その人はママだったが、変わってしまっていた。顔が蒼白く、首周りの皺が増え、背中が丸まっていて、ママのお化けみたいだった。
「あの……」と聞き覚えのある声で、やっと本当にママなんだと思えたが、前にいるオリビアさんを追い越して話しかけるのはためらわれた。
「あの、すみません。失礼でしょうが、これ……」
ママは財布から薄い緑色の紙幣――五十ドル――を取り出した。
「そんなのは、いいのよ」
お婆さんは、手を振って家の中に招き入れようと、体を横に向けた。ママは「時間がないんです」と首を振った。跳ねた髪も揺れていた。
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