ハッチを出てすぐの廊室で、後ろのフェルマンからロープを渡され、大急ぎで担架の持ち手の部分にそれを結び始めた。患者役の男は頭のすぐ傍にある結び目を見たが、不安そうにしていた。
「急げ、全員焼け死ぬぞ」
教官の言葉を聞いた途端、ロープの巻き方の手順を見失った。手を交差して……中からロープを通して……。そうだっけ? どこまでやったっけ? あれ、左右逆かも……。右と左、手前と奥のどちらに手を回すか、手で覚えたはずの記憶があいまいになった。両手に持つロープを引っ張ってみると、結び目が締まったので、多分これで正しいと思った。
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