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放課後児童クラブに関する諸問題
放課後児童クラブは学童保育などとも呼ばれ、学校が終わった後に子供を預かる公的サービスの総称で法的には放課後児童健全育成事業と言われるものです。
この制度は児童福祉法に基づいて行われています。
この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学している児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。
この事業があるおかげで、共働きの家庭(現代日本では大半だと思われますが)で両親ともにフルタイムで働くことができるため、その恩恵にあずかっている人は決して少なくありません。
具体的に事業の内容
具体的に放課後児童クラブではどのようなことが行われているのでしょうか。
一般には以下のものがあげられます。
保護者の帰宅までの児童の健康管理・安全確保・情緒の安定
遊びや活動の提供による自主性・社会性・創造性の育成
補食(おやつ)の提供
宿題など自主学習の場の提供(公設の場合は不可)
家庭との連携
虐待や福祉的支援の発見や関係機関との連携
放課後児童クラブはあくまでも「福祉」の観点から設置されているものであって、教育機関ではないため勉強を教えるということは無い、ということになります。
かつては鍵っ子がいた
かつては「鍵っ子」と呼ばれて、家に一人で子供が両親の帰宅まで留守番をする家庭は少なくありませんでした。
現在ではそういった場合の安全性の確保や児童育成の認識の変化から問題視されるようになりました。
そうした時代の変化によって放課後児童クラブは1998年に制度化されました。
法制度化当初は10歳までの利用としていたため、高学年の子供は依然と同じ鍵っ子となる子供も多く見られたようですが、2015年には制度が改定されて対象を「児童」としたことで小学6年生まで利用することが可能となりました。
とはいえ待機児童問題が発生しているため、必ずしも高学年で利用ができるとは限らないのが実情のようです。
費用負担の問題
公設のクラブの場合、費用負担は月1万円以下という非常に少額で子供を預けることが可能です。
一方で私設のクラブでは月4万円以上かかるケースも少なくなく、その費用の格差は問題となっています。
特に住んでいる自治体によっては所得制限なく預けることができることもあるため公平性という点からも費用に関しては議論が必要でしょう。
またそうした少額の費用負担が人件費の抑制によって得られているという点も問題です。
学童支援員の年収は300万円以下の嘱託職員がほとんどで、全国にいる13万人以上いる支援員の7割は非正規雇用労働者です。
また社会保険に加入できないケースも存在し、人材の使い潰しをすることで制度の維持が為されていることは大きな問題でしょう。
また、受け入れている児童数に対して支援員の数が不足していること多く、制度設計上の観点からも、今一度精査しなければならないように感じます。
重要だからこそお金をかけるべき
放課後児童クラブは働く親個人にとってだけでなく、社会システムの維持管理の面からも非常に重要な存在となっています。
だからこそ、より充実した支援が行政からもなされるべきだし、経済的に困窮していない家庭は相応の負担を負うべきです。
そして何よりも人材の確保と制度の維持のためにも支援員の方に正当な額の報酬と対偶を与えるべきでしょう。
異次元の少子化対策は結構ですが、こうした見えにくい制度の維持や質の向上は決して疎かにしてはいけないのではないでしょうか。