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山本泰弘
2023年1月2日 01:45
世を去った偉人に対し、時の政府がその功績をたたえて国葬を打診したが、遺族がそれを辞退した例がある。その偉人とは、医療衛生の改革者、フローレンス・ナイチンゲール。今から百年以上前のイギリスでのことだ。 昔の伝記では「負傷兵の看護に尽くした聖者」と描かれていたようだが、正確には、当時の劣悪な野戦病院で命を落とす兵士の死因の統計データを取り、感染症死が多いことを明らかにして軍に衛生状態を改善させた
2022年8月6日 15:33
先日、ラーメンの年間消費額のランキングでトップを保ってきた山形市が新潟市に抜かれたというニュースが県内を駆け巡った。首位奪還に燃える業界人や愛好家も多いことだろう。 だが、山形県は全国屈指のラーメン県であるとともに、塩分取りすぎの県でもある。県民の塩分摂取量は国の基準を上回っており、医療界や行政は減塩を呼びかけている。高血圧とそれにより起こりうる脳卒中の予防のためだ。 ラーメン自体に罪は
2022年4月24日 00:18
このご時世、テレビの旅番組は遠方への観光気分を味わわせてくれるありがたい存在だ。中でも、各地のローカル線をたどる鉄道の旅番組をよく見る。 ある時取り上げられた北海道の小さな駅は、かつて駅員の配置がなくなり無人になろうとしたとき、それを寂しく思った近所の人が駅舎に喫茶店を開いて今に至るという。 ふと身近な駅を思えば、私がお世話になってきた東根駅も、昔は駅員のいる駅で、事務室が備えられた造り
2022年1月10日 01:36
私の住む山形市は、今年1月に予定されていた成人式を、新型コロナの影響により延期して5月の連休に実施した。県外在住者はPCR検査で陰性であれば参加できるはずだったが、市は直前に、県外在住者の参加を禁じた。市HPで公開されている市への意見には、「とても悲しい」、「ひどすぎる」、「なぜ再延期しないのか」といった悲痛な声が数多くある。 各地の自治体の中には、満足な形での開催を目指して成人式をあくまで
2022年1月9日 15:16
消費税のあり方は、国民生活に最も身近な政治課題だ。野党を中心に、多くの政治家が減税や廃止を訴えている。 確かに消費税の減税は全員の暮らしにメリットがあるだろう。しかし、一律の減税よりも、医薬品・衛生用品を非課税としてはどうか。 コロナ禍を経験した今、私たちは医薬品・衛生用品の大切さを痛感した。これらは健康な暮らしのために、誰もが買い求めるものであり、家計が苦しいからといって節約して健康を
2022年1月8日 15:29
「デジタル庁」、「子ども庁」、「孤独・孤立対策担当室」。政府・与党は、日本社会の課題に取り組む姿勢をアピールすべく、次々と新しい組織を設けようとしている。世間はそれで、政府がしっかり対処しているように思わされる。 しかし、役所に新たな組織を設けたところで、そこに配置される職員の多くは、すでに激務極まる他の部署から引きはがされてくるのである。あちこちの部署で突然の異動が生じ、去る職員の仕事を残
2021年8月18日 23:13
昨年春の安倍政権による「一斉休校ショック」から一年余りが経った。 大多数の自治体が無理を押して国の要請どおりに休校した一方で、茨城県つくば市をはじめとした一部自治体は、子どもたちと家庭の実情に基づき、児童・生徒の学校での受け入れを続け、希望に応じ給食を提供するなどの策を講じた。この差はなぜ生じたのか。改めて考えたい。 つくば市長は、40代で子育て中の父親である。加えてつくば市は、宅地開発と
2020年8月10日 20:38
特別定額給付金の手続きが始まり、各地の自治体には住民からの問い合わせの電話が押し寄せているという。 私も住民からの電話を受ける部署に勤めたことがあるが、役所の職員は問い合わせに丁寧に対応しようとするあまり、過度に平身低頭な態度になりがちである。 もちろん常識的な丁寧さは必要だが、心ない住民による無理難題までも、相手の気分を損ねないようにと聞き続けなければならないだろうか。そのために心身を
2020年8月2日 21:16
地方の企業は人材難である。 山形県の場合、高校卒業者の約7割が県外に進学する。彼らは多くの場合、進学先の大学等で大手就活サイト運営企業による「就活セミナー」を受け、会員登録し、そこから続々と供給される情報に基づいて就活をスタートする。その情報の発信源は多大な出稿費を払える巨大企業が中心であり、地方出身の若者たちは自ずと大都市への就職へと進むこととなる。 人材難という地域経済の死活的課題には
2019年5月18日 22:42
一か月以上前のことになるが、地元の市立図書館から、県内の他の市の図書館にある絶版本の取り寄せを申し込んだ。「相互貸借」といって公共図書館では一般的な手続きだが、いくら待っても到着の連絡が無い。地元の図書館に尋ねたところ、「手続きや梱包のため」三週間かかるとのことであった。しかし未だ本は来ない。 申し込んだ直後に電話やメールで相手の図書館に連絡し、本を郵送すれば済むはずではないか。これは職員の
2019年1月19日 15:00
〔※著者註:2016年執筆〕 山形県初の中高一貫校として期待を集める東桜学館。輝かしいイメージの裏で、入学予定の児童とその保護者らの間には懸念が生じているようだ。入学説明会において、昭和の管理教育を想起させる厳格な方針が打ち出されたというのだ。児童からの独自の部活を作りたいという希望も拒まれたと聞く。 確かに政策決定者の立場からすれば、万策尽くしてこぎ着けた開校であるからには高い学力と規律を