水深800メートルのシューベルト|第155話
オリビアさんは、いかにも残念という顔をして言った。
「違うわよ。今からお仕事に行かないといけないのよ」
「今日、僕が家にいたから?」
「ううん、お婆ちゃんは夜働いているのよ。だからアシェルはこのまま眠ってちょうだい」
聞けば、オリビアさんはハンバーガーショップで仕事をするらしい。僕は見知らぬところに取り残されるのがちょっぴり怖くなった。ここではママを呼ぶこともできない。
「きっと眠れないよ、お婆ちゃん(」
「大丈夫ですよ。明日、お日様が目を覚ます頃に、お婆ちゃんはいますからね」
僕はウツボのぬいぐるみを渡され、オリビアがドアにカギをかける音を確認して、そいつをぎゅっと抱きしめてみた。