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水深800メートルのシューベルト|第766話

「おい!」その時、教官は面倒を避けようと、強めの口調で訓練生を引き止めた。


「この場合、試験だったら、取りに行くか、布担架の代わりになる物を使って負傷者を縛るところだが、今日は時間がない。特別サービスだ。布製の担架がここにあるから使え。まったく……、何一つ学んでこないでここまで来やがって……」
 半ば嘲り、半ば嘆いたように言うと、コンソールの下から折りたたまれた布が出て来た。


 誰も行こうとしないので、僕はそれを受け取りに教官の立つコンソールまで戻り、オレンジや黄色の蛍光色の担架を手にして、ダカーリを寝かせた場所に広げた。


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