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水深800メートルのシューベルト|第156話

 オリビアさんがいなくなると、言われていた通りにベッドに入り横になった。目をつぶってみたが、鍵がかかっているか不安になった。僕は、ウツボと一緒にドアの鍵を見に行き、冷たいドアノブを回すだけではドアが開かないと、自分に言い聞かせた。

 外の廊下に靴音が聞こえる度に、怖さとママが来てくれたのかもしれないという期待で、そっと玄関に行き、ドアノブを回してみる。足音が通り過ぎる度に、ほっとしたり、がっかりしたりしながら、ベッドに戻り、ウツボを隣に置いて横になる。何度か繰り返すうちに、段々と足音が気にならなくなった。すると、今度は、パパが恐ろしい顔で血を吐いていたことや、少女の震える声が頭の中を巡り、横になっていられなくなる。

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