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水深800メートルのシューベルト|第774話

 バンドを引きちぎるように外してよろよろと頭を押さえながら立ち上がると、
「アシェル! お前俺を落としやがったな! 許さねえ」


 サイレンの音をかき消すような鋭い声をあげた。その声が耳に刺さり、魔法にかかったように動けなくなった時、彼が拳を振り上げるのが見えた。スローモーションのようにパンチが頬にめり込むのを避けられず、一二歩弾かれるようにして僕は後ろにあったラッタルに背中をぶつけた。防火衣の柔らかい布越しにもラッタルの衝撃が伝わって来た。


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