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【提案】「あの町の図書館から本が来ない」

 一か月以上前のことになるが、地元の市立図書館から、県内の他の市の図書館にある絶版本の取り寄せを申し込んだ。「相互貸借」といって公共図書館では一般的な手続きだが、いくら待っても到着の連絡が無い。地元の図書館に尋ねたところ、「手続きや梱包のため」三週間かかるとのことであった。しかし未だ本は来ない。

 申し込んだ直後に電話やメールで相手の図書館に連絡し、本を郵送すれば済むはずではないか。これは職員の怠慢などではなく、役所のルールがおかしいためである。本をネットで注文すれば翌日に届く世の中で、時代錯誤な決まりが生き残っているのだ。

 近年、自治体が競って趣向を凝らした図書館を建てている。新しく整備された図書館には決まって、重厚長大な図鑑や百科事典が納まっている。かつて昭和の時代には自宅に百科事典を備えるのがステータスとされたと聞くが、まさか役所はその感覚で公共図書館をとらえてはいないか。

 シェア経済の時代、所蔵資料を相互に融通し利用者が速やかにアクセスできなければ、公共図書館は「使えない過去の遺物」とみなされてしまうだろう。そうならないよう、運用ルールの更新が急務だ。

(2019年3月執筆、2019年4月公開)

写真:Suz-b [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)]

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