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「奨学金の返済苦」を気にして進学を諦めるべきではないが、奨学金に関して進路指導担当者は最低限の知識を持つべき

日本経済は長引く不況の中で停滞していますが、大学進学率や家計における教育支出率は増加しています。

とはいえ無い袖は振れぬわけで、多くの人達は奨学金を借り入れることで学費を捻出しています。

私自身、大学進学に際し奨学金を借りており、返済までには15年近くかかりました。

「返済苦」による自殺

先日、「奨学金の返済苦」によって自殺をするというニュースが上がっていました。

奨学金の借入額と就職先による収入格差によって、返済が難しくなるケースは一定数存在するようです。

特に日本においては若年層の収入が低く、20代での奨学金返済は家計への負担も大きいように感じます。

ニュースの中では22年に10人の自殺者が出たということがフォーカスされていました。

もちろん、こうした不幸な方を生んだことは社会全体で反省すべきですし、改善の余地があるのも事実です。

大学生の半数(およそ1学年で30万人と推定されます)が何らかの奨学金を借り入れている時代に、年間10人の自殺者は割合的には深刻な問題とまでは言えないように感じます。

とはいえ、奨学金の借り入れに関しては進路指導担当者(学級担任や塾のチューター)などもある程度知識を持ったうえで指導に当たる必要はあるでしょう。

高等教育の就学支援制度

あまり知られてはいませんが、高等教育の無償化、支援制度が存在します。

保護者(学費負担者)の所得制限が存在するためそれほど多くの人が対象ではありませんが、住民税非課税世帯などの場合はこの制度を使えば負担なしで大学へ進学することが可能です。

民間の奨学金

また、民間の奨学金も思った以上の数が存在します。

銀行や民間企業といった私企業から、企業による財団など様々で、出身地域限定のものなども多く、実際にはそれほど多くの申し込みが無い奨学金もあるため調べて申し込みをする価値はあるのではないでしょうか。

また、就職先を限定する代わりに奨学金の給付を受けることが可能な団体も存在します。

上のリンク先は「民医連」という共産党系の医療団体です。貸与条件に在学時の関連団体のイベントへのボランティアの協力、民医連関連の病院への就職を条件に返済免除規定などが存在します。
(特定の政治団体とのつながりがあるため、率先して勧めることはありませんが説明と紹介はしてもよいでしょう)

教育ローンや学資保険

教育ローンは金融機関から教育費として借り入れる商品です。

利息が高くつくこと、親の名義で借り入れるなど奨学金とは異なりますが入学金などの一時金に充てる場合には利用する必要がでるでしょう。

教育ローンは奨学金と異なり、利息分のみは在学中に返済をするケースがほとんどですので、利用に関しては注意が必要です。

また、教育費として学資保険を積み立てている家庭もあると思いますが、こちらに関しても利用に際しては注意が必要です。

学資保険の場合、18歳満期の商品では入学金の支払いや前期授業料の支払期限に間に合わないケースが存在します。

以前は一般入試が大半であったため、早生まれの生徒の家庭が注意しておけばよかったのですが、近年は年内入試が増加しているため満期に間に合わずに解約をするか、教育ローンによるつなぎ融資を受けるか、といったことを考える必要もあるようです。

進路指導担当者は最低限の知識が必要

奨学金の返済ができずにトラブルになったり、返済を苦にして自殺に至るケースは実際にはほとんどありません。

学生支援機構の奨学金だけでも年間で100万人以上が利用しているのですから、必然的に不幸な事例は一定の数、発生するでしょう。

しかし、そうした事例が起きないように指導や行政、福祉につなげる責任が学校には存在します。
(より正確に言えば、教員ではなくSSWなどの専門職がそうした業務を行うべきですが、現実にはそうした対応ができる学校はほとんどありません)

そのためにも、学級担任やチューターはこうした奨学金関係の知識を最低限もって指導に当たる必要があります。

家庭の事情を勘案した上で、進学先を勧めたり、奨学金などの制度を紹介したりすることが進路指導担当者には求められます。

ただ、それと同時に学費などの資金繰りに関しては生徒自身の責任であることもしっかりと伝えるようにはしています。

せっかくならば、昨今推進されている金融教育の一環としても奨学金や教育ローンとその返済に関する学習は利用してみては、とも思うのです。

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