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水深800メートルのシューベルト|第771話

僕は、尻餅をつき、ヘルメットが後ろのハッチか壁に当たって「カン」という音と振動が脳に響くのを感じた。それと同時にくぐもった世界の向こうで「ぎゃあ!」や「うわあ!」といった声と、ドスンという重い物が落ちた音が一瞬で爆発したように音響を立てて、消えた。


 手に持っていたロープは緩くたわんでいた。それを見つめ一呼吸経ってから、それが……、担架から外れたのだと気づいた。


 CICにいた訓練生がハッチから廊室に出て来て、ラッタルの下を覗き込んでいた。現実を見るのはとても怖かったが、体を起こしてそっとラッタルの傍に行った。何メートルも下にはミノムシのような梱包物が落ちていた。その陰には、下敷きになったヘルメット姿のフェルマンが倒れていた。担架にくるまれた男は呻き声を微かに発していた。下敷きになった男は担架をどけようともがいていた。


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