学校は誰のものか? ―生徒が主役の新設校を―
〔※著者註:2016年執筆の記事です。〕
山形県初の中高一貫校として期待を集める東桜学館。輝かしいイメージの裏で、入学予定の児童とその保護者らの間には懸念が生じているようだ。入学説明会において、昭和の管理教育を想起させる厳格な方針が打ち出されたというのだ。児童からの独自の部活を作りたいという希望も拒まれたと聞く。
確かに政策決定者の立場からすれば、万策尽くしてこぎ着けた開校であるからには高い学力と規律を実現させたいのだろう。だがそのこだわりのために、今を生きる生徒を旧時代的な檻にとらえることは許されない。
今時の生徒は極めて敏感に空気を読み、自分を演じる。大人達が「東桜学館とはこうあるべき」という理想像を求めてしまえば、生徒達は空気を読んで独創性を抑え、順応するだろう。しかしそれは、生徒が主役の学校と言えるだろうか。
現代の少年少女には彼らなりの世界観と志向があり、学びにしろ課外活動にしろ、彼らのセンスを尊重した学校作りがなされるべきだ。
若者に熱烈に支持され、NHKで全国放送されるまでになった青春アニメ「ラブライブ!」は、学校を廃校の危機から救おうと生徒達がチームを結成し、アイドルを目指すストーリーである。学校は自分達の場所であり、単なる芸事でなく現実の課題のため仲間と協働する――そんな創造的な学校像が、十代の共感を集めている。
神奈川県立上鶴間高校では、生徒がチームを作って現実の課題に取り組む実習型科目を設けている。その成果の一例として、学校のイメージと志願者数の向上のため、生徒達の手による学校生活の紹介映像や制服ファッションショーが生まれた。生徒達の着眼点もさることながら、そこには彼らのセンスに任せようとする大人達の姿勢も表れている。
東桜学館はこれまで政策決定者によって設けられたが、これから中身を創っていくのは第一に生徒達であり、そして教師と保護者、地域の人々だ。生徒達には、様々なプレッシャーをかわし、「自分達の学校」を創り上げてもらいたい。そして大人達は、機転と融通を利かせて彼らの発想を実現させる使命がある。
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