マガジンのカバー画像

サブカル大蔵経 異国編

262
運営しているクリエイター

#キリスト教

サブカル大蔵経920小友聡『それでも生きる 旧約聖書コヘレトの言葉』(NHK出版)

サブカル大蔵経920小友聡『それでも生きる 旧約聖書コヘレトの言葉』(NHK出版)

コヘレトの言葉は、キリスト教会の歴史の中で、長らく異端の書と解釈されがちでした。空しいをはじめ、およそキリスト教の正典にふさわしくないと思われそうな言葉が並んでいるからです。p.9

〈異端〉とは始源に遡る行為。原始キリスト教への渇望を掬い取る役割もあるか。

ここでの「祈り」とは、神の手にゆだねることを指す。p.146

祈りとは、委ねること。念仏と似てる?

コヘレトとはヘブライ語で集める人と

もっとみる
サブカル大蔵経875コナン・ドイル著/近藤千雄訳『コナン・ドイルの心霊学』

サブカル大蔵経875コナン・ドイル著/近藤千雄訳『コナン・ドイルの心霊学』

コナン・ドイル曰く〈霊〉こそ本来の姿。

それは、キリスト教再興への道でもある。

コナン・ドイルが医学部(エジンバラ大学)出身の医師で、眼科を専門にしていたことを知る人は意外に少ない。p.15

眼科医・ドイルが生み出した『シャーロック・ホームズ』とは何だったのか。

その〈推理〉という発明は、人間の本質を〈推理〉していたのでしょうか。

シャーロック・ホームズ・シリーズで得た印税収入のすべてを

もっとみる
サブカル大蔵経863鯖田豊之『肉食の思想』(中公新書)

サブカル大蔵経863鯖田豊之『肉食の思想』(中公新書)

昔、リヨンで流行っている店を訪れた時、看板が〈豚の串刺しの絵〉でした。その時の衝撃と違和感と、妙な納得。

「ここは、ヨーロッパなんだ」

人間と動物の間にはっきりと一線を画し、人間をあらゆるものの上に置くこと。そうすれば一切の矛盾を解消し、動物屠畜に対する抵抗感もなくなるはずだ。歴史的に見てこうした思想的立場を最も鮮明に打ち出したのが実はキリスト教である。パリの娘さんが「牛や豚は人間に食べられる

もっとみる
サブカル大蔵経633八木誠一『パウロ』(清水書院)

サブカル大蔵経633八木誠一『パウロ』(清水書院)

本書のおかげで、パウロに出会えました。キリスト教と仏教のタブーの壁を壊す想像力を後押ししてくれる衝撃的新書。

キリストが私に現れた。生きているのは私ではない。私の中でキリストが生きている。単なる対象ではない。p.28

この、パウロの言葉の断絶なしの一体感。

宗教の世界とは決して何か特別なもの、超自然的なものでは無い。オカルトめいたものでは無い。p.217

八木誠一さんは、キリスト教の誤解を

もっとみる
サブカル大蔵経568岸田秀『史的唯幻論で読む世界史』(講談社学術文庫)

サブカル大蔵経568岸田秀『史的唯幻論で読む世界史』(講談社学術文庫)

アメリカを歴史的に精神分析すると、白人とアメリカが究極のいじめられっ子だったという衝撃の本です。昨今の白人至上主義の動きを見ると、この本のことを思い出していました。

最初の人類はアフリカに発生した黒人種であった。p.9

 人類は黒人しかいなかった。

その黒人種のあいだに白子(アルビノ)が発生し/彼らは毛色が違っていたために、黒人種からさらに差別されて、一万年ぐらい前、北の寒冷地のヨーロッパへ

もっとみる
サブカル大蔵経418後藤末雄/矢沢利彦『中国思想のフランス西漸(1)』(平凡社東洋文庫)

サブカル大蔵経418後藤末雄/矢沢利彦『中国思想のフランス西漸(1)』(平凡社東洋文庫)

 さすが東洋文庫という本に出会えた。

 昔の学者の本は面白い。著者自身の驚きと喜びをこちらに真摯に伝えようとしてくれている。

 本書で感じたのは、異国での異教徒への〈布教〉とは何なのか。ということです。そして、〈異国・異教徒〉とは、実は現代の我々なのではないかということです。

 キリスト教という世界最大のメジャーがマイナーになってしまう東アジアで、宣教師たちはどんな姿勢だったのか。

 日本

もっとみる
サブカル大蔵経236橋本治『宗教なんかこわくない』(ちくま文庫)

サブカル大蔵経236橋本治『宗教なんかこわくない』(ちくま文庫)

私自身、うっかりすれば教祖にさせられてしまう。だから私は読者というものが好きではない。p.34

橋本自身が教祖にならないよう配慮しながら宗教について語る論書。

著者の視点と率直な言葉が次々と真理をついているように思えてきます。初読の時貼った付箋紙は100枚を超えました。

なので、以下引用箇所が多くなってすみません。再読してもあらためてすごい本だと思いました。日本人と宗教の関係、宗教そのものの

もっとみる
サブカル大蔵経240『夜中の学校⑨中沢新一の宗教入門』(マドラ出版)

サブカル大蔵経240『夜中の学校⑨中沢新一の宗教入門』(マドラ出版)

夜中の学校、好きでした。

このラインナップ。

オウム真理教とか幸福の科学とかいろいろな新しい宗教が関心を集め始めて、そうした現象を扱いかねていたジャーナリズムから宗教学はだんだんお座敷がかかるようになったのです。p.9

中沢新一とオウム真理教。

20世紀の初めごろに生まれた、科学と技術の力によって新しい世界を作り出していくんだと言う願望は、一種の宗教的な願望と言っていいと思います。p.19

もっとみる
サブカル大蔵経155赤坂真理『東京プリズン』(河出文庫)

サブカル大蔵経155赤坂真理『東京プリズン』(河出文庫)

 格の違う迫力。何の迫力なんだろう。

 今の日本の成り立ちの責任を、大人の男たちが放棄し、少女に押し付け、背負わせた。その罪の意識を、小説を読み進めるうちに感じてしまう。全日本人の原罪。

 ディベートという米国式裁判の中、英語と日本語に挟まれながら、そこから紡がれる言葉をたったひとつの武器として、〈多様性の国〉の理知的なクラスメイトや先生も振り払う攻撃は、蘇る真珠湾か。

 結局何だったのかわ

もっとみる
サブカル大蔵経13八木誠一『パウロ・親鸞*イエス・禅』(法蔵館)

サブカル大蔵経13八木誠一『パウロ・親鸞*イエス・禅』(法蔵館)

 八木誠一さんの『パウロ』(清水書院)に驚いて、その内容をさらに拡げた同じ著者のこの本を読みました。キリスト教側と仏教側、どちらからも間違い探しをされたり突っ込まれたりするであろう運命を背負う孤高のテーマ。漠然と抱いていた、真宗の一神教的、非仏教的な立ち位置。若干こちらも抱えながら読み入りました。

 聖書はイエス・キリストを、浄土仏教所依の経典は阿弥陀仏をそれぞれ証とするわけだから、これらの証言

もっとみる
サブカル大蔵経9 アルーペ神父著/井上郁二訳『聖フランシスコ・デ・ザビエル書翰抄(下巻)』(岩波文庫)

サブカル大蔵経9 アルーペ神父著/井上郁二訳『聖フランシスコ・デ・ザビエル書翰抄(下巻)』(岩波文庫)

インドに絶望し、希望に満ち溢れた日本に到着したザビエルを待っていたものとは。下巻です。

「日本へ行けば、まづ国王に謁し、布教の許可を得て後、大学へ乗り込み、そこの教授たちに会って、シナや韃靼の母国たる天竺に就き、どんなことを教えているのかを明らかにした上で、凡ての人を、キリストのために獲得しようというのである」p.7

 この「大学」というのは、学問研究を中心にした本山のようなものでしょうか。ザ

もっとみる
サブカル大蔵経10 フィリップ・アリエス著/杉山光信訳『<子供>の誕生』(みすず書房)

サブカル大蔵経10 フィリップ・アリエス著/杉山光信訳『<子供>の誕生』(みすず書房)

「子供」「家族」「教育」とは何か。この本は、私たちの前提をくつがえす史料と考察の旅へ誘ってくれます。

 ごく小さな子供から一挙に若い大人になったのであって、青年期の諸段階を過ごすことなどない。p.1

 中世ヨーロッパでは、大人の目線には子供という存在はなく、働き手としての「小さな大人」がいただけだと述べられています。いわゆるモラトリアムの時期もない。

 ちょうど動物と戯れるように、小さな淫ら

もっとみる
サブカル大蔵経8 アルーペ神父著/井上郁二訳『聖フランシスコ・デ・ザビエル書翰抄(上巻)』(岩波文庫)

サブカル大蔵経8 アルーペ神父著/井上郁二訳『聖フランシスコ・デ・ザビエル書翰抄(上巻)』(岩波文庫)

 ザビエルの書簡全訳。上下巻に分かれ、上巻はヨーロッパ出発からインド滞在。「ビフォー日本」状態のザビエルの真面目で天然なザビエルに出会えたのは新鮮でした。ザビエルの若き肖像画かっこいい。ザビエルのあの代名詞の髪型は日本に来てから?

「『印度の布教は、あなたの事業だ。』するとザビエルは言下に『よろしい!』と気軽に答えて立ち上がった。」p.35

 「当時回教徒は最盛期にあり、トルコ人は、ハンガリー

もっとみる