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すみれ観劇ノート 2015年

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宝塚歌劇を中心とした観劇感想。2015年版です。
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2015/12/9 「新源氏物語」

2015/12/9 「新源氏物語」

★なぜ「あさき……」ではなかったのか?

 2015年最後の宝塚観劇は花組「新源氏物語」とレビュー「Melodia」の2本立て。源氏物語といえば日本最古、いや世界でも最古の長編小説。が、この舞台の原作は小説家の田辺聖子氏。つまり「新源氏物語」は田辺氏による現代語バージョンの舞台化なのだ。

 なぜ「あさき」でなかったのか? 私が最初に引っかかったのはそこだった。花組といえば大和和紀のコミック版源氏

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2015/11/19 「ガイズ&ドールズ」

2015/11/19 「ガイズ&ドールズ」

★ブロードウェイミュージカルはクセになる

 「ガイズ&ドールズ」は古き良きブロードウェイらしいミュージカルだ。能天気なほどの明るさ、ギャンブルと恋という道具立て、そしてラストはハッピーエンド。私は見事にこれにハマって繰り返し観劇することになった。普段どの公演も一度か二度しか見ない私にしては異例の事で、自分でもびっくりである。

 私がこのミュージカルのどこが気に入って、なぜ東京宝塚劇場に通いつめ

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2015/9/10 「星逢一夜」

2015/9/10 「星逢一夜」

★演出家上田久美子氏の大劇場デビュー作を見る

 本公演では久しぶりのオリジナル作品、宝塚お得意のコスチュームものですらない。そのうえ、若者には受けないと言われる日本ものである。だが、それでも雪組公演「星逢一夜(ほしあいひとよ)」を見ないわけにはいかない。ついに、演出家上田久美子氏が大劇場デビューを飾るのだから。

 上田氏はこれまでにわずか2つの作品しか発表していない。2013年の月組バウホール

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2015/08/27 「ガイズ&ドールズ」

2015/08/27 「ガイズ&ドールズ」

★帰ってきた「ガイズ&ドールズ」

 「ガイズ&ドールズを星組で再演」と聞いて、再演作品には批判的な私にしては珍しく心踊った。「ようやく来たか『ガイズ&ドールズ』」「待ちに待ったよ『ガイズ&ドールズ』」そんな気分だ。

 コメディ・ミュージカル「ガイズ&ドールズ」が宝塚で上演されるのは今回が3度目だ。初演は1984年月組、主役のスカイは大地真央、相手役のサラは黒木瞳、ネイサン役には剣みゆき。再演の

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2015/8/18 「王家に捧ぐ歌」

2015/8/18 「王家に捧ぐ歌」

★「アイーダ」ふたたび

 「王家に捧ぐ歌」を宙組で再演すると聞いたときは本当に驚いた。なんて無謀なことを、歌劇団はいったい何を考えているのか。再演祭りは昨年で終わりじゃなかったのか、と半ば怒りに近い感情さえ湧きおこった。それほどに初演の印象は強い。

 オペラ「アイーダ」を下敷きにした「王家に捧ぐ歌」の初演は12年前の星組。トップスターの湖月わたるが主人公ラダメス、トップ娘役檀れいがアムネリス、

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2015/8/13 「エリザベート」

2015/8/13 「エリザベート」

★東宝エリザベートを「花總まり」で

 東宝エリザベートに花總まりが主演する。これは事件である。私はすぐに観劇を決めた。宝塚を観るようになって15年、卒業したOGの公演には何度か足を運んでいるのだが、これほどのディープ・インパクトはそうあるものではない。

 宝塚ファンの皆様には私のこの「キモチ」は容易にご想像いただけると思うが、記録のためにその理由を以下に記しておく。

 「エリザベート」は19

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2015/7/22 「1789−バスティーユの恋人たち−」

2015/7/22 「1789−バスティーユの恋人たち−」

★宝塚101周年めの新作海外ミュージカル

 昨年は宝塚100周年と銘打った大作と再演もののオンパレードだった。それが一段落した今年も歌劇団は意欲的に海外ミュージカルに取り組んでいる。フランス発の「スペクタキュル」を原作とする「1789−バスティーユの恋人たち」、演じるのはトップスター龍真咲率いる月組である。

 「スペクタキュル」とは耳慣れない言葉だが、フランス生まれの新しい娯楽のスタイルで、歌

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2015/6/20「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」

2015/6/20「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」

★ディカプリオ&トム・ハンクスを宝塚で

 ミュージカル「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」は、同名のアメリカ映画を原作とするミュージカル作品。これを宝塚歌劇団星組が公演するという。映画でレオナルド・ディカプリオが演じた主人公の若き天才詐欺師フランク・アバグネイルJr. は星組二番手スターの紅ゆずる。これを追うFBI捜査官カール・ハンラティ(映画ではトム・ハンクスが演じた)役は七海ひろき。

 

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2015/6/13「大海賊」(星組全国ツアー)

2015/6/13「大海賊」(星組全国ツアー)

★あの「大海賊」再び

 まさかあの「大海賊」が再び上演される日が来ようとは。そう思った宝塚ファンは少なくないと思う。この演目は2001年、紫吹淳&映美くららコンビの東京宝塚劇場でのお披露目演目だった。紫吹はスタイル抜群のダンサーだったが、12学年下で星組からやってきたばかりの映美とのコンビはなんともチグハグ、まったく面白みに欠ける公演で、以来15年間「大海賊」は私の「つまらなかった作品リスト」の

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2015/5/19 「カリスタの海に抱かれて」

2015/5/19 「カリスタの海に抱かれて」

★花組が東宝にやってきた

 4月に宝塚大劇場で見た「カリスタの海に抱かれて/宝塚幻想曲(タカラヅカファンタジア)」が東京宝塚劇場にやってきた。某カード会社の貸切公演に申し込んで当選したことをすっかり忘れていて焦ったが、いつものチケットフォルダーには郵便で届いたチケットがちゃんと収まっていてほっとする。

 久しぶりの東宝は満員御礼で、2階席を見渡しても空席は見つからない。海外ミュージカルでもなく

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2015/4/28 「黒豹の如く」

2015/4/28 「黒豹の如く」

★柚希・夢咲コンビのラストステージ

 星組トップコンビ柚希礼音(ゆずきれおん)と夢咲ねねが宝塚を卒業する。就任は2009年6月というから、二人は丸6年間星組をトップコンビとして星組を牽引してきたことになる。思えば長いトップ生活だった。そのラストを飾るのがミュージカル・プレイ「黒豹の如く」である。

 脚本は柴田侑宏、演出・振付は謝珠栄。柴田氏は宝塚歌劇団専属の演出家としては50年のキャリアを誇る

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2015/4/5 「カリスタの海に抱かれて」

2015/4/5 「カリスタの海に抱かれて」

★若くフレッシュな花組を大劇場で観る

 友人からの強いお誘いでバウホール公演「New Wave 宙」を見に、横浜から宝塚まで久しぶりに出かけた。その翌日、花組「カリスタの海に抱かれて/宝塚幻想曲(ファンタジア)」を観劇してきた。前売りが完売でも、簡単に当日券で見られるのが宝塚大劇場の嬉しいところだ。

 花組はこのところスターの異動が激しかった。前々回の大劇場公演「ラスト・タイクーン」でトップス

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2015/3/12 「ルパン三世−王妃の首飾りを追え!−」

2015/3/12 「ルパン三世−王妃の首飾りを追え!−」

★ルパン三世in宝塚?!

 宝塚歌劇がコミックやゲームの世界と相性が良いことは「ベルサイユのばら」や「逆転裁判」などの作品がすでに証明しているが、「ルパン三世」は元は青年向けコミック。私は上演が発表されたとき、真っ先に「すみれコードはどうするのよ」と叫んだ。(ルパンがトランクス一枚でベッドに飛び込んだりはできない、演じるのは女性なんだから、と後から気がついて自分でも笑ってしまったが。)

 宝塚

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2015/2/15 「Bandito」

2015/2/15 「Bandito」

★粗野な美丈夫「珠城りょう」を見る

 2月は月組日本青年館公演「Bandito−義賊サルヴァトーレ・ジュリアーノ」である。Banditoとはイタリア語で山賊の意。副題のサルヴァトーレ・ジュリアーノは1940年代のシチリア島に実在した山賊の頭領である。主演は月組の珠城りょう。2008年入団というから入団8年目を迎える若手スターだ。

 宝塚では俗に「男役10年」と呼ばれる。入団8年めの若手スターが

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