年度から赴任した学校では「百問繚乱」という採点システムが採用されていて、当初それを拒んだのだが、どうしてもそれを使わなければ同僚との足並みが揃えられないプレッシャーから、節を屈して使い始めた。

確かに便利

もっとみる
第297話:教員採用辞退204人

第297話:教員採用辞退204人

先日、高知県教育委員会が今年行った小学校教員の採用試験で、合格者280人のうち7割を超える204人が辞退したというニュースがあった。

教員稼業はブラックなイメージが強くて、昨今、不人気なのは承知していたが、まさかそこまでとは思わず、ちょっとびっくりした。
身近でも、教師になってすぐに辞めてしまう人も多く、管理職が講師を血眼になって代替教員を探し回ったりしている。受験の指導をしていても、国公立の教

もっとみる
秋の休日日記

秋の休日日記

期末テストのテスト週間で何にもない土日でした。
すっかり秋。

これは先日の写真ですが、富士山も雪化粧。

好天に恵まれ、いい休日でした。
二日間、一日中、庭仕事。
そんなに広い庭でもないのですが、木を切ったり、草を取ったり、野菜の面倒を見たり・・。

そんなわけで、ご迷惑でしょうが、以下、我が家の野菜たちの紹介です。

絹さやえんどう。

小かぶ。

ブロッコリー。

小松菜と両端はそら豆。

もっとみる
おちこちぶらり①:太宰治とララ洋菓子店

おちこちぶらり①:太宰治とララ洋菓子店

静岡県三島市

ララ洋菓子店と太宰治

太宰治は昭和9年夏のひと月を静岡県三島に滞在し、よくこの店を訪れ、レコードを楽しみながら、コーヒーを飲んだと言う。

下の写真は現在のもので、伊豆箱根鉄道の三島広小路駅を降りてすぐにある本店である。開業当時から場所は変わっていない。
(ララ洋菓子店は現在、三島の萩と駿東郡清水町に二つの支店がある。)

ララ洋菓子店は昭和7年にカフェとしてオープン。
当時、2

もっとみる
第292話:富士山の初冠雪

第292話:富士山の初冠雪

今週の11月7日木曜日に富士山に初冠雪の発表があった。

ニュースによると平年より36日、昨年より33日遅く、観測開始後130年で最も遅い初冠雪なのだそうだ。これまで最も遅かった初冠雪は10月26日だそうだから11月初旬までずれ込んだのは異例のこと。

富士山の初冠雪と言えば、3年前(2021)には9月7日に発表された初冠雪が取り消されたことがあった。
甲府観測所では富士山の初冠雪を富士山観測所の

もっとみる
お弁当と鬱の歌

お弁当と鬱の歌

先週の金曜日のことでありました。

家に帰って弁当箱をカミさんに手渡そうとしてバックから出したとき、その重さに「オレは今日、昼飯を食べなかったんだ」と気づいたのであります。

教員にとって昼休みはあってなきようなものであって、以前にもそんなことはあったのですが、その日は別に何も忙しいこともなく、ただただ昼飯を食べなかったことに夜になって気づいたのでありました。

「お弁当を食べなかったみたい。ごめ

もっとみる
第291話:松井と大谷

第291話:松井と大谷

昔々の話であるが、昔は「巨人・大鵬・卵焼き」の時代。テレビでは毎晩のように巨人の試合が放映されていて、王とか長嶋とかの活躍を父親と一緒に観ていた。

別に巨人が好きなわけでもなかったが、テレビで中継されるのは巨人だったから、自然に巨人の選手は頭に入り何となく巨人ファンだった。
そうそう「巨人の星」がアニメで放映されて根性の時代だったせいもあった。

金にものを言わせて選手を集めてという時代を経て野

もっとみる
第290話:今日を終わらせる

第290話:今日を終わらせる


PREMIUM MALT'Sを買って帰る日は なんにもしない  グーダラしたい

これは戯れ歌に過ぎないが、一日の終わりに何か自分へのご褒美があるのは大事なことだと思う。「ああ、今日はもういい。終わりだ」って酔っ払って寝てしまうのは快感である。

僕らは直線的な時間を生きていると言われる。
今日は明日につながり、明日を追いかけ、明日に追われる。1ヶ月後にはあれがあり、来年はこれがある。

高校生

もっとみる
第288話:かわいい

第288話:かわいい

家の周りは田んぼと畑ばかりだからいろんな鳥がやってくるので庭の木陰に餌台を作って置いてみたことがあった。

最初はスズメがやってきた。時にはたくさん餌台にムクムクと群れてチュンチュンしている様子がかわいらしかった。メジロもやってきて木にとまりながらミカンを啄んだり、ムクドリがツガイで来たりもした。
休日に昼ご飯を食べながらカミさんとそんな様子を暫くほのぼのと楽しんだ。

ところが段々に来る鳥が大き

もっとみる
第147話:沈黙の艦隊

第147話:沈黙の艦隊

僕は漫画が苦手である。
別に気取っているのではなく、漫画を読み出すと「文字」を読むのが面倒になって「絵」だけを追いかけてしまい、そのうちに話の内容が分からなくなってホッぽり出してしまう。

というわけで、僕が読み通した漫画は二つしかない。

ひとつは、井上雄彦の「スラムダンク」。
桜木花道の人間がおもしろい。たぐいまれな才能を持っているだけではない。欠点だらけで鈍くさく、バカみたいに努力する。何よ

もっとみる
第141話:人が山に登る理由

第141話:人が山に登る理由

僕がまだ学生の時、友人と飲んだくれて終電もなくなり、近くの後輩の下宿に転がり込もうとした夜のことだった。

近くといっても歩いて1時間以上もあったのだが、酔っ払っているから距離は気にならない。深夜、いい気持ちで歩いていると道端に大売り出しの大きな赤いノボリバタが立てかけてあった。見渡すが、近くに商店もない。
「こいつはいい」と僕はその赤いハタを担ぎながら、時々は振り回したりなどして気分良く歩いてい

もっとみる