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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2022年4月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第166話

 オリビアさんは、おずおずと口を開いた。 「お邪魔でなければ、私がアシェル君に付き添って…

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水深800メートルのシューベルト|第165話

「それで、この子をもう少し預かってもらえませんか? 勿論お礼はしますわ。何しろこの子は、…

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水深800メートルのシューベルト|第164話

 オリビアさんは、口を半開きにして、その手に触れた。 「アシェルを預かってもらって、何と…

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水深800メートルのシューベルト|第163話

 コリーニと名指しされたおじさんは、手すりから外を見下ろして「ヒュー、怖いな」と呟き、ぐ…

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水深800メートルのシューベルト|第162話

「いけないわ……」  ママにティッシュを渡されて鼻をかむと、少し離れた階段の脇に、男の人…

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水深800メートルのシューベルト|第161話

 (ママは)オリビアさんの背後にいる僕にようやく気づいたようだった。目を合わせると顔を崩…

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水深800メートルのシューベルト|第160話

 その人はママだったが、変わってしまっていた。顔が蒼白く、首周りの皺が増え、背中が丸まっていて、ママのお化けみたいだった。 「あの……」と聞き覚えのある声で、やっと本当にママなんだと思えたが、前にいるオリビアさんを追い越して話しかけるのはためらわれた。 「あの、すみません。失礼でしょうが、これ……」  ママは財布から薄い緑色の紙幣――五十ドル――を取り出した。 「そんなのは、いいのよ」  お婆さんは、手を振って家の中に招き入れようと、体を横に向けた。ママは「時間がないん

水深800メートルのシューベルト|第159話

(オリビアさんが食事の準備をしてくれて、僕は)眠くて、何かを食べるより眠っていたかったが…

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水深800メートルのシューベルト|第158話

       (10) 「起きなさい、アシェル……。ケーブルテレビ見ながら寝たのね。いけ…

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水深800メートルのシューベルト|第157話

 あの子の名前は……、ええと、メリンダだ。左右の目の大きさの違う痛々しい顔を思い出してい…

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水深800メートルのシューベルト|第156話

 オリビアさんがいなくなると、言われていた通りにベッドに入り横になった。目をつぶってみた…

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水深800メートルのシューベルト|第155話

  オリビアさんは、いかにも残念という顔をして言った。 「違うわよ。今からお仕事に行かな…

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水深800メートルのシューベルト|第154話

オリビアさんもその「周りの人が見ている)気配に気づいたのか、強張った顔で恥ずかしそうに小…

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水深800メートルのシューベルト|第153話

 オリビアさんは、さっき声をかけてきた黄色い顔をしたお姉さんのレジに向かい、バッグから取り出した青いカードを手渡した。 「あら、前に来た坊やとは違う子ね。いいわね、お婆ちゃんと買い物で」   僕は、嬉しそうにカードが読み取り機を通るところを眺めた。エラーの音。 「あら、オリビアさん。残高が足りないわよ」 「そう、もう無くなったのね。今月は使い過ぎたかしら」 「支給額が減ったから、その影響かもね」  お婆さんは財布から小銭を取り出していた。後ろに並んでいた人や買い物カゴを