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アウトソーシング利活用とIT部門の位置づけ考察(3)~ 経営環境・IT部門を取り巻く環境の変化 ③ ~

これまで、2回にわたり「経営環境・IT部門を取り巻く環境の変化」と、それに対応する「IT部門の実情」と「主な取り組み施策」ということについて、考察してきました。 取り組み施策について、再掲(一部改編)しておきます。

 【これまでの主な取り組み】
■IT部門の位置づけ変革
・「システム構築・運用・保守」機能中心に子会社化。(企画機能は本社)
・IT部門の完全子会社化。(プロフィットセンター化 *1
・IT部門の切り離し。(ベンダーとの共同会社化 *2
・CIOの設置。(IT部門立場の格上げ)
■人材 
・専門職としてのキャリア制度設定。(子会社化による専門職評価など)
・上流工程における外部要員活用。(外部コンサルタント活用)
・開発工程のマネジメントにおける外部要員活用。(外部PMO活用)
■開発・運用・保守
・ホスティング、ハウジング形態の採用。
・保守・運用系を軸とした、アウトソーシング導入。
■評価
・子会社化(分離)による、コスト明確化。(IT関連の収支明瞭化)
■技術の習得
・習得時間の創出努力。(社内要員における日常業務の軽減)
■現場部門との関係
・作業内容、作業責任範囲の分担設定。(開発体制への組み込み)

第36回  経営環境・IT部門を取り巻く環境の変化②から 

*1:プロフィットセンター化
 自社のシステム開発だけでなく、社外からのシステム受託に道。

*2:ベンダーとの共同会社化
 主要ベンダーとIT新会社を共同設立し、IT部門要員を移籍する方式。
 この場合、新会社の株式はベンダーが半数以上を所有する形態が一般的。

今回は、そうした環境変化に対応するために取り組まれてきた、これまでの種々の施策について、それらをより「効果的なものにする(取り組む際の課題を解消する)」ために、予め検証しておくべき観点について考察しておきたいと思います。


5.課題解消に向けた検証観点

種々の施策を効果的に実践するにあたっては、予め考えておくべき課題があると考えています。具体的にどのような課題があるのか、解消すべき観点としてどのようなことを意識すべきなのかということについて、以下に示します。

【IT部門の取り組み検証観点】
■位置づけ変革
・「自社カルチャー、実情など」を意識した取り組みが行われているか。
・「真の課題」への深耕、検証が、十分行われているか。
 (目をつぶったことは無かったか)
・経営戦略上、IT戦略(DX)・IT部門の役割が、明確に位置づけられているか。
・トップ自ら、直接コミットされているか。

■人材
・経営環境、社会環境への対応に対し、「コアコンピテンシー」は明確か。
・外部活用指針は、明確か。(要員、開発・稼働・運用・保守環境など)
・中途採用を含め、採用方針は明確か。(自社カルチャー改革か、維持か)
・専門職としてのキャリア制度設計は明確か。(子会社、関係会社を含め)

■開発・運用・保守
・「コアコンピテンシー」に基づいた取り組みになっているか。
(どこまで外部委託するか)
・プロパー要員で対応すべき機能・役割を明確にしているか。
・アウトソーシングサービス活用に資するSLA *3の深耕、検証がされているか。(不安 *4解消)

■評価
・IT-ROI *5の確立に取り組んでいるか。(指標の明確化)
・経営に対し、経営評価指標の一つとして、認知させているか。

■技術の習得
・キャリアパスの制度設計や、時間確保に対する施策を検証しているか。
(人事制度、教育制度、勤務時間など)
・今後強化すべき、必要な「取得すべき技術」の研究に取り組んでいるか。

■現場部門との関係
・利益享受部門の位置づけとして、明確化する取り組みを行っているか。(開発(利活用する)責任者として)
・BPO/BTO *6への取り組み可能性が検証されているか。
(現場業務変革としての外部活用範囲の拡大、割り切り)

*3:SLA(Service Level Agreement)
サービス提供者との間で、委託する「サービスの内容、その品質」について記載した合意(契約)書。

*4:不安
サービス規定内容における、「小回り性や、融通性など」についての不安。ある程度の割り切り(諦め)が必要に。

*5:IT-ROI(IT-Return on Investment)
投資対利益率。ITに投資して得られた利益の割合を示す指標。

*6:BPO/BTO
・BPO(Business Process Outsourcing)
業務プロセスに関わる仕組みを、一括して外部に委託すること。
・BTO(Business Transformation Outsourcing)
DX推進のために「業務・ビジネス変革」を外部委託すること。
 
以上、3回にわたり、経営、社会環境の変化に対応し得る「IT部門における実情とこれまでの取り組み、そして実践(解消)するために検証すべき観点」について考察してきました。

今、実践するべきことは、これまでの「社内しがらみ」を捨て、経営にコミットしえるノウハウと時間を作るための「仕組み」を確立することであり、そのためには、徹底した「外部活用(アウトソーシング)の可能性」を追求することが必要であると考えています。(利活用の検証)

ということで、次回から「アウトソーシングを利活用する」ためにどのような方法論があるのか、その際、自社のIT部門をどのような位置づけにすべきか、また考えておくべきか、ということについて考察していきたいと思います。

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