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水深800メートルのシューベルト|第161話
(ママは)オリビアさんの背後にいる僕にようやく気づいたようだった。目を合わせると顔を崩して両手を目に当てていた。
「アシェル……。いい子に……してた?」
改まった口ぶりにどう答えたらいいかわからず、口をもごもごさせていると、オリビアさんが代わりに返事をしてくれた。
「ええ、とってもいい子にしていましたよ。ほら、坊や。ママを待っていたのよねえ……」
「アシェル……、こっちにいらっしゃい……。ジョーンズが……パパが亡くなったのよ。死んでしまったのよ。こっちへ来て……。ママを慰めて頂戴」
僕は言われた通り、ママの黒っぽいスカート目指して進んだ。そこでママの手に抱き止められた。スカートに顔をつけたが、何かの拍子に鼻を啜ると、僕の顔はスカートから離された。