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作品と制作

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過去の作品の紹介を兼ねて、作品と作品制作に関わる短い文章を載せています。
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#アート

春の色

春の色

写真の経験をベースに

箱根のポーラ美術館の彫刻「しあわせな犬」(2016)の周りに、インスタレーションを作るようになって8年。今回は、美術館の企画展が「色」のテーマ。自分の過去の色にまつわる職業体験を作品にしてみたい、というのがまず頭に浮かびました。

もう20年以上昔になりますが、美大で写真と動画を勉強していたこともあり、動画を撮影した写真や、写真そのもののレタッチのお仕事をしていたことがあり

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インスタレーション作品:龍脈 (りゅうみゃく)2023-2024

インスタレーション作品:龍脈 (りゅうみゃく)2023-2024

以前にも書きましたが、学生時代は音楽のPVやCMを作る人になりたくて、映像の勉強をしていました。その映像を制作していた頃から、ずっと一貫して研究してきたテーマがあります。

それは「人の自然な感覚、知覚を導きだす数値を探る」というものです。

一言で「自然」というと自分の外にある大いなるもののイメージですが、私は人間もまた自然の一部と捉えているので、そうした意味での「自然」の中には、共通で呼応する

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「りぼんなんて大きらい。」 展

「りぼんなんて大きらい。」 展

"りぼんなんて大きらい”

”動きにくいしうっとうしいし”

”みんなかわいいかわいいってほめてくれるけど”

”ちっともうれしくなんかないわ”

私自身が子供の時、着せ替え人形のように服を着せられることが大きらいでした。大人になった今も、汚れたって破れたってかまわない動きやすい服が好きです。

これまで一緒に暮らした猫の中には、りぼんをつけると得意満面で喜ぶ子もいましたから、犬や猫にも個人差があ

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うつくしい、ことば。

うつくしい、ことば。

文字がなかった時代、あまり普及していなかった時代に作られたものに、とても惹かれる。

誰かが誰かに何かを伝えたくて描いたのであろう壁画、なんのために作られたのか、もはや定かではなくても、誰かが作り、別の誰かが大切にしてきたもの。

大聖堂の聖人たちに限らず、野山のあちこちに見られる道祖神や、お地蔵さんや、狛犬は、苔むしながらも誰かの思いで特別な意味を持ち、大切にされてきた。それが何であれ、私はただ

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小さなバラは。

小さなバラは。

大学で映像を学び、現在は立体作品平面作品どちらも制作しますが、私にとっての創作活動の原点は詩作でした。彫刻や立体作品に目覚める前は、本気で詩人になりたいと思い、10代の半ばごろは、歩きながらもずっと詩を書いているほど文字やことばの美しさに取り憑かれていました。今も作品に言葉を必ず添えるのは、どんなジャンルの作品を作っていても、やはり自分の原点は詩でありことばだとの意識があります。立体も平面も、いわ

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春を待ちながら

春を待ちながら

12/23より箱根のポーラ美術館にて、年末年始の特別インスタレーション「春を待ちながら」が公開となりました。

この企画は今年夏頃から準備を進めました。外出に諸々規制のかかる昨今ではありますが、強い思いと願いを込めた作品が箱根にある、と思っていただけるだけでも嬉しいです。

写真と、作品のそばに添えたことばを掲載します。

「しあわせな犬」冬季 インスタレーション

春を待ちながら

2017年か

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存在と身体。

存在と身体。

今回は、非公開のFaceBookに2014年に書いた記事からの再掲載です。

「独学で彫刻やってます」とは言っても、動物や虫や植物など愛情を感じるものしか作ってこなかった。

彫刻を基礎から学んでいる方々にしてみたらあり得ないことかもしれないけれど、この土日から初めて(石膏像でない)生身の人間の裸婦をクロッキーの上、塑造するということをしている。

私が初めて向き合う裸婦さんは、びっくりするほどお

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空に焦がれた記憶

空に焦がれた記憶

不思議な夢を見ました。

「願いごとはアップデートされなければならない」

環境が変わっても、生き物は大昔から体の形や機能までも作り変えながら、生き延びてきた。力のあるものが生き残ったわけではなく「今」に適応できたものだけが生き延びた。新しい環境で「より良くなること」を強く願った者だけが生き残って来れた。だから、状況に応じて願いごとはアップデートされなければならない。

そんな夢でした。

コロナ

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犬と猫の小さな絵

犬と猫の小さな絵

犬や猫、動物が一番かわいいのは、どんな時?

私は、何より安心し切って自分の意志で思い切りくつろいでいる時だと思います。

私は生まれた時から犬がいる環境で育ちました。はじめは私自身が幼すぎて、犬にかまってほしいばかりに他愛のないたずらを色々としました。しっぽをそっとひっぱったり、頭や背中にお人形とか小さなものを乗せたり、急にわーっと突進して行ったり。3〜4歳くらいの時のことです。そっとしっぽの先

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[ 19,17,15,13,11,9,7,5,3,1 ]

[ 19,17,15,13,11,9,7,5,3,1 ]

[ 19,17,15,13,11,9,7,5,3,1 ]は、2019年12月から2020年1月までポーラ美術館の彫刻「しあわせな犬」のまわりに干支飾りを兼ね「ねずみ」100匹制作し、配置したインスタレーション作品のタイトルです。

ねずみの最も美しい並べ方を考えたときに、学生時代に習った等差数列を思い出しました。ねずみは三角形を描きながら、1匹から2匹ずつ増えて10列目で100匹になっています。

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月の光と黒い犬

月の光と黒い犬

写真の絵は、いつか月の光の下で見た梔子(くちなし)の花の絵。強い芳香を放ちながらゆっくり開いていく様子を描きました。

2003年の年末から愛犬と1日2−3回の散歩をするようになって、昼も夜もゆっくりと季節を楽しむ生活が訪れました。特に日中だけでなく夜も開いている花というものに、とても惹かれました。とりわけ月光に照らされて甘い香りを放つ梔子は、本当に美しかった。

もともとは海辺の放浪犬だったP(

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生きものの「正解」

生きものの「正解」

悲しい、辛いニュースを見ると、心が塞ぎます。

なぜ、争いは無くならないのか。人間は、どうして歴史の中で同じような間違いを形を変えて繰り返すのか。人も、人以外の生き物も、自然も、傷つけるのか。なぜ平和的には生きられないのか。

子どもの頃からたびたびその問いに行き当たります。そこで理想の平和な世界を思い描いてみるのですが、どんなに思い描いても、そこに人間はいませんでした。どう考えても、近現代の人間

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「しあわせな犬」

「しあわせな犬」

ひとつでも多くの生命が、心と身体の自由を得て、しあわせな時間を過ごすことができますように。犬も猫も野生動物も、そして人間も。

May more and more animals be blessed with mental and physical freedom and live a happy life.Dogs,Cats,Wild Animals,and Humans,too.

箱根のポ

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作品とは、レポートだと思う。

作品とは、レポートだと思う。

作品って、そもそも何でしょう?

私の場合は長年、作品=(イコール)「締切と課題のある制作物」でした。学生時代の課題尽くしの影響なのか、しばらく「作る側」を離れ、30歳を機に再び作品を作るようになってからも、「作りたい」とか「作らねば」という熱い気持ちとは別に、いつも大量の課題の達成と締め切りにばかりに追われて追い詰められて、気がつけば雲を掴むように見失いかけてしまうのが、そもそもの「作品を作

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