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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2023年6月の記事一覧

女子のスラックスで性的マイノリティへの対応ができたという勘違い

6月16日に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(通称、以下:LGBT理解増進法)が参院本会議で可決され制定されました。

当初の議員立法段階での法案内容に関しては種々の問題点が指摘されていましたが、維新や国民民主の修正案を受け入れたことである程度現実的な着地点に落ち着いたようです。

そして法案成立前の段階から、社会の流れを受けて学校も対応に迫ら

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「仕事は楽しい」と考えている日本の高校生の割合が低い主因は学校教員かもしれない

「仕事は楽しい」と考えている日本の高校生の割合が低い主因は学校教員かもしれない

 国立青少年教育振興機構が22日に公表した国際調査で「仕事は楽しい」と考えている日本の高校生の割合は4か国(日本、米国、中国、韓国)で最低となった、というニュースを見かけました。

こうしたアンケート結果の分析は難しく、一概に判断することは難しいと思います。

しかし、この結果の主因は学校の教員ではないか、と考えられます。

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脈拍で集中度を測る仕組みは実験としては面白いが、現実にはディストピアでしかない

脈拍で集中度を測る仕組みは実験としては面白いが、現実にはディストピアでしかない

脈拍で生徒の集中度を測定し、授業のどの場面で生徒が集中しているのかを調査する試みがニュースに上がっていました。

授業中の集中具合生徒の集中具合に関しては、授業経験を積んだりそのクラスでの授業回数が増えればなんとなくつかめるようにはなってきます。

とはいえ、特定の生徒が集中具合がどの場面や活動で高まるかということはブラックボックスだったわけです。

今回の試みはそうした個人レベルの細かな経過時間

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放課後児童クラブに関する諸問題

放課後児童クラブに関する諸問題

放課後児童クラブは学童保育などとも呼ばれ、学校が終わった後に子供を預かる公的サービスの総称で法的には放課後児童健全育成事業と言われるものです。

この制度は児童福祉法に基づいて行われています。

この事業があるおかげで、共働きの家庭(現代日本では大半だと思われますが)で両親ともにフルタイムで働くことができるため、その恩恵にあずかっている人は決して少なくありません。

具体的に事業の内容具体的に放課

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「奨学金の返済苦」を気にして進学を諦めるべきではないが、奨学金に関して進路指導担当者は最低限の知識を持つべき

「奨学金の返済苦」を気にして進学を諦めるべきではないが、奨学金に関して進路指導担当者は最低限の知識を持つべき

日本経済は長引く不況の中で停滞していますが、大学進学率や家計における教育支出率は増加しています。

とはいえ無い袖は振れぬわけで、多くの人達は奨学金を借り入れることで学費を捻出しています。

私自身、大学進学に際し奨学金を借りており、返済までには15年近くかかりました。

「返済苦」による自殺先日、「奨学金の返済苦」によって自殺をするというニュースが上がっていました。

奨学金の借入額と就職先によ

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高校生の電子決済アプリ詐欺はスマホでもアプリでも学校の責任でもない

高校生の電子決済アプリ詐欺はスマホでもアプリでも学校の責任でもない

鹿児島県内の公立高校で多数の生徒が電子決済アプリを使って、第三者から不正に送金させていた疑いで事情聴取を受けているというニュースを見かけました。

手口としては、存在しないポイントアップキャンペーンを装って電子決済アプリの残高を送金させたというものです。

今回は特定の学校の生徒で関係者が多数存在するということで、学校を非難する声もあるようです。

学校の責任はないまずそもそも論として、この事件に

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「みんな揃って損をしよう」という学校文化

「みんな揃って損をしよう」という学校文化

コロナが収束を見せる中、学校では多くの行事が再開しています。

しかし、その一方で下がり続ける教員採用試験の倍率など、教育現場は深刻な人手不足に陥っています。

教員だけでない人手不足そうした人手不足は教員だけではないようです。

バスのドライバーはその一つです。

コロナ禍で観光需要が低下し、ドライバーの数も業者の倒産や整理解雇などで大きく減少しました。

ところが、コロナの終息とともに観光需要

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行事多過ぎ問題:「学校は授業以外が多い」という正論にどう向き合うか

行事多過ぎ問題:「学校は授業以外が多い」という正論にどう向き合うか

学校の目的は言うまでもなく教育を行うことです。

ここで言う教育とは主に教科の教育であり、これは諸外国では当然の認識となっています。

ところが日本においてはその認識が少々異なっています。

どうやら教育の当事者である子供たちの認識は「友人との交流」が学校の意義となっているようです。

豊かさの副産物こうした認識そのものは決して嘆くべきことではないように感じています。

なぜならば、教育が当然のよ

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中央大学の「生成系AI」への対応指針は今後のフォーマットになり得る

中央大学の「生成系AI」への対応指針は今後のフォーマットになり得る

生成系AIに関する話題は事欠かない昨今ですが、教育業界ではその利用に関して賛否が分かれています。

ある程度利用に賛成する一部の声がありますが、教育業界という旧態依然とした業界においては、その存在自体を受け入れ難い人も多い印象を受けます。

そんな中、中央大学はAIに関する基本指針を表明しました。

このことについて詳しく考察してみたいと思います。

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授業支援システムと校務支援システムやタブレットとPCは分離、併用した方が不便だが安心かもしれない

授業支援システムと校務支援システムやタブレットとPCは分離、併用した方が不便だが安心かもしれない

GIGAスクール、タブレットの導入により学校現場の業務は大きく改善しました。

成績の一元管理から公務分掌関係書類のやり取り、ログの保存などこれまで紙ベースと行われていたものやデータのやり取りで作成していたものに関しての効率は劇的に改善しています。
(もちろん学校や自治体によるのかもしれませんが、それまでと比較すると様変わりしたところが多いはずです)

しかしその一方でデータの管理のミスから外部に

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教育利用Chromebookの故障と持続性の低さに関する諸問題は、端末の特徴への理解不足が原因

教育利用Chromebookの故障と持続性の低さに関する諸問題は、端末の特徴への理解不足が原因

コロナ禍により加速したGIGAスクール構想、日本中の小中学生にICT端末を配る試みにより多くの学校では生徒が端末を利用できる環境が整備されました。

当初はどの端末を導入するかが大きな話題になりましたが、価格の安さや代数確保の容易性からChromebookを導入した自治体や学校も多かったようです。

導入から3年が経ち、現場ではトラブルが発生しているようです。

その一つがChromebookの故

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教員採用試験の前倒しという行き当たりばったりの愚策

教員採用試験の前倒しという行き当たりばったりの愚策

この数年、教員不足が顕在化し採用試験の倍率低下はとどまるところを知りません。

この状況に対し政府や文科省も一応の対策を行う方針を見せていますが、それもどこまで実効性があるのか微妙なところでしょう。

なぜならば、場当たり的な賃金引上げ(しかも僅かな金額)や免許制度を緩める案が大半で、現場の業務量削減に関しての具体的な方針が見えないからです。

そして、ここにきて更なる悪手に彼らは手をつけるようで

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AIは「提出型課題」の存在意義をどう変化させるか

AIは「提出型課題」の存在意義をどう変化させるか

ChatGPTなどの生成型AIの話題がここ最近の教育界隈では大きな話題になっています。

ニュースやSNSなどのメディオ上ではもちろんですが、リアルな現場でもどのように導入するか、排除するか、これまでの教育手法をどう変化させるか、様々な議論がなされています。

学校における「提出型課題」の存在学生時代にレポートや課題、宿題の提出を課された経験の無い人はほとんどいないでしょう。

こうした「提出型課

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