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白川尚史『ファラオの密室』 前代未聞、探偵で被害者は甦ったミイラ!?
毎回ユニークな作品が登場する『このミステリーがすごい!』大賞、第22回の受賞作は、何と紀元前1300年代後半の古代エジプトが舞台。それも探偵にして被害者は、自分が死んでミイラとなりながらも、冥界から再び甦った男という、異色中の異色作です。
ある出来事で命を落とし、ミイラにされて葬られた上級神官書記のセティ。しかし冥界に赴き、真実を司る神・マアトによって審判を受ける直前になって、彼は心臓
『歴屍物語集成 畏怖』 歴史の中でのゾンビと人間を描く気鋭のアンソロジー
はじめに 様々な作家と作品に巡り会えるアンソロジーという形式は胸がときめくものですが、それが現在の、そしてこれからの歴史小説を背負う面々の作品集とくれば見逃せません。それもテーマがゾンビ、つまり生ける屍者の物語とくればなおさら!
そんな本書に参加しているのは、矢野隆・天野純希・西條奈加・蝉谷めぐ美・澤田瞳子――いずれもデビュー十数年、蝉谷めぐ実に至ってはわずか四年という気鋭のメンバー。それぞ
歴史小説的文法で描く、『モノノ怪』ヒロインの「強さ」と「弱さ」 仁木英之『モノノ怪 鬼』
新作劇場版が公開され、大ヒットしたのも記憶に新しい『モノノ怪』。その『モノノ怪』の完全新作ノベル――仁木英之によるスピンオフ小説の第二弾です。今回の舞台は、戦国時代末期、九州平定を狙う島津家に抗う人々が暮らす地・玖珠。そこに現れる四つのモノノ怪を巡る、連作スタイルの長編です。
時は1580年代後半、九州で大きな勢力を誇っていた大友家が島津家に耳川で惨敗して数年。以降、九州制覇を目論む島津家は
赤神諒『神遊の城』 甲賀鈎の陣に翔る驚天動地の忍法、そして自由と秩序の物語
大友家を題材とした作品を矢継ぎ早に送り出して斯界の注目を集めた赤神諒が、室町時代を舞台に、忍者を題材として描いたのが本作『神遊の城』――いわゆる甲賀鈎の陣を舞台としつつ、驚天動地の忍術を描いてみせた奇想天外な物語です。
応仁の乱の混乱冷めやらぬ中、九代将軍義尚が六角高頼討伐のために近江に親征した長享の乱。大軍を率いた義尚の慢心、そしてそれと裏腹の諸将の志気の低下等により、勢力では遙かに勝るは
天野純希『吉野朝残党伝』 南朝の少年兵が見た戦いの真実
南北朝合一後も吉野に潜み、足利幕府に対して戦いを繰り広げてきた吉野朝(南朝)残党。本作はその吉野朝残党にいわば少年兵として加わった多聞をはじめ、様々な人々の視点から足利義教期の混沌とした世界を描く物語であります。
馬借の下人として幼い頃からこきつかわれてきた少年・多聞。大和の山中で荷を運ぶ最中に何者かの襲撃を受け、そのどさくさに襲ってきた主を殺した彼は、襲撃者を率いる後醍醐帝の後胤・玉川宮敦
北山猛邦『人魚姫 探偵グリムの手稿』 少年アンデルセンが挑む人魚姫後日譚の謎
人間の王子を愛し、魔女の力で人間になったものの、想いは叶わず、儚く消えた人魚姫――誰もが知るアンデルセン童話「人魚姫」の後日譚として、人魚姫が愛した王子殺害事件の謎に少年時代のアンデルセン本人と人魚姫の姉、そしてグリム兄弟の末弟が挑む、奇想天外な物語です。
父を亡くし憂鬱な日々を送る中、父の形見の人形を落としてしまった少年・ハンス。偶然知り合った画家を名乗る黒衣の青年・ルートヴィッヒと共に、
森谷明子『千年の黙 異本源氏物語』 日本最大の物語作者の挑戦と勝利
<大河ドラマに便乗して本の紹介その1>
今なお数多くの人を魅了する『源氏物語』。その物語の存在そのものを題材とする作品も決して少なくはありませんが、本作はその中でもユニークなものの一つでしょう。何しろ本作は、作者たる紫式部を探偵役とした――それも、源氏物語そのものにまつわる謎を解き明かす――ミステリなのですから。
本作は、二人の主人公を――藤原香子、すなわち紫式部と、彼女に仕える女房の阿手木
阪口和久『小説落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』 ハードで「らしい」忍者たちの「戦い」
2019年に惜しまれつつも連載を終了した(アニメ版は今も絶賛放送中ですが)『落第忍者乱太郎』、その現時点で唯一の小説版であります。あの物語とキャラクターをどのように小説に……? と思えば、これが想像以上にハードなストーリー。土井先生と六年生がほとんど主役状態の大活劇です。
今日も今日とて挑戦状を叩きつけてきたタソガレドキ城の諸泉尊奈門を、文房具を使ってあしらっていた土井先生。しかし思わぬアク