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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2023年12月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第776話

「この野郎、覚悟しやがれ!」  ダカーリがそう怒鳴った時、誰かが怒り狂う彼の脇に腕を入れ…

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水深800メートルのシューベルト|第775話

ダカーリはその時、足がもつれて苦痛に顔を歪めていた。掴みかかろうとして、もう一歩踏み出し…

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水深800メートルのシューベルト|第774話

 バンドを引きちぎるように外してよろよろと頭を押さえながら立ち上がると、 「アシェル! …

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水深800メートルのシューベルト|第773話

「ご、ごめん、フェルマン。大丈夫か?」  声をかけると、彼はうんざりしたように言った。 …

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水深800メートルのシューベルト|第772話

「おい、早く降りて助けるんだ」  消火活動をしていたはずのエウヘニオが、くぐもった声で指…

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水深800メートルのシューベルト|第771話

僕は、尻餅をつき、ヘルメットが後ろのハッチか壁に当たって「カン」という音と振動が脳に響く…

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水深800メートルのシューベルト|第770話

 突然、上からシューという音と共に真っ白な煙が周囲の空間を覆った。僕は何が起きたかわからず「うわっ!」と叫んで体が撥ねるようになり、真後ろにあるハッチの開口部によろめいて倒れそうになった。その瞬間、ロープを放しそうになっていることを本能のどこかで感じ取り、危ないと思って、思い切りロープを引っ張った。ラッタルの途中にある担架だけは落としてはならないと、もう一人の自分が叫んだのだ。  ロープはピンと伸びた状態で持つ手に激しい抵抗の力が加わったので、目一杯力を込めて後ろへ引いて下

水深800メートルのシューベルト|第769話

 前の足側を運んでいた男が、自分だけ先にラッタルを降りて両手を広げていた。僕は担架をラッ…

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水深800メートルのシューベルト|第768話

 ハッチを出てすぐの廊室で、後ろのフェルマンからロープを渡され、大急ぎで担架の持ち手の部…

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水深800メートルのシューベルト|第767話

「よし、バンドはしっかりと固定するように」  もう黙って見ていられなくなった教官は、時計…

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水深800メートルのシューベルト|第766話

「おい!」その時、教官は面倒を避けようと、強めの口調で訓練生を引き止めた。 「この場合、…

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水深800メートルのシューベルト|第765話

「担架はこれじゃないだろう」 (と教官は言った。)  彼の言っている意味が理解できなかった…

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水深800メートルのシューベルト|第764話

「つっかえちまうよ」  前で持ち手の一つを担当していたフェルマンが、前のもう一人をどかせ…

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水深800メートルのシューベルト|第763話

 突然、離れた場所にあるコンソールの一つから「プシュー」と白い煙霧が噴き出てきた。僕は思わず「ワッ!」と声をあげた。エウヘニオが、担架搬送係以外の者を率いて、消火器を一斉に煙の源に向けた。それと同時に、僕らに指示を出した。 「君たちは下の医務室まで、搬送しろ」  僕は、担架を持つ前の二人に引っ張られるようにしてコンソールの間の狭い通路を出た。しかし、CICのハッチを出る時に前の二人が戸惑って動けなくなった。二人が担架を持ったまま狭いハッチをくぐり抜けられず、担架を傾けたり、